第58話 流布
扉が開き、部屋から出てきた途端
ストレッチャーにナイフが突き刺された。
パンツ一丁で寝かされた解体人の頬を触れるかどうかの近距離にブスリと突き刺さされたシーナイフ
怯えた解体人はそれにギョロリとした目玉を向けた。
御見内「おい おまえ…俺に嘘ついたな?」
「ひっ い? え?」
御見内「おまえ 確か監禁場所はさっきの場所だけって言ったよな?」
「は…はい… そうですが…」
御見内「もう一カ所あるそうじゃねえか この期に及んで俺達にライヤーかますとはいい度胸だ」
「え? ほんとうですけど…」
メサイア「嘘ついたのか?… 生きるか死ぬかの瀬戸際でとぼけた顔してマジ肝座ってんな…おまえ」
すると
ボスッ
御見内がいきなり正拳を繰り出し
みぞおちに打ち込まれた拳で解体人はむせった。
「はう うっ…ゴフゥ ゲホ」
御見内「言い訳はもういい… なんでもいいからさっさと案内しやがれ」
「ゴホッ 監禁場所って ぐふ 何の話しですか? さっきの場所しかありませんよ ガハ ゲホ」
御見内がもう一発腹部へと拳を打ち込んだ
「かはっ がはっ 本当に知らない… かはっ かはっ」
御見内は咽せ苦しむ解体人を乗せたままストレッチャーを押し進め、第2沈殿池を過ぎると次なるステージ
消毒プラントエリアへと差し掛かった。
その手前に見えてきた、地下へと通ずる階段に御見内が小走りで近づきながら口にする。
御見内「まだシラをきるのか? ならその記憶を呼び覚ましてやろう」
そして御見内は地下へと続く階段に近づくや止める事無くそのままストレッチャーごと突き落とした。
「わぁー」
ガタガタガタガタ ガシャー
転倒したストレッチャーと投げ出され落下した解体人がゴロゴロと身体を転げて落ちて行った。
メサイア「お おい あっぶねぇー奴だな…無茶苦茶だろ それ…」
御見内「そうかぁ? こんな嘘つき野郎にはこれぐらいが丁度いいだろう…」
「うぅ…う~」
20段程の階段を身体中を打ちつけながら転がった解体人は痛みでうずくまり、転倒しながら下ったストレッチャーは元戻りに、通路を独りでに進んでいた。
メサイア「イカレてやがる…」
うずくまる解体人を見下ろしながら、2人も地下階段を下って行く
御見内「さぁー 思い出したか?」
「ぐぅ 知らない…そんな部屋は存在しない…」
御見内「おまえ…まだとぼける気か…?」
「本当だ 本当にそんな部屋はない…」
御見内「ほぉ~ ならもう一つ下の階には一体何があるんだ?行けばすぐに分かるぞ」
「地下3階には さ…冴子さんの部屋があるだけだ それ以上はホントに何も知らない」
それを聞いたメサイアが目の色を変えた。
御見内「冴子の部屋?それは何だ?」
「だから 中は知らない…プライベートルームだから入った事も無い だから監禁場所かどうかも分からない 嘘はついてない…」
メサイア「ハサウェイ 冴子さんのマイルームがあるって話しは噂で聞いた事がある その部屋ではマル兄弟と3人でおぞましい趣味が行われるって話しだ…」
御見内「趣味?」
メサイア「あぁ それ以外の人間は立ち入り厳禁だって聞いた事がある…そこで何が行われてるのか噂になった事があるんだよ…こいつの言ってる事は本当かもな こいつは本当に何も知らないかもしれん」
冴子ルーム…
半田はその部屋にいる…
メサイア「気味が悪い…俺はそんな所に行くのはお断りだかんな」
御見内「例の半田さんはそこにいるかもしれないんだ」
メサイア「まじかよ? なら今回こそは本当に諦めろ その半田さんってやらは既に殺されてるかもしれない… 少なくともあの3人にとっ捕まって五体無事な筈がない…」
御見内「そんなのこの目で確かめなきゃ分からないだろ」
メサイア「いや 俺は絶対行かないぞ 断固拒否だ 拒否権を行使する そんな部屋 マジで御免だ」
御見内「どんな状態だろうと 生きてるならば連れ帰る」
メサイア「行きたきゃ勝手に行けよ 俺はパスだ どんだけおぞましいのか想像さえもしたくねぇーし 今後トラウマにもなりたくねぇー」
御見内「一緒に来てくれ」
メサイア「嫌だね」
御見内「頼むよ ここまで力を貸してくれたんだ 最後まで付き合ってくれ」
メサイア「全部無理矢理だろ 言う事は聞かない、すぐに暴走はする その尻拭いはもうまっぴらだ ここまでだよ 行くなら1人で行け」
御見内「脱出は1人じゃ無理だ おまえの力がいる」
メサイア「いやいや 冴子さんはやめとけって…ヘビー過ぎる マル兄弟でさえヤバいのに…顔見ただけでもムスコが縮こまるわ」
御見内「そうかな? ただの頭のイカレた女にしか見えなかったが…」
メサイア「会った事無いからそんな事が言えんだよ」
御見内「いや… ある 一度だけ 一戦交えた事がある」
メサイア「はぁ?冴子さんとか?」
御見内「あぁ 頭がプッツンしてるのはよく分かるよ だけど脅威は然程(さほど)感じなかったがな…」
メサイア「おまえ よく無事でいれたな?」
御見内「さっきも言うたが 所詮ただの女だ うちのお姉さんの方がよっぽど恐ろしい」
メサイア「あんな末恐ろしい女会った事ねぇーよ それをただの女だって…」
御見内「1つだけ約束する」
メサイア「何だよ約束って…」
御見内「どんな事があろうともおまえは五体満足で連れ帰る…」
メサイア「守れない約束はやめろ こんな地獄で絶対なんかあるもんか」
御見内「命はかけられる… 約束は守るよ だから最後まで俺に付き合ってくれ」
メサイアは御見内の目を見るなり、呆れ顔で深い溜め息をついた。
メサイア「ハァ~ ムカつくわ~ 何なんだその熱血教師みてぇーな目は… 命をかけるとか生まれて初めて聞いたわ… おまえなんかと会った事マジ後悔してるよ」
御見内「……」
メサイア「ここを抜けたら 女でも探して ゾンビでもいない離島にでも行って ガキでも作って 平和に暮らす俺の人生設計もこれで御破算になりそうだな」
御見内「いや そうでもないさ いい女なら後で俺が紹介してやる 生真面目で大人しいけど つよ~い婦人警官なんてのはどうだ?」
メサイア「まじか?」
御見内「あぁ 大マジだよ やる気出たか?」
メサイア「ふぅ~ ってか学生じゃあるまいし そんな交換条件如きで心踊らねぇーつうの しかも強制的にやるしかしょうがない空気醸し出しやがって これじゃあ断れねぇーじゃねえか」
御見内「あぁ 今抜けられたら困るよ だから頼むぜ相棒」
メサイア「うぜー 相棒とか言うな」
御見内はニンマリと笑った。
メサイア「じゃあ この馬鹿はどうする?」
倒れ込む解体人に指さし、御見内がしゃがみ込んで口にした。
御見内「だな… もうおまえは用済みだ 死んで貰う…」
「ひ…ひぃ……な…何でもしますから…い 命だけはとらないで…どうか見逃して下さい…」
メサイア「はは 出たぁ 命乞い これがリボルバーならロシアンルーレットすんだけどなぁ~ オートマだから無理だなぁ~ じゃあ目隠し射撃でロビン・フッドもやっちゃうか?頭に何か乗せてさ はは」
「何でもしますから お お許しを~」
両掌を必死で擦り、必死に命乞いする解体人を目にし
御見内「何でも言う事聞くのか?」
「は…はい…死ぬ以外の事なら何でも言う通りに致します」
メサイア「ハサウェイ こんなクズで外道な輩の言ってる事なんて聞く耳持つなよ…」
「お許しを…何でもしますから…命だけは…お許しを…お許しを…」
メサイア「往生際の悪い奴だな おまえ どけ 俺が仕留める」
メサイアがマカロフを片手持ちで身構え、銃口を向けた。
メサイア「死に際ぐらい 目瞑って男らしく散れよ」
「お許しを…服従しますから…命令は何でも聞きますから…」
御見内「もう善良な人を殺さないと誓えるか?」
「勿論です 心の底からお誓い致します」
メサイア「おい 馬鹿な事考えんなよ こんな奴が改心なんかありえねぇーよ」
すると
御見内が解体人にシーナイフを手渡した。
御見内「おまえの言葉なんて信用出来ないとさ… あいつに殺され兼ねないな でも今何でもするって言ったな?ならおまえの本気を見せてみろ じゃないとおまえは死ぬぞ」
「は…何を?」
御見内「それで掌をブスリと刺してみろ」
「え?これで…?」
御見内「すでに指つめられてるおまえにとって、それで命びろいするなら安いもんだろ おまえが本当に改心するのか証拠を見せてみろ なぁ いいだろメサイア? 自分の掌にこのナイフを突き刺したら見逃してやってくれないか?」
メサイア「やる勇気もなさそうだけど まぁ いいだろ おもいっきりやってみろ そしたら命だけは助けてやる」
御見内「だってよ 良かったな さぁ さっさとやれ こっちは遊んでる程暇じゃないんだ」
シーナイフを目にし、ゴクリと生唾を飲み込んだ解体人
切断された指からいまだ流血する手を床に置き、アイスピック持ちでシーナイフを構えたその手はプルプルと震えていた。
その様子をしゃがみ込みながら黙って見守る御見内とハンドガンを向けたメサイア
中々自傷に踏み切れず、身体髪膚油汗が吹き出て来た解体人の両腕が震える。
解体人は軽く息を吸い、吐くや
意を決したのか、ナイフを握る腕を振り上げ、目を瞑った。
そして自らの掌へと振り下ろす瞬間
ガシッと御見内によって手首が掴まれ、それは未遂に終わった。
御見内「オーケー 腹くくったな…合格だ」
メサイア「は? なんで止めんだよ? 合格って何だよ?」
御見内「もういいそんな趣味はねえよ ただおまえが本当に改めたか覚悟を確かめただけだ 命だけは助けてやる そのかわり救出と脱出を手伝え」
メサイア「はぁ~? またかよ コロコロ変えやがって わっけわかんねぇなぁ~ そんな奴仲間に加えるつもりか?」
御見内「もし半田さんが生きてれば運ぶ助手が必要だ こいつにそれをやらせる いいな?」
「は…はい 勿論です あ…ありがとうございます」
メサイア「正気かよ? それなら俺がいるじゃねえか」
御見内「いいから こいつに担いで運ばせる」
メサイア「はいはいはい この地獄のロケーションで俺が一番まともかよ わぁーたよわぁーた 好きにしろ おい!おまえ トンズラ、裏切った時は即こいつで射殺するから妙なまねは起こすなよ」
メサイアがマカロフをちらつかせ懐へと仕舞い込んだ
「ありがとうございます 改心しましたのでお2人を裏切るような事は絶対に致しません これからはまっとうに生きていくつもりです」
御見内は血糊のエプロンやらズボンを脱ぎ、変装を解きはじめた
御見内「だとさ この世から悪人が1人減ったんだからよしとしてくれ おまえそれを着ろ それと名は?」
次いでメサイアも変装を解き、脱ぎ捨てていく
「コードネームはバイヴス 本名は横野と申します」
メサイア「本名までは聞いてねぇし」
バイヴス「すいません…」
御見内「了解した さぁ ではっ 内偵も狩りも中止 予定を変更する これからサクッと半田さんを回収し、早急にここをズラかるぞ」
バイヴスと名乗る元解体人を仲間に加え
半田の救出、奪還に動き始める3人…
その頃…
早くも裏切り者の存在、コーキュートスへの侵入情報が流布し、辺りが騒然としはじめる外…
また…凶器を携える奴隷、黒フードを乗せた数十台ものバンやらトラックがサンクチュアリー(廃病院)から発進
敵の群れが今…
コーキュートスへと集結しつつあった…
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