左遷先は地球

美浪

第1話 プロローグ

「なーんも見えん!この辺は恒星もないばい」


長い琥珀色の髪をハーフアップにしたの美しい少女は不満そうに外を眺めている。




「No.1。恒星や太陽のような星ばかりでしたら生物が住む星だらけで我々の仕事が増えますよ」


蒼色の髪の男性が彼女の背後から溜息まじりに答える。




「私は生物が沢山いる星が沢山ある方が楽しいー!戦闘したーい!」


離れたテーブルに座っているじゃじゃ馬そうな少女が笑顔で手を上げる。


「No.4!私もその話、賛成!」


No.1はニヤリと笑い振り向く。




「戦闘バカ2人。。。」


蒼色の髪の男性がまた溜息をつく。




ブーンと部屋の自動ドアが開く。


「あー!暴れた暴れた!コールドスリープ前の一暴れしてきたぞー!」


水色の髪の少年、ピンクの髪の少女、茶髪の少女がテンション高く入ってきた。


「No.3、6、7お帰り」


No.4が笑顔で迎える。






3日前、我等6人は惑星ワードから高速宇宙船で飛び立った。高速船は自動操縦。トレーニングルームも完備された星で1番速い宇宙船だ。


行先は第3銀河にある《地球》と言うワード星の王が名付けた惑星。




勅命だった。


知的生命体、それも人型の生存する地球。しかし文明はまだまだ発展しておらず他の知的生命体から狙われていると言う。


ワード星の王は人型の星人を護る為には手段を選ばない。


そう言うと聞こえは良いが人型でない宇宙人に対しての差別意識の激しい方である。


同じ宇宙域にある惑星ウェヌスヤが地球に干渉していると判明した。


奴らは個々の能力は弱いが機械文明が非常に発展している星。


今までも他の惑星で戦闘になった事がある因縁の星人。もちろん異形。全身が銀色で目だけはある。個別の判別が付かない。


話し合いを試みた事もあるが我等の星の概念と異なる為、相入れる事が出来なかった。






「さてと。面倒くさかけど寝る前に会議するけん座れ」


No.1が先程No.4が行儀悪く座っていたテーブルの端のボタンを押す。床から6人分の椅子が現れた。




6人は序列数字で呼びあっている。ワード星の戦士上位200名にだけ与えられるナンバー。


今回の渡航は異例に近かった。No.1はもちろん戦士200強の頂点に立つ。その直属配下No.3~7。戦士6強と呼ばれている。


ちなみにNo.2はNo.8~12を直属配下とし戦士12強と言う軍を持っている。




「しかし、戦士6強で出陣とは。。王はウェヌスヤ星人を滅ぼせと言ってるんですかね?」


No.5が呆れ顔で言う。この6人では最年長17歳。1番思慮深くまともかもしれない。


「王の意図が今一つ読めないがやるしかないでしょう」


No.3が発言すると皆、頷く。




「地球の側に小さな惑星があるらしい。そこにこのデカい宇宙船は異空間を開いて停泊させる。地球へは小型船で向かう。」


地球に着くなり即戦闘ではこちらも不利。帰還用に高速宇宙船は護らなければならない。


No.7は収集していた地球付近の映像をテーブル上に投影して見せた。


皆は距離、異空間の配置位置などを確認しながら話を続けている。




大まかな流れは決まった?か。


話が雑談になって来た。何だかんだで私達は年が近い事もあり仲が良い。仕事でなければ本名で呼び合う仲だ。ワード星の戦士としては珍しい。


私もそんな規律を無視する行為を戒める立場にあるのだがこの関係が居心地良くて許してきた。




「さて、雑談はそのくらいで。」


私がそう言うと皆がこちらを見る。


「決定事項は高速宇宙船の隠し場所。ウェヌスヤ星人は1度話し合いを試みる。過干渉を止めて貰えるなら派手な戦闘も必要ないだろう。またウェヌスヤ以外の知的生命体が干渉している可能性を調査する。極力、我等は地球人の文明へ干渉はせず見守る。以上!」


皆、頷く。


「よし!ちゃんと通じとる?もーさぁ標準語、疲れるって。自分で言うてて何て言いよるか訳分からんくなってきたばい」


「No.1。。相変わらず訛ってますね」


No.3がニヤニヤ笑いながら言う。




「仕方なかー」


私は常時方言。戦士になるため王都に来てからずっと抜けていない。標準語も多分話せているはずである。多分。。




皆、笑顔で私を見る。


「まっNo.1らしいですけどね」


うんうん。それでいい。




「ではそろそろコールドスリープに入りましょうか」


No.5が立ち上がると皆、思い思いに準備し始める。


そんな中、No.1は動こうとはしない。


「私はいつも通り寝らんぞ。コールドスリープ嫌いやけん」


はいはい了解っと言った顔でNo.6が微笑む。




「あれ?!でも、、、」


No.7が不穏な顔をした。


「食料が3か月分しか、、、ないみたい」




私は慌てて確認する。なかばい。。。。


1週間前に積み込んだはずなのに。


「やられた。こんな所を節約するとわ」


私はその場にへたり込む。


コールドスリープは長距離出張では定番ではある。食料の節約だけでなく長い渡航では険悪な仲になる場合もあるための考慮。


しかし戦闘力を回復させるにはコールドスリープ後2ヶ月はかかる。リスクも大きい。


「2週間に1度の摂取で良いし、多分予定通りの着だと思うので皆で1つずつNo.1にあげましょう」


「そうね、それで2が月半は起きていられますね」




どうでしょう?とNo.6と7が提案してきた。


「良いと?!よっしゃぁぁー!」


はいはいと頷き子供を宥めるように皆が私に微笑んだ。




少し難ありな感じもしてきた地球遠征3日目。皆は眠りにつき私は1人会議ルームを出た。

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