探しながら仲を深める
割り当てられた、三階から上を探索することになったけど。
「ハズレを割り当てられたんじゃないの?」
雫石さんの言うことは、もっともな気がする。
大体こういう場所で、食料が多いのは一階だ。
それに、集合場所のフードコートは二階にある。
絶対に、向こうの方が当たりだと思う。
しかし文句を言うわけにもいかず、僕達は大人しく三階へと移動していた。
こんなことで、無駄な争いはしたくないというのが僕達の意見である。
「まあ、食料以外の使えそうなものがあるかもしれなえからなあ。武器とかの補充もしようぜ」
「まあ、それもそうね」
雫石さんは文句ありげだったけど、剛埼さんの言葉に納得したみたいだ。
この二人の仲は、最初より深まっている気がする。
先に出会ったのは、僕が先だったのに。
未だに僕と彼女の仲は、全く良くなる気配が無い。
時間がそれを解決して、仲良くなれればいいのだけれど。
服屋や雑貨屋が多い中で、たまに食料や武器になりそうなものを見つける。
しかし思っていたよりも使えそうなものが少なくて、探索は早くに終わってしまった。
それでもフードコートに戻る気にはなれず、落ち着けそうなソファがある店で三人で輪になって座る。
最初は各々、武器の確認や、化粧直し、店の様子を見ていたりした。
時間が経つにつれて、それも飽き誰ともなしに口を開く。
「こんな風になってから、家族はどうしているのか心配にならねえのか?」
剛埼さんが、そんなことを言うなんて。
僕の勝手なイメージだけど、剛埼さんは孤高の存在な気がして、家族とかそういうのをいるとは思えなかった。
そんな風に考えるのは、明らかに彼に対して酷いと自覚する。
「家族? そんなもの、とっくにいないわよ」
僕が話をする前に、雫石さんが口を開いた。
「勘違いしないで。ゾンビになったとかじゃなくて、こうなる前絵に、元々死んでいたのよ」
彼女は、遠くを見つめる。
そして、とても大きなため息を吐いた。
「最低な家族だったわ。どっちも私のことなんか、きっと人間として見ていなかった。それこそ、今のゾンビみたいに避けられていたと思う」
彼女の話が始まってから、僕達は茶々を入れることなく、真面目に聞いていた。
剛埼さんでさえも、口を閉じて彼女だけを見つめている。
「別に暴力は振るわれなかった。でも、ネグレクトっていうやつ。誰か兄弟がいれば、また違ったのかもしれないわね」
自分の手元を見つめて、意味のない動きを続けた。
「そのままの状態が続いて、ある日いきなり事故で死んだの。呆気なかったわ。人って、こんなに簡単に死んでしまうのかって思った」
彼女はその時のことを思い出したのか、ゆっくりと目を閉じた。
「そこからは、残された遺産を切り崩しての生活。でも何も分からなかった子供が、まっとうに生き続けるのは難しかったわ。気が付けば、犯罪に手を染めるしかない状況に陥っていたってわけ」
これ以上は語るつもりはないと、目と共に口も閉ざす。
僕達は反応を返すことなく、しばらく彼女をそっとしておいた。
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