第50話 開眼
動画を全て見終えた御見内が携帯をメサイヤに返した。
御見内「これを見て奴に集った訳か…胡散臭い…何が72の悪魔だ…生憎俺はそういった類(たぐ)いのオカルト話しには興味は無いよ…奴がエスパーだと本気で信…」
メサイヤ「違う 代表は超能力者じやない…れっきとした魔術師だ…」
御見内「俺からすればどっちも同じだ…そんなオカルト系に興味ない…そんな話しはゾンビだけでたくさんだ」
メサイヤ「見た事無い事を信用しろとは言わねぇし…俺はここを離れるから別に全否定したければ好きにしろ だがな…あの人の力は本物だ…ハッタりのマジシャンとは違う」
御見内「本物ねぇ~…本物の魔術って一体なんだよ?呪文を唱えれば炎でも出せるのか?それとも魔物でも召還してみるか?」
メサイヤ「黒魔術だ 悪魔や霊が絡んでる…」
御見内「悪魔って…」
メサイヤ「言霊って言うだろ そもそもスペル(言葉)には一言一言力があるらしい その決められた言葉を組み合わせて詠唱する事によって不思議な力を魔法陣から現界に引き出すのが魔術だ… 悪魔が降臨して囁きかけてくるんだ 代表はその黒魔術の中でも最も禁忌とされる死霊術と呼ばれる呪術をマスターしてる」
御見内「それでゾンビを操れると…それをおまえは真に受けてる訳か」
メサイヤ「真に受けるも何も見れば分かる」
御見内「あぁ そうだな 俺は見た物しか信じない 奴が本物かどうか…奴がネクロマンサーかどうかは言われなくとも自分の目で確かめるさ だがな…これだけは俺からも言わして貰うぞ おまえは騙されたんだよ さっきのあれは予言なんかじゃ無い 前兆は1ヶ月前から…いや もっと前からかもしれない…あったんだ この俺でさえ当時は胸騒ぎや違和感を感じていた…まさかゾンビが現れるとは思わなかったけどな… 奴が勘がいいのは認めるがそれをあたかも予言の様に見立てたに過ぎない… 奴はただのペテンだよ」
林道を走行中 木々の間から突然現れた1体の感染者
メサイヤ「なら俺が生き残ったのは偶然か?」
感染者は猛ダッシュをかけ、車と並走した。
目玉をグリグリ動かし、不気味な感染者の面を窓越しから目にするメサイヤと御見内
御見内「あぁ そうだ 俺だってこいつみたいなゾンビが氾濫するこの世を生き残ってる これは単なる生存確率だよ おまえも俺も同じだ ただ運が良かっただけだ」
車はスピードを上げ、そのまま感染者との距離を突き放した。
メサイヤがミラー越しに感染者を目にしながら口にした。
メサイヤ「あんなのがはびこる世界に突き落とされたんだ 何かにすがりたくもなるぜ」
御見内はパワーウィンドウを開かせ、入り込む風を浴びながら口にする。
御見内「あぁ 分かるよ だが後悔してるんだろ?」
メサイヤ「まぁな」
変わらぬ景色 延々と続くその木々等を眺めながら
御見内「そりゃあそうだ すがった所が悪過ぎる この組織に救いの手なんかこれっぽっちもないんだからな 愛や幸福、胸をはれる正しき思想も理念も無い あるのは狂気に満ちた苦悩に支配、暴力と死だけだ あそこはただのイカレる殺戮集団なんだ 目が覚めてめでたしめでたしだ」
メサイヤ「殺戮集団かぁ……そりゃー違げぇーねぇー」
御見内「俺が思うにあの組織は危険だ このまま野放しにしとけば奴等はきっと勢力を拡大させる ここだけに留まるとは思えないんだ」
メサイヤ「っと言うと…」
御見内「アナーキーな腐敗と混乱したこの世界で こう調子に乗った奴は決まって王様になりたがる」
メサイヤ「王様?まさか…このパニックに乗じて国盗りを始めるとか言ってんのか?…いくら何でもそんな大それた事はないだろ」
御見内「そうかな……なら何で人形の製造なんかしてる?目的もなくただの悪趣味にここまで固執するか?執念を燃やす意味は必ずある なら…代表さんは一体何を造ろうとしてるんだ?」
メサイヤへと振り向いた。
メサイヤ「まさか 本気でユニバーサルソルジャーでも造るって言いたいのか…?国盗りの準備をしてると…」
御見内「これはあくまで俺の想像だけどな…きな臭くてしょうがない」
メサイヤ「完璧にコントロールする戦闘部隊の製造か…そうなれば大変な事になるぞ 100%ゾンビよりも脅威な存在になる」
御見内「あぁ それともう1つ どうも気になる事がある…」
御見内はある事を思い浮かべていた。
メサイヤ「スペツナズの事か?」
御見内「いや… まぁそれもあるんだが 別に」
それは
先程メサイヤから聞いたバスタードレベルAの存在…
その少女に生じたある驚異の能力の開花と、触手…
御見内の脳裏にまるで昨日の事の様に鮮明に刻まれたあの忌まわしき記憶が彷彿された
そう
あの理沙の再来を思わせる不吉な予感を…
ーーーーーーーーーーーーーー
下水処理場(儀式の間 通称サタナキア)
生理食塩水の入った1台のデカい容器
強化ガラス状のその容器の中には目を閉じる1人の少女の姿があった。
身体にはいくつかのプラグ、口には酸素マスクがあてられ、そのボンベから気泡がボコボコと立ち込めている。
また水中には一本の妖しき物が浮遊し、浮動している。
バイオカプセルに収められた少女が特殊な荷台へと載せられ数人の黒フードによって運ばれて来た。
所々不規則に置かれた数十本もの蝋燭
床に生血で描かれたペンタグラムの魔法陣の図形が蝋燭の焔色に照らされ、またその中心に佇む紅き衣と白き衣も照らしていた。
山吹と冴子の姿だ
そして2人の目の前に運ばれて来た容器を眺め、冴子が口にした。
冴子「改めて御対面ね やっぱオリジナリティーはいいわね あの生えてるグロい物… もうなんだかゾクゾクしちゃう」
山吹「よし すぐに水を抜け」
山吹の掛け声でぶっ太いホースが排水口へとつっこまれ
「排出します」
そしてみるみるとバイオカプセルの水が減少、抜かれていった。
水が無くなり、突然重力に襲われた少女は膝からへたり込み、触手も落下、首がうなだれる。
ピクリとも動かない触手を目にした冴子が
冴子「まぁ 大変」
心配げに駆け寄ろうとした時、それは即座に制止された。
山吹「まだ近寄るな 黙って見てろ」
2人はカプセルの中で沈黙する少女をじっと観察、様子を伺った
その数秒後
触手の先端部が次第に動き始め
少女の身体も次第に動き始めた
それを見て、目を輝かせる冴子と笑みをこぼす山吹
食塩水で濡れた少女の髪や肌からは雫がポタポタと垂れ落ち、一本の触手が浮遊を開始した。
次いで少女の指先が動きはじめ
少女はゆっくりと顔をあげた。
冴子「やった 起きたわ」
少女は怯えた表情でカプセルの中から辺りをキョロキョロと見渡し、ゆっくりと立ち上がった。
山吹「カプセルを開けろ」
「ですが…制御装置はまだ取り付けてません」
山吹「いいから開けろ」
「は…はい 解放するぞ バスタードレベルA 覚醒率89% バイタルサイン正常 ロック解除 コネクタープラグ解除 酸素マスク解除します」
プシュー
すると霧状の煙が排出され、プラグやマスクが抜けると共にカプセルが開かれた。
その開かれた扉からオドオドと外の様子を伺う、ずぶ濡れな裸の少女の姿
1人の黒フードがタオルを手にして、少女へと近づいた時だ
山吹「よせ まだ近づくな」
突如 一線が黒フードの首筋へと刻まれ
その首がゆっくりズレ落ちた。
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