第54話 救命

腕、脚共に第1関節から切除された見るも無惨に横たわる女性の姿体



しかもこの女性は手足に留まらず

ベロまでも引き抜かれ言葉までもが失われていた。



女性は御見内を見るなり涙を浮かべ、御見内はそっと女性の口を閉ざした。



メサイア「おい そろそろやべぇーぞ そいつを元に戻さねぇーと」



御見内「戻す?この人の手にまたあれを突き刺せってのか?出来…」



メサイア「目的が違うだろ 今は半田って奴を探すのが先決だろ これが見つかれば騒ぎがデカくなって人探しどころじゃなくなるんだぞ 状況分かってんのかよ?」



御見内「分かってる だけどこの人をこのままここに置き去りには出来ない」



メサイア「目的を見失えばその時点でこの計画は失敗する 余計な同情は今は捨てろ どうせこの場にいるみんなは救えないんだ そいつも俺達には救えないんだよ 諦めろ ハサウェイ」



御見内「こんなボロ雑巾の様にされ、弄ばれ続けてきた… この人を見ておまえは何とも思わないのか?」



メサイア「感情論で語るな それは的外れなクエスチョンだ」 



御見内「改心したおまえにならある筈だ この人を見て助けたいとは思わないのか?」



メサイア「それも素っ頓狂で愚かな質問だぜ それよ…」



御見内「はぐらかしてんじゃねぇ 答えろ 俺は今 おまえのハートに尋ねてんだ」



メサイア「う…… はぁ~ 何なんだおまえは… 一体何なんだよその掴みどころの無い所は… あぁ 出来るなら俺だって助けてやりたいさ だがなぁ 実際問題無理がある… ここの実態は噂以上にゲロもんなんだ… こんな中を五体満足じゃないこの女をどう運ぶんだ? この女が見つかれば俺達もアウトだ 庇いきれない お荷物になるのは目に見えてるんだよ これは感情ではどうする事も出来ない現実だ」



御見内「あぁ もっともな答えだな おまえの言ってる事は正論だよ だけど…見てしまった以上見てみぬ振りは…俺には出来ない…」



メサイア「なら聞くが戦闘になった場合どうする?その女を担ぎながらするか?ハッキリ言うが足手まといになるのがオチだぞ」



御見内「……」



メサイア「今の所 助ける方法は無い 諦めるんだ」



女性と目を合わせた御見内



涙を流し 助けを懇願する女性に御見内は胸を締め付けられた



俺が見捨てれば この人に二度と助けは訪れないだろう…



俺がこのままこの場を去ればこの人達は数日後には殺されるかもしれない…



御見内「助けるのは本当に不可能か?」



メサイア「あぁ 無理だ 個人ではどうする事も出来ない状況だ 少なくとも今はな…」



個人では無理か…



女性が精一杯の力を振り絞り御見内の袖を掴んだ



助けて… 助けて…



救いを求める眼



その眼から傷だらけの身体に雫が垂れ落ちた。



御見内の眉がピクリと動き、御見内は女性の目を見つめた。



駄目だ… やっぱり出来ない…



見過ごす事なんて…



個人レベルで無理なら…



眼を瞑った御見内がいきなり無線機をオンにし、口にした。



こうなったら…



御見内「こちら御見内 至急頼みたい事がある」



ポン吉「ジィ こちら本木 どうしました?ジジ」



御見内「早急にエレナと連絡が取りたい ソッコーで繋いで欲しいんだ」



メサイア「エレナ?」



ポン吉「ジィジ エレナさんですか?分かりました 5分でそちらに連絡入れられるよう手配します ジジ」



御見内「申し訳ない 頼みます オーバー」



そして目を開けた御見内



個人で駄目ならば…



ならば…



この日本で今一番デカい組織…



ZACTならどうだ…



御見内「どんな姿にされようと…命あってのもんだ 罪無き貴重な人の命なら…俺は助ける」



メサイア「お人好しの度が過ぎてやがる…っで…何かいい策でもあるのか?」



御見内「まぁーな それはまぁ お楽しみだ」



御見内は袖を掴む女性の手を握り締め口にした。



御見内「もう心配しないでいい 俺達はあなたを…いや…ここにいる人達も見捨てたりはしない 必ずこの地獄からあなた達を救い出してあげるから」



その言葉を耳にした女性は安堵の表情を浮かべ、何度もまばたきをし、軽く頷き、微笑の眼差しを送ってきた。



御見内も笑顔を投げかけた。



次の瞬間



カン カン カン カン



突如リズムに乗せ、打ちつける音が鳴り響いてきた。



女性の表情は瞬く間に強張り、安堵が嘘のように発狂した表情に豹変



また周囲の吊された人達もその音が鳴りだした途端に反応が示され、恐怖に脅えた表情へと変わっていった。



メサイア「やべぇ 誰か来る とりあえず隠れるぞ」



御見内「この人は?」



メサイア「馬鹿言うな いいから一旦身を隠すんだ」



カン カン カン カン



血に染まる業務用の長靴が床を踏みしめ



デカい鉈が何度も壁に打ちつけられた。



カン カン カン



それは一定のリズムが刻まれ、鳴らされている



業務用の白い前掛けは血で真っ赤に染まり



肉をバラす精肉業者のような格好の男が廊下を歩いていた。



また並列して



キュルキュルキュル



キャスターが移動する度、音を鳴らす病院のストレッチャー(移動式折り畳みベッド)を押す男



同じく もう赤だか白だか分からないような血で汚れたエプロン姿



同様な風貌の2人組が近づいて来た。



カン カン カン 



キュルキュルキュル



ブルブルと町民の身体から伝わる震え



嵌められた物の下からでも分かるガチガチに震わせた歯



この音は合図か…



ここの者にとってこれは恐怖の時間なのか…



御見内とメサイアは吊された人達の中へ紛れ込み、陰に隠れて様子を伺うと同時に尋常じゃない町民等の震えに動揺した。



メサイア「こいつらの異常な反応…ここに来るぞ」



そしてメサイアの言葉通り2人組が中へと入って来た



「さぁーて 今日は誰を捌こうか?メスにすっか?オスにするか?」



「誰でもいい 適当に2体選べ」



すると



「おい なんだこのクソあま 落ちてるぞ」



「テメェーがちゃんとぶっ刺してなかったんだろ?」



「知らねぇーよ 昨日ちゃんと確認したぞ」



「まぁ いい じゃあ一匹めはその女にしよう 今日そいつの片腕と片脚 両方解体しよう」



「ははは いいねぇ じゃあ今日はショック死させないよう3時間くらいかけてじわじわ切り落とそうぜ 肉ダルマの完成が見物だな」



「ははは あ! 汚ったねぇ この女恐怖で小便漏らしやがったぞ」



「うわぁ っけんなよ 汚ねぇーなぁ こいつ おまえがストレッチャーに乗せろよ」



「んだよ うぜぇーなぁー このカス女 まじ苦しめて解体してやるわ」



男が女性の白髪を鷲掴みにし、ストレッチャーまで引きずって行く光景を目にした御見内



青筋が幾筋も浮き上がっていった。



ブチブチブチ



強引に引きずった事により、抜け落ちた大量の毛髪を投げ捨てるエプロン男



「髪の毛抜け落ちてんじゃねぇよ」



拳を握り、力いっぱい女性の頬を殴りつけた



その光景を目にした瞬間



メサイアが制止する間もなく



御見内がその場から飛び出して行った。

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