テンプレ2 「トラック転生 その2」
イスズが白い空間に来る前、彼は自前のトラック『ジョニー号』を気分良く運転していた。
意外かもしれないが、彼は今まで一度も交通違反で捕まったことのない、優良
交差点の信号は明らかに青を指し示していた。イスズはさっさと通ろうとアクセルを軽く踏む。
「っ!?」
しかし、そのとき、一人の学ランを着た高校生が飛び出してきた。
イスズは咄嗟にハンドルを切り、トラックは横転した。
イスズの判断の正確さにより、その事故での死亡者はイスズ一人だけだった。
イスズは横転したトラックの中、薄れゆく意識で、歩行者の信号が青だったことをぼんやりと見ていた。
「ふざけんなよ。クソがっ……」
こうして銀河イスズの30年という短い生涯の幕が降りた。
※
「お、お主、佐藤正義の代わりに誤ってここへきたというのか……」
神は驚きの表情を浮かべ、イスズをまじまじと眺める。
「ああ、半分不本意ながらな。まぁ、だがいい機会だ。俺はここで異世界転生への憧れってやつを全部ぶっ壊してやるよ!」
「そ、そんなことをしたらっ!」
「俺の元いた世界のトラックでの事故率が下がるな」
イスズは神へと顔を近づけると、とても人とは思えない凶悪な顔を神へ向ける。
「さて、まずは手始めにお前だな」
「い、いったい何を」
「これから転生してくるやつにチート能力を与えるのをやめろ。いいな!」
神はガクガクと頷く。
「それから俺を転生させるな。この身体のまま、『マヒア』っていうテメーの世界に送れ。それから愛車の『ジョニー号』も一緒にだ! いいな。わかったな」
神がどうしようか決めあぐねていると、ガンッと顔の真横に足が振り下ろされた。
「わかったな?」
「わ、わかりましたっ!」
「今の言葉がウソだったらどうなるか分かってるだろうな?」
神は一瞬、マヒアに行ったらここに戻ってくるのはムリではと思ったが、しかし、神にさえ打ち勝つこの男なら、なにがなんでもここに戻って来るだろうという予感が働き、神は「もちろん」と頷いた。
「か、神はウソをつけぬ存在ゆえ、口にしたことは全て守られます!」
「そうか、なら良し! それじゃ、行ってくるわ」
「あ、あの~、最後に1つよろしいですか?」
神はすっかり及び腰になり敬語でイスズへと尋ねる。
「能力を与えるとき、我よりは強くならない最強の身体能力にしているのに、なぜそんなに強く?」
「はぁ!? んな分かりきったこと聞いてんじゃねぇよ。漢が限界超えて強くなるのは気合と根性だろうがっ」
背中を見せながら銀河イスズは異世界へと降り立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます