第8話
耳元で耳障りな音をたてて目覚まし時計が、もう起きる時間だと捲し立てる様に鳴る。
だが昨日の出来事のせいで精神的に酷く疲れていた。すぐ隣にある目覚まし時計を止めるのすら億劫になるほどに。
だから無視してそのまま寝ようとするが、うるさくて寝れたものじゃなかった。
時計の音をなんとか遮ろうと掛け布団を頭まで被る。だが強化された聴覚のせいで、掛け布団は微塵も音を和らげてはくれなかった。
そんな様子の優人に時計はついにキレた様だ。
起きる時間を教えてやっているのにも関わらず起きようとしない愚か者に鉄槌を下すために、時を告げるものは使者を遣わせた。
ドタドタと音をたてて何かが部屋に近寄ってくる音が聞こえる。
破滅のラッパが吹き鳴らされ、刻一刻とこの時間の終わりが迫って来ていることを彼に告げる。
そして終焉の時はきた。
優人の部屋のドアが音をたてて開かれる。
日曜日の朝にやっている女児向けのアニメを見終わった直後だったようで、いつもの数段高いテンションで部屋に飛び込んできた。
「「朝だぞ~!!起きろ~!!」」
その勢いのまま二人の使者は優人にのし掛かってきた。
「「起きろ~!!」」「ギャー!」
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「お前らいつも言ってんだろ!起こすときは掛け声だけでいいってよー!」
「ハートフラッシュ!」「嫉妬怪人は爆発四散!」
怒れる長男の怒声を、しかし愛美と美華は微塵も聞かず、朝にやっていたアニメのクライマックスシーンを再現するのに夢中だ。
「ムキー!このー!」
怒る優人にそろそろ落ち着けと父と母が仲裁に入る。
「あーあ・・・、まだ9時じゃないか!只でさえ昨日のせいで疲れてるってゆーのに!」
そう、昨日の班でのダンジョン探索は、始めにミルクワーム、終わりにミルクワームだった。体力的は一切疲れてはいないが、始めてのチーム行動、好き勝手に動けなかったこと、強力な存在が近くにいるという等、様々なストレス要因により彼らは精神的に凄まじく疲れていた。
「今日はぜってー何もやんねーぞ。絶対」と言う優人に、母がそんなに昨日は大変だったのか?と問う。
母からの問いに、優人はため息と肩を竦めることで返答した。
それからは昨日の学校で何があったのかを随分脚色して、更に大袈裟に報告したり、家事の手伝いを終わらせ、のんびりダラダラ休日を貪るために彼は部屋に戻っていった。
部屋に着くなり、まず目に入ったのは白玉でバドミントンの様にして遊んでいるオールとジンベーだった。
「キュー!」ぽこ「わー!わー!」
「ホー!」ぽこ「わー!わー!」
(何やってんだこいつら・・・)そのさまをぼけーっとした表情で眺めながら、モグドンはどこだと思い、辺りをキョロキョロと見渡し、机の上に仰向けにひっくり返って微動だにしないモグドンを発見した。
(干からびた蛙かな?)そう思いながらモグドンを指で突っつき回す。
突っつくたびにモグドンは手足をじたばたさせて嬉しそうにモグモグ鳴いた。
グダグダとそうやって使い魔達と戯れていたら、時間はあっという間に過ぎていき、いつの間にか夜になっていた。
夕食と風呂を済ませ、体力を明日のために蓄えるため、無駄なことはせずさっさと布団に入っていった。
また明日からしんどい学校が始まる。
そんな憂鬱な気分に浸っていたが、やがて睡魔の濁流に飲み込まれ、意識は闇に溶けていった。
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