第24話 人形
左右の長さも筋力のつき方もまるで不釣り合いな別人の腕
ドカッ バキィ
無理やり接着された2頭と背中に付く1つの頭
ガシャー
その頭に無理矢理接合された一本の腕
子供がふざけて作ったかのような奇妙で無稽なデフォルメ
生き地獄の様な煩悶(はんもん)な形相で館内を破壊し、暴れながらそれは近づいて来た。
エレナ「早織ちゃん 早く着て」
既に着替えを終えたエレナと七海が着替えにもたつく早織を手伝い、扉に視線を向けている。
ガシャャー
「うらあぁぁぁぁ~」
バリーン ガシャー
何かが来る…
そして早織も着替えを終え、3人は後退った。
早織「怖い…」
七海「私も…」
エレナ「早織ちゃんそこに落ちてる黒いの拾って」
早織「うん」
ドタドタ
「ゴォオオオオ」
猛獣の咆哮にも似た辛苦な叫び声が間近に迫り
悶える町民達の中
エレナはトンプソン短機銃を構え
七海が落ちたネイルガンを拾い上げ構えた。
七海「もう何よ…一難去ってまた一難…」
トンプソン用の予備マガジンを抱える早織が七海の背後へと隠れた。
エレナ「早織ちゃん お姉ちゃん達から絶対離れないように」
早織「うん 分かった」
そして七海の脚にしがみつき早織が怯えながら頷いた。
バキッ ガラガチャー
「うがあぁぁあああ」
「救済してよ~ 愛撫してよ~ 嫌いにならないでよ~」
暖簾を潜り
後退る3人の扉の先に荒ぶる跫音(あしおと)が接近
エレナがいつでも発砲可能な態勢で唾を飲み込んだ その瞬間
バカァー
体当たりで扉が破壊され
人間とは思えぬ造形の醜い姿態
「うおぉぉぉおおおお」
「誉めてよ 褒めちぎってよ 褒め殺してよ~」
推定185センチ
「君がぁ塗り替えていくぅ 鮮やかなReflection こうやってぇ 今日がぁ 支えていくVibration oh year fill this world with love wow wow wow oh oh 今日も明日も明後日も~ let me share the love with U…」
ごっつい体格…
不気味に首を動かしながらエレナ等を視認するやそいつは暴れるのを止め停止した。
肩を微かに上下へと揺らし
まばたきされぬ生気の抜けた目
継ぎ接ぎ人形がエレナ等の前に現れた。
距離4~5メートル弱
正面を向くツインヘッドの血走った目に…
エレナの身体に悪寒が走った。
前に見た奴よりも醜い容姿…
またエレナは人形の腹部に取り付くある装置らしき物に目を止めた。
緑のランプが点滅する不可思議な装置だ
「寄り添ってよ 添い寝してよ そっとしておいてよ」
また初めて見る化け物の容姿に言葉を無くした七海と早織は目を見開かせる。
その時だ
「うぅぅ」
手足を撃ち抜かれ、うずくまる町民が声を発し
その声に反応を示し、つられた人形の視線が向けられる。
それからカクカク首を左右にかしげ、うずくまる町民を見下ろすや否や
人形がその町民の首を鷲掴みにし、持ち上げた。
軽々と町民は持ち上げられ…
パッと手放すや、両サイドから強烈な平手打ち
プレスされたビンタで町民の顔が一瞬にして潰された。
七海「きゃあ」
七海は目を背け、エレナはとっさに早織の視界を遮ろうとするが時既に遅し、強烈な殺害のビジョンが早織の目に焼き付けられていた…
原型を留めぬペシャンコな顔から、肉片や流血が零れ落ち、単なる肉塊と化した町民の死体を見せられ、3人の顔はみるみる蒼白へと変わった
またその死体を投げ捨てた人形は更に続けてうずくまる町民の頭を鷲掴みにし、今度はその頭を握り潰し始めた。
「うぎやゃあぃやぁぁぁ~」
圧力が加えられ、必死に空中をばたつかせる脚
叫喚しながらばたつきが激しさを増す中
常人の域を越えた握力で指が頭へと食い込み、ついには隙間からおびただしい量の血が湧き出てきた。
「ぐぎゃあああぁぁあぁ~」
そして…
その万力の様なありえない圧力で町民の頭がグチャっと音をたて握り潰された。
見てらんない聞いてらんないスプラッターな光景に七海は耳を塞ぎ、目を閉ざしている。
顔に血を被った人形が一歩また一歩と前進
エレナ等にゆっくり近づくさなか
また新たな物に目を止め、道草を食い始める
ツインヘッドの向けられる視線の先に…
そこには気絶し横たわる黒フード、ジョージの姿があった。
「やけぼっくりに火つけないでよ 惚れなおさないでよ 元サヤに戻さないでよ」
その瞬間
ジョージの顔面が踏みつけられ
ジョージが踏み潰された。
潰れた頭から脳味噌が飛び散り
踏み外した時
そこには無惨にも潰されたジョージの死骸のみが残された。
エレナがチラッと顔を覆う七海と怯える早織に目を向け、もう一歩後退した時
「魁木 暴れん坊のセイフティーを解除するぞ…」
ライトバンで待機するもう1人の黒フードが何やらスイッチを押した。
すると人形の腹部に取り付く装置が点滅から点灯へと変わり、それが自然と外れ、落下した。
これは暴れを抑止する為の制御装置
そう…一応これでも人形は今まで制御されていたのだ…
それが今外された
そして人形が今、抑制から放たれた
ツインヘッドのイカれた目がエレナ等に着目され、意識が向けられると
突進の構えに入った人形
エレナ「2人とも逃げるよ」
七海「え?え?」
人形が突進の一歩を踏み出す寸前
パパパパ パパパ
トミーガン(トンプソン短機関銃)のバレルから火が吹かれた。
いくら巨漢とはいえ生身
全身に浴びた銃弾により人形が大きくのけぞり、ひるんだ
その隙に七海が早織の手を取り大浴場へと逃げ込み、エレナもそれに続いて後退、浴場へと進入した。
進入際に扉を閉めたエレナ
エレナ「2人共そのままダッシュよ」
その数秒後
曇りガラスに人形の肌色が映り
そして…
ガシャー パリーン
扉がぶち破られ、人形も中へと入って来た。
エレナの放った銃弾は全て的中し、身体中から血が滴っているのだがダメージを負った形跡は見られない
「うぉおおおおおお」
「恋焦がれないでよ 横恋慕しないでよ 間女との密会で昼下がりの情事に溺れないでよ」
「…僕らだけのルールで踏み出す we make a way out 高鳴る鼓動は きっとスタンダードじゃない場所にあるから もう Dont you be afraid oh oh~」
声域の違った3つの声が和声を奏でて浴場に響き渡る
そして 此度助走を取り、突進する寸前
再びエレナがトンプソンの引き金を引いた。
パパパパパ パパパパパ
一発も外す事無く、全弾命中された弾丸を受け、またもその突進を阻止
マトリックスばりの背面で反り返った体躯だが…
人形は倒れない
急激に左右へと傾げた2つの顔が起き上がり、向けられてきた。
「イノセンスなフリして私に近づかないで そんな適当な机上の空論で恋愛のノウハウを語ろうとしないで 私を美人局の道具にしたりラブコネクションに利用してコークの仕入れなんてしないで 多額の生命保険かけたりもしないでよ」
「グルルルルルル」
攻撃的な面構えで視線を撃つ人形の太股の筋肉が肥大し、再度助走態勢を取り始めた。
そして向かって来る人形に…
「ヒモになろうとしないで 朝キャバ、昼はピンサロ、夜はホステスとして働けとか強要しないで しまいにはソープに沈めてやろうとか画策し… 」
「ガァアアアアア…」
パパパパパ パパパパパ
ツインヘッドの顔面に被弾
ザバー
湯船に落下し勢い良く湯が零れた。
七海と早織を無事奥へ逃がし
その場に1人残ったエレナ
エレナ「クリス あなたも2人の所に行って」
クリスが心配そうにためらいながら何度もエレナへ振り向くと
エレナ「大丈夫 行きなさい」
クリスは主の顔を見上げた後、2人の後を追った。
エレナvs継ぎ接ぎ人形 バスタード レベルD
ザバァー
湯船から起き上がった人形
双頭の片方は既にうなだれ、沈黙しているが、もう片方はまだ生きている。
「ぐうぅうぅぅぅ」
顔中から新たに鮮血が流れ出し、たちまち真っ赤に染めあがる顔で威嚇声をあげる人形が湯船から出て来た。
とりあえず2人は逃がせた…
これで心置きなく戦えるわ…
ゾンビじゃない かといって人とも言い難い生物兵器の異形なモンスターと正面から向き合ったエレナが目つきを変え、トンプソンを身構えた。
さぁ 私が安らかに仕留めてあげるからかかって来なさい…
湯船で洗われた血もむなしく身体中から流れる血によって全身が赤で覆われた人形が拍子無く突撃して来るや
パパパパパパ パパパパパパ
トンプソンが連射された。
胸部へ着弾し、前進が停止
後頭部から脳の一部と共に幾つもの弾丸が貫通
また無理矢理背中に接着された頭部からも数発の弾丸が貫き
パパパパパパパパパパパパ パパパパパパパパパパパパ パパパパパパ
たちまち蜂の巣にされた人形の足が完全に止まった。
すると
ガチ ガチ
弾切れ…
全弾使い果たし、弾切れを起こしたトンプソンのドラムマガジンを抜いたエレナが予備を填めようとするが
はっ…マガジンは早織ちゃんが…
マズい…
不用なマガジンを投げ捨て、エレナが人形を凝視した。
弾は無い だから… お願いだからこのままおねんねしてね…
心から倒れてくれと強く願うエレナが仁王立つ人形に目を向けるが…
完全にツインヘッドが死に絶えた人形だが…
一向に倒れる事なく、立ち続けた。
そして手や足を動かし始めた
マジ… まだ死なない訳……
動き出す人形にエレナは険しい表情で見つめた。
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