第7話 常識
ゼフは掲示板の前で立ち止まり、どのような依頼があるのかを端から端まで確認する。
周りからこちらを意識する視線が多数向けられ、どうもむず痒い。
「まだ分かっていないのか。いや、それでも見てしまうのが人間の本能ということか」
ゼフは適当な予想をし、良さそうな依頼を手に取る。
「ゴブリンの討伐か…… 流石にあいつらより強いとは思わないが、果たしてEランククエストに合っているかどうか」
ゼフはそのまま受付嬢がいるカウンターまで歩いく。
そして、先程取ったゴブリン討伐の依頼の紙を見せつける。
「この依頼をやりたいんだが、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。ただ一つだけ…… いくら組合は関与しないと言っても、できればこういうことはやめてほしいです」
「そうか、次からは気をつけよう」
「助かります、では改めましてゴブリンの依頼ですね。ゼフ様のランクだと適正でございます。報酬は銅貨四〇枚ですがよろしいですか?」
「大丈夫だが、二つだけ聞きたいことがある。いいか?」
「はい、大丈夫でございます」
「では、まずお金について教えてほしい」
何を誰でも知ってる当たり前のことをと、言わんばかりの顔でこちらを見ているが、受付嬢の手を見ると震えており恐怖しているのが分かる。
どうやら先程の騒ぎによって起こったことに恐怖しているのだろう。
だからか、特に何も言わずに話し始める。
「分かりました、では話させてもらいます。まず、銅貨は一〇〇枚集めると銀貨一枚と同等のになり、銀貨一〇〇枚は金貨一枚と同等になります。銅貨は一〇枚ほど支払うと普通の宿に泊まることができます。簡単に説明しましたが、他に不明な点はございませんか?」
心配そうな表情でこちらを見つめてくる。
ゼフはそんな怯えた表情に優越感を感じる。
「いや、大丈夫だ。次にゴブリンの姿と生息域を詳しく教えてほしい」
「分かりました、ゴブリンとは人型の魔物であり、身長が一〇〇cm前後と小さい魔物です。そして肌の色は黄緑色ですので、一目で分かると思います。生息地は王都を超えた森に生息しております。以上で説明を終わりますが、こちらも不明な点は御座いませんか?」
「いや、大丈夫だ」
「では、お気をつけて。 神のご加護があらんことを」
ゼフ既に喰い終わり、端で待機しているビートルウォリアとガシガシに命令を下すと、冒険者組合を後にした。
✳︎✳︎✳︎
冒険者組合を出た後、案の定通行する人々の様々な視線が不快だった。
なので、そのまま王都を出て、森に向かうことにした。
しばらく歩くと、森が見えてくる。
「そろそろだな、アリシアの護衛をしていた時にはゴブリンに出会うことがなかった。理由はいくつか考えられるが、おそらく大丈夫だろう」
蟲達に反応はないが、それをきちんと理解して聞いているのが分かる。
なんとなくだが。
ゼフはこの先のことを考える。
「この世界は色々なことを試せるだろう。俺より強い奴がいないならそれもいい。そもそも自分より強い奴と戦う意味がわからん。そんなことよりも、弱者を圧倒的な力で蹂躙する方が楽しいだろ」
蟲達にそんなことを話していると、森に到着する。
そして、そこから歩いて探すが、どうも見つかる気配すらない。
流石に面倒になったので、楽しむことを忘れて探知魔法を使う。
すると、ゴブリンの反応が大量に現れる。
(確か……依頼書にはゴブリンを四〇体も倒さなければならないと書いてあったな……最初の依頼にしては少しハードだな)
ゼフはゴブリンを探知魔法で見つけた場所に向かう。
そこには一体のゴブリンが佇んでいた。その場所に右手を向ける。
「『フレア』」
小さな魔法陣が現れ、そこから小さな炎の玉が出てくる。
その魔法はゴブリンに直撃すると、激しく燃え叫けぶことすら許されずに絶命させる。
(予想はしていたが、全く育てていない攻撃魔法で一撃か……)
ゼフはその事実を再確認し、嬉々として召喚魔法を使う。
「来い、ガシガシ!」
そう叫ぶと、三〇個の魔法陣が現れ割れる。
そこには新たにガシガシが三〇体召喚されていた。
そして、ゼフは命令を下すため口を開く。
「ゴブリンを殺してこい。殺したら死体は持ってこい。数は大体四〇体くらいだ」
そう命令すると、ガシガシ達は雄叫びを上げながら、凄まじい速さで森にばらけていった。
「本当に困った奴らだ。おそらくガシガシだけじゃ時間がかかるだろうな。仕方ない」
ゼフは無詠唱で召喚魔法を使う。
先程より多い五〇個の魔法陣が現れ割れる。
すると、そこには普通サイズの蚊のような蟲が、五〇体ほどゆらゆらと浮遊していた。
「探知蟲、ゴブリンを探知しガシガシ達にその場所を伝えろ」
探知蟲達は命令を遂行するために動き始める。
探知蟲の能力は敵の位置を捕捉し、他の蟲に伝えることができるという、とても便利な能力だ、
ただし、戦闘能力が皆無であり、防衛手段が微量の毒を吐くことしかできないので、戦闘面では全くと言って良いほど役に立たない。
(やはり、色んな手段で召喚時の魔力消費量を減らしているとは言え、他の蟲とは比較にならないくらい探知蟲は魔力を消費しないな)
改めてその事実を確認し喜んでいると、ゴブリンが運ばれてきた。
そして、それは次々と運ばれてくる。
やがて、五分もしないうちに目標の四〇体に到達してしまった。
「随分と早かったな。『ボルックス』ッ!」
ゼフは収納魔法を発動させると、ゴブリンを謎の空間に放り込んでいく。
その作業もすぐに終えると、額の汗を拭う。
「よし、お前ら帰るぞ」
そして、ゼフはガシガシ、探知蟲、ビートルウォリア、デスワーム等一〇〇体近い様々な蟲達を引き連れ王都に帰るのだった。
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