基地襲撃 #4
「危険人物……?二重スパイですか?」
「それもあるが、不利益な亡命者や技術者も含まれる」
つまりはこうだ。この基地はお互いの国にとって不都合な情報や技術を保有するスパイや亡命者を人質交換のように受け渡す場所だったということになる。人質交換とは真逆の裏取引だ。
「存在しないはずの基地での出来事。基地が消えれば綺麗さっぱりという訳さ」
だが、疑問が一つ残る。
「では、侵入者は一体何者だったのでしょう?」
「ふむ、確かにな。以前からこの基地を調査しようとする者は米軍内部以外にもあったからな」
「失礼、米軍内部にも?」
思いがけず調査目的に繋がりそうな言葉に反応する。
「ああ、海兵隊内部の部外者が調査員を追加人員に混ぜてきてね。困ったものだ」
「その兵士の処遇はどのように?」
その質問に「大尉には何もしませんよ?」と指令官は笑って返す。
「ただ、判明した調査員に関しては帰すわけにもいかず、無期限の基地配属にしましたな。なに、多少の口止めは守ってもらいますが彼らも間もなく撤収できますよ」
「そうでしたか」
「いや、海兵隊内では解決しないものだから海軍に泣きつく者が出たようで。ご迷惑をおかけして申し訳ない」
「いえいえ。こちらこそ、お忙しい時期に押しかけてしまい失礼しました」
どうやら音信不通の兵士もこの基地の放棄とともに帰国の目処が立ったとみるべきだろう。それに極秘性がなくなったのなら、この基地についての軍内部でのトラブルも終わる。ただ、知りすぎた調査員の何名か他界している可能性が残ったが、それはあとで分かること。私が踏み込めるのもここまでだ。
「司令官殿。私が帰国後に上官にする報告はどの程度にすれば?」
「ふむ。私が今言った内容と報告書にある内容で一旦手を打ってほしい」
「了解しました」
今日の出来事などは基地の極秘性が必要なくなる2週間後まで詳細な報告は控えてほしいとのこと。その間に海兵隊内で基地の詳細が共有されるとも司令官は付け加えた。
「さて、大尉。報告書は私のデスクに用意できているから、帰りは応援部隊のヘリと一緒に途中まで帰路につくといい」
「良いのですか?」
「帰り道だけでも特別待遇という事でどうだろう」
基地の性質上、ろくな出迎えもできなかった事を司令官は詫びるが、自国のものとはいえ極秘の基地から五体満足で生還できるのだ。これ以上のことはない。
しかし、その考えは甘かった。この時すでにこの基地の命運は尽きていた。建物のドアが吹き飛ばんばかりに開くと、伝令役の兵士が青ざめてこちらに叫ぶ。
「緊急事態です!こちらに向かっていたヘリ部隊が所属不明機に全機撃墜されました!不明機が複数こちらに接近中!」
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