第42話 節水しても節約にならないので節水やめました

 ごきげんいかがですか?


 近況帳面。このごろのわたしはわたし自身のことを、こんな、よぼよぼ(お腹だけはぶよぶよです)の老いぼれになってようやくわかっていたという「残念ですが、手遅れです。延命治療はいたしません」と主治医の米倉涼子(こめぐら・すずこ)先生に告知されたような心持ちです。せめて告知ではなくて告白であったならば、多少の生きる希望もあったのですが、先生は国民的大スター、安住紳一郎(あんじゅうしん・イチロー)氏と熱愛中のようで、この老いぼれなど、ビジネス上の付き合いにも発展しない様相です。まあ、わたしには、正室の新垣結衣と側室の浜辺美波・芳根京子・高橋ひかるがいるので、いまさら大年増の米倉先生などねえ……ええ。若干、未成年者がいるようですが、こちらはあくまで、メタフィクション・エッセイなので、くれぐれも児童相談所や警察には通報しないでくださいね。「見逃してくれよー」(声・小泉今日子)


 いまのところはまだ水道水の管理は地方自治体が行っているようなので、わたしの暴言は横浜市水道局限定で轟音で叫びます。うまくお伝えできるかわからないのですが、横浜市の場合、水道料金体系は二ヶ月間の最低料金が0〜16立方メートルまでで3066円なのです。わたしはこれまで頑張って節水に勤めていましたので、二ヶ月で大体5立方メートル程度なのですが、不満の要素を簡潔に言ってしまえば、わたしの払う料金は16立方メートル使った人と同じなのです。つまり、よくテレビの情報バラエティーで紹介される「水道料金を節約する㊙︎テクニック」みたいなものなど、横浜市ではなんの役にも立たないということです。おそらくですね、わたしは信仰上の理由ではなく世界最高クラスの閉所恐怖症のため、お風呂に入れないので、王様や大富豪気分でじゃんじゃん水道水を無駄に下水道へたれ流しても、たかが知れていますから、最低料金のままで済むと思います。全ての諸悪の原因は、料金体系があまりにも大雑把すぎることにあり、早急に細分化して欲しいのですが、横浜市の行政が全くの役立たずだということを身に染みてわかってしまったので、まあ変わることはないと断言します。バカどもが! わたしはもはや節約目的ではなく環境問題のためだけに、今後も節水を心がけますが、腹中の怒りは決して収まりませんのから、なにかしらの謀略で横浜市に仕返しをしようと、ヒマさえあれば脳みそのパワーをフルスロットルにして策を練りこんでいます。いいえ、ねるねるねるねは駄菓子です。わたしの脳みその中には含有されていません。芦田愛菜ではなくて、悪しからず。


 最初のマクラの話を蒸し返して、茶碗蒸しを作りましたところ「わたしはかなり強烈な二重人格」のようです。知り合いに少しばかり聞いてみたところ「今ごろになって気がついたの? 遅すぎないか。俺はお前がまだ二十代のころから知ってたよ」と言われ、ネズミの心臓よりも小さいわたしのプチハートにロンギヌスの槍が突き刺さりました。ただし、自己弁護を高額のギャランティーを支払って、高名な弘中惇一郎弁護士にしていただくことになりました。金の出所ですか? 何かお空から風吹ジュンのように降り注いで来たことにしておいてください。さて、弘中先生の手腕を見られます。「この人の二重人格は、一般的によくある内面と外面のギャップなどという生易しいものだはなく。ほぼ全てのことが両極端で真ん中付近を曖昧に彷徨うような日本人特有の性格とは全く違うものです。二、三、実例を挙げますと、完璧主義者なのに大雑把。天使のような極悪非道。意味のないものに心血を注ぎ、重大事項はほっぽりっ放しなどの症状が、108種類、すなわち煩悩の数だけあるということです。ああ、煩悩だらけの楽天家もありますな。まあ、ありていに申せば、彼は精神に重大な問題があるのです。なので、被告人の精神鑑定を強く求めます」……あれ? わたし、なにかの法律に違反していましたか? あっ! 誰か、未成年への淫行みたいなことを、どこかの機関にチクりましたね! それは完全なる冤罪です! だって、この老いぼれの妖刀村正は随分前から袋に包まれていて、鞘から出す事すら出来ないんですよ。もう、こうなったらヤケクソですよ。公衆の面前でイモムシにも劣る、かつてのキングコブラをお見せしましょうぞ!

 結局、わたしは狂気チンれつ準備罪という、令和の最初に施行されたばかりの罪状を問われ、精神鑑定の末、いま現在、四方を真っ白に塗装された上、その他、扉の形跡もなにもない完全無欠の正立方体の部屋のようなところに立っています。ここでは座ることや寝る事はもちろん、瞬きも十分間に一回と制限され、違反すると監視カメラもスピーカーもないのに鋭い譴責の声が響きます。しかし、その声はどう考えても人間の声ではなく、コンピューターで作られた感情のないものなのです。

 実のところ、わたしはこの部屋の正体をなにかの本で読んだことがありますのですでに承知しております。この部屋は、ここにに閉じ込められた人間は必ず発狂してしまうるという、いわば精神を殺す場所なのです。心の処刑場とも言えます。しかし、わたしの場合はここに入れられる前から発狂していますので、正常な人間とは違ってこういう……さて、どうなったのですかね?

 ではごきげんよう。また勉強して来ます。

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