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 お風呂場でパジャマに着替えをしてキッチンに行くと、そこにはいつの間にか帰ってきていた母の姿があった。母は朝出て行ったときと同じ、真っ黒なスーツ姿のままだった。リビングにいるのは母一人だけで、柚(と灰色の猫)の姿はなくなっていた。 

 バスタオルで顔を隠すようにしている棗の姿を見て、母は笑った。


 母の足元には大きな白いビニールの袋が二つ置かれていた。キャットフードの箱が少しだけ袋からはみ出している。その二つの袋の中にはそれ以外にも首輪やリード、それに食事用のお皿なども入っているのだろう。棗がそう思ったのは昨日、それらを買って帰ると、昨日の夜、母が話していたからだった。


 棗は母の座っている椅子の反対側の椅子に腰を下ろした。

 そこで母と猫の話をした。

 

 猫の世話の仕方や購入した猫の生活用品の使いかたを母は棗に話し、棗は谷川さやかから聞いた猫の知識や、そして、猫の名前のことを母に話した。


 猫の名前についての友人たちとの間にあった話をすると、母は目を大きくして驚き、それからとても嬉しそうな顔をした。そして「猫を拾ってよかったね」と棗に言ってから、一人でリビングを出て行った。


 棗は母から受け取った猫の生活用品の詰まったビニール袋を持って二階に上がり、自分の部屋に戻った。

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