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「点は孤独ですよね」遥が言う。
孤独。
「でも、点と点があって、それが繋がって線になれば、それはもう孤独ではありませんよね。……それはつまり、幸せって、ことですよね?」
うん。そうだよ。と夏の声が聞こえた。
するとその声を聞いて、安心したように雛がにっこりと笑った気がした。
そこで遥の意識は覚醒した。
遥は床から立ち上がり、白いワンピースの裾を正すと、髪を整えて、無表情で椅子に座っている雛の顔を見つめた。
それから遥は雛の頬にそっと、優しいキスをした。
「少しだけここで待っていてね」遥が言う。
「迷子になった夏を探さないといけないの」
そう言って遥は歩いてガラスの壁を向こう側へと移動して、そこにあるドアから出て、一瞬も雛のほうを振り向かないで部屋を出た。
雛の部屋を出たときには、遥はもう、いつもの自分と長い付き合いのある木戸遥に戻っていた。
遥が部屋からいなくなると、ぴくりと一瞬、雛の指先が震えた。
雛の瞳がかすかに動いて、閉じられたドアを見た。
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