第25話 AI(愛)の暴走(前編)

愛が暴れまわっている間、ナノはそれを只々見守っていた


他者への被害が大きくなるようであれば、全力で止めるつもりだった


だが、愛のお陰で、一般女性の身ならず、女性冒険者に狼藉を働く男たちが減っていく


愛を慕う女たちが『氷の白百合』とか言うクランを立ち上げたが、面白いので放置した




しばらくすると、街中で女性がらみの問題は起こらなくなった


愛の目の届く範囲でだが


街中には『氷の白百合』の構成員たちが潜んでおり彼女の目となり足となっていた


そこに死角は無かったのだ!


お陰で娼館は毎夜大繁盛


娼婦たちも愛に感謝していた


稼ぎが増えただけではない


愛の制裁を恐れて彼女たちの扱いが改善されたからだ


愛の暴走が町の治安を改善していた




一方、勇樹は街を出た


ギルドで名のある道場や武術家、剣術家の情報を仕入れ


一番近い町にある道場へと向かった


「弟子入りの希望者か? うちの道場なら必ず強くなれるぞ!」


最初は歓迎ムードだったが


勇樹の上達の遅さにたちまち見放される


そんな彼は基本の型しか学ばせてもらえなかった


勇樹はそのことを、いたく喜んだ


基本こそ勇樹の求めているもの


極めるべきものだったからだ


毎日ひたすら教えられた型を鍛錬した


一つ一つの型を極めれば


今度はその型同士をどうすれば自然につなげられるか?


工夫し一連の流れを繰り返した


歩みは亀の如し


しかし、その一歩は着実に強さの高みへと近づいていた




監視と言う名で武者修行に付き合っている駄女神 アスタルテ


彼女は得意としている回復魔術で一躍街の人気者になっていた


と言っても相手は、貧乏で治療費の払えない者たちばかりで、ほとんど稼ぎにならなかったが彼女は満足していた


「おお! 傷が治った! ありがとう綺麗な回復術師さん」


「腰の痛みが取れちまったよ ありがとうね! かわいい回復術師のお嬢ちゃん」


女神として誕生してからこれまで、地上にいる子供たちと触れ合う機会など無かった


それが、感謝されるばかりか


かわいい、綺麗と褒めてもらえるのだ


張り切らない訳がなかった

 



愛、勇樹、アスタルテ


それぞれ進んでいる道は違うけれど、着実に前進している


愛の場合は、ばく進していると表現した方が正しいかもしれないが




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