第8話 魔導少女をPTから追放しようとしていたら自分がアカBANされていた件について(地下神殿開口部周辺エリア/地上世界 旧伐採場跡地)

この世界は謎だらけだ。

自分にとってはこれが現実(リアル)だったのに、世界を俯瞰している管理者にとって自分はただのコマの一つでしかなかった。

なんてことも、あるかもしれない。

すくなくともリリーにとってはこの世界は自分にとっての美しい世界だし、また悪友で腐れ縁のアタリだって、魔物をいたぶる憎々しい存在だけれどもどことなく憎めないいいやつだったりする。

友情は、そんな些細なところから芽生えたりするもの。

だが管理者にとっては、駒がどの駒とどのように親睦を深めたかなんてどうでもいいし、ましてや駒が、自分の言うことを聞かずに勝手なことを始めたら、それはこの世界にとっての反逆者、存在してはいけないイレギュラーとして即deleteを試みてくるだろう。


リリーは自分の意思で、この地下神殿にやってきたのだ。

◇◇◇


「ふい〜やっとついた。疲れたねーリリー」

アタリが拓けた山間部に出てグッと伸びをした。

アタリの言葉にしばらく誰も答えなかったが、少し経つと森の奥からガサガサガサー! と音がして、またしばらく静かになってからリリーが肩で息をしながら木の枝をかき分け頭に蜘蛛の巣や枯葉を引っ掛けながら出てきた。

「はぁ、はぁ、お、おかしいわ……絶っ」

リリーは息を切らして途中もう一度深呼吸をする。

「絶対にっ、おか、はぁはぁ、おかしい! だってもういつもの十倍以上は、たぶんっ、歩いてるわ!」

リリーは地面に手をつけて倒れ込んだ。

空はすでに赤くなりかけており、このまま地下神殿に入ってハデス様にオーブを捧げて、山を降りたら間違いなく深夜になってしまう。

「あんた変なとこより過ぎたんじゃない!?」

「えーそんなことないよおー。だって、途中で親切なカカシさんやクマやピエロさんたちが、ハデスの神殿はこっちだーって教えてくれたじゃない」

アタリはぷくぅーっと顔をふくらめながら、ちょっぴり心配そうな顔をした。

「なんか、モンスターたちもちょっとおかしかったね」

「そ、そうね。あいつら、地上じゃあんまり見ない、めずらしい古代種、だったわね」

はぁー、と大きく息を吸って吐いて、リリーはヨシと声を上げて立ち上がった。

たしかに途中の道はおかしかったけど、ここはハデス様の地下神殿のすぐ近くよ。この丘を越えていくとすぐ先に入口があるはずだわ」

リリーは言って先を急いだ。

「まあ、今から行ってももう山は下れないから、神殿で少し休ませてもらいましょ。ちょうど坑道があるからここをくぐっていけば、神殿にも早く着くかも」

「わかったー! ボクがいちばーん!」

「あっずるい! 私もっ!」

リリーとアタリは駆け足で地下坑道へと入っていった。

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