第26話 69
スパルタ過ぎるだろ。と文句を言ったが、雅は聞く耳を持たない。
照れてるのか、怒っているのか分からない顔で、三つの魔法を発動する。
「練習試合だからね! 本気でかかってこないと、ズーンって後悔するからね!」
雅はやる気満々で、シャドーボクシングをしている。
その拳が早過ぎて全然見えない。
「やらなきゃ俺がサンドバッグにされちまうな……」
まずは『
体の中に作ったばかりの魔術機構が活性化し、それにより発生するのが、魔法陣。
魔術式が目に見える形で表現されたもの、とも言い換えることが出来る。
すなわち、魔術式と魔法陣は、ほぼイコールだ。
「お、さすがユート! もう『
「それはシャレにならないな……」
既に発動している『
今ひとつ実感はないが……体の中の魔術機構が動き出しているのを感じる。
ん? これは……?
体の中の魔力の流れを追ってみる。それらは細かな部品を経由して、一つのつながりになっているようだ。
しかし、その途中で『
――なるほど。
今までは一つの式で一つの塊だと思っていたが、それは違う。
魔術機構は一つ一つは細かなパーツの集合体なのだ。
魔術式の文字や図形の一つ一つに対応したパーツが組み合わさることで、魔術の効果を発動させる。
いわば、魔術式は設計図。
そして魔術機構は部品だ。
部品を組み合わせることで、一つの魔法となる。
その設計図が複雑であればあるほど、魔術機構の部品が多ければ多いほど、出来上がる魔法は巨大で、強大なものとなる。
――コツがつかめてきた。
『
「よし、行くぞ! 雅っ!」
床を蹴ると、一瞬で雅の前に迫った。
「えっ!?」
慌てる雅に向かって、手の平を出す。さすがに女の子にパンチは気が引ける。手の平で体に触れたら、勝ちということにさせてもらおう。
「うそ! もう出来てるっ!?」
驚いた顔で、雅は俺の手を払った。
もし『
よし! 一応三つの魔法を同時に運用出来ている!
だが、まだ雅のレベルには達していない。俺の攻撃は完全にガードされ、こちらの手足の方が痛くなってきた。
しかし――、
「もうっ! アタシにもメンツがあるんだからっ!」
雅が攻撃に転じた瞬間、隙が出来た。
「そこだぁああああ!!」
唯一開いた扉、そこに迷わず手の平を突き出す。
すると、全ての衝撃を吸収するような弾力、そして手の平を包み込むような柔らかさを感じた。
「なっ!?」
敵の攻撃を和らげる緩衝魔法
――ではなく、おっぱいだった。
――しまったぁあああああ!!
ガードの開いた先に何があるかまで、考える余裕がなかった!!
雅のパンチが途中で止まっている。
俺に握られた自分のおっぱいを見おろす顔が、かーっと赤くなってゆく。
「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
俺から離れ、おっぱいを守るように自分の体を抱きしめる。
「だ、だからっ、あれほどユートから、さわんないでって! 言ったのにっ!!」
「す、すまん! ごめんっ! わざとじゃないんだ」
だが……よく考えてみると妙だな?
「あー……でも、雅? 俺がこう言うのも何だが、普段自分からあれだけ押し付けておいて、何でそんなに恥ずかしがるんだ?」
「じ、自分からするのはいいの! 心構えもしてるし! さ、されるのは、は、ハズかしいし、よ、予測出来ないから、か……感じ、過ぎ、る……というか……」
最後の方はよく聞こえなかったが、とにかく本当に恥ずかしそうだ。
もしかしたら、いつもは結構無理してるのか?
そんなことを考えながら雅の赤い顔を見つめていると、その表情が怒りを含んだものに変わる。
「もー今日は厳しくいくんだから!」
大股で俺に近付くと、手首をつかまれた。
「うわっ!?」
俺の体が宙に浮いた。
投げられる!?
やはり雅の技は凄い。まだまだ学ばなければならない。
だが、ついて行けば、必ず俺は強くなる。
――偶然、投げられた俺の足が、雅の足を引っかけた。
「!? ひゃぁっ!!」
「うおぉっ!?」
床に倒れた俺の上に乗っかるように、雅も倒れる。
しかも、頭の位置が逆。俺の股間に雅が顔をぶつける。そして俺の顔にも、スパッツの股が押し付けられ――、
「んんんぅ!?」
「きゃぁあんっ♡ や、そこグリグリしないでっ!」
「す、すまない!」
「あぁん! もうっ! 大人しく投げられなよっ!!」
「ぐ、偶然なんだ! 雅の投げを防ぐなんて、俺には出来ない」
「そんなこと言って、アタシのこと大したことないとか思ってるんでしょ!」
「むぐっ!?」
勢いよく、俺の顔にお尻を落としやがって!
さっきこの手で確認した、巨大な尻が俺の顔を容赦なく押し潰す。
もう『
息が詰まりそうになりながらも、俺は必死で弁明した。
「違う! 雅のことは尊敬している。俺に出来ないことが出来る。それに教え方だって上手い。雅のおかげで俺は強くなれる!」
「ふぁうっ♡! う、うれしいけどぉ、そこで喋らないでぇ!」
雅が腰を浮かせると、息が楽になった。
代わりに、股間のドアップが俺の目の前数センチのところで止まっているが。
「で、でも……ユート。アタシのことビッチとか思ってるんでしょ?」
「思っていない。雅は格好は派手でも、中身は違う。さっきのやり取りでも、それは分かる。雅はとても真面目で、本当は身持ちの堅い女の子だ。見た目で判断して、雅をビッチなんて言う奴は、人を見る目がなさ過ぎる」
「ユート……」
「俺にビッチっぽく迫っていたのも、多分俺を試していたんだろ? 立場を利用して、欲望を満たすような人間なんじゃないかって」
「……」
「すぐに信用してもらえるなんて思っちゃいない。でも、もう自分の体を張るようなことはやめてくれないか? 雅は俺の大切なカードだ。嫌な思いをして欲しくない」
「べつに……アタシは……」
「だから、どいてくれないか? 特訓の続きを頼む」
雅からの返事は、なかなかもらえなかった。
やがて、かなり時間をおいてから、ぽつりとつぶやく声がした。
「……やだ」
へ?
再び俺の股間に、雅が顔をうずめた感覚。
そして、先程よりはそっと、俺の顔に雅の股間が押し付けられた。
「み、雅? だからもう、こんなことしなくても――」
「う、うるさいっ! ユートは黙ってアタシにされてればいいんだから! そう、これは、おしおき! おしおきなんだから! それに……ついでに『
「おしおきなのか、癒やしなのか、どっちなん――ぐぅっ!?」
再び強く、顔に乗られた。
拷問か!!
十五分後にやっと解放され、それからたっぷり二時間、組み手と癒やしを交互に行った。
そのときの雅は妙に嬉しそうで、なんとなく今までの笑顔とは、少し違う気がした。
……が、正直、疲れ果てた。
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