第23話 女なんか嫌いだよ

とあるス◯バで、イケメンと美女のカップルが非常に険悪な雰囲気で修羅場を迎えていた。

と第3者からは見えるのだが、当人たちは、

「蒼真くんって、」

「小早川ってさ、」

「「なんなんだ?」」

自分の親友の話をしているだけである。

「「・・・」」

「お先にどうぞ?」

若干の間をおいて、実里の方が譲る。

「どうも。小早川のいくつかある噂は本当なのか?」

創太のこれまでのような、ふざけた調子はどこにもない。

「ある噂って?」

実里もわかってはいるが、誤認を防ぐために確認する。

「小早川さんが、彼氏が複数人いるとか、援交しているだとか、酒タバコもやってるとか、“蒼馬が遊びだとか“。」

わかっていた。その手の噂は有名なものだ。いや、もはや噂ではなく真実として扱われつつある。

「どうなんだ?知ってるんだろ。」

創太の威圧感が増していく。正直、場面が場面なら泣き出したいくらいだ。

「確かに、明梨にはそういった噂が結構あるのは知ってる。」

「なら、」

「でも、私がその全てを否定したとして信じれる?明梨と私が違うと言って信じる?」

実里も創太の威圧感に負けず一歩も引かない。

「そうだね。正直、噂が全部嘘だ、なんて言われても信じきることは難しいかな。」

正直に答える。そうなのだ、たとえ本人やその友達が否定しても、世の中を覆すことはできないくらい噂は真実になっている。

「なら、私が何か言っても無駄じゃない?」

「いや、確かに信じきることはできないと思う。・・・それでも、もしかしたら彼女の見方が変わるかもしれない。」

実里は悩んだ。自分が下手なことをしたら明梨と蒼馬の関係を壊しかねない。あの明梨が初めて夢中になっているのに、壊したくない。だから創太の顔を見て、真実を語ろうと決意した。

「明梨の噂は、まぁほぼ嘘だよ。」

「ほぼ?」

「うん、1個だけ、明梨に彼氏が複数人いるっていうの、あれは、読み取りかたでは真実になるかな。」

怪訝な表情の創太に、そんなビッチではないと前置きをしてから

「明梨って可愛いからさ、入学直後から学年を飛び越えて告白とかされてたんだけど、」

そういって、とあるノートの1ページを見せる。

「8人、ここに書いてある8人と付き合った経験がある。でもね、二股とかは1度もしたことない。付き合って、まぁあんななりしてるからチャラ男にすぐに襲われそうになって、逃げるように別れてを繰り返してたの。」

創太はノートに几帳面に書いてある人物を一人一人見ていく、先輩から同級生まで、運動部のエースの名前まである。別れた原因とか、付き合った期間まであって、大体2週間が平均ってところだろうか。

正直、何故ここまで完璧なメモをしているのか気になるが・・・。

「でも、その話が真実だとして、どうしてあんなTHEビッチみたいな噂があんなに沢山流れてんだよ。」

「そりゃあ、可愛くてモテて、そんで先輩から同級生まで、他人から見たら優良物件の男と何人も付き合ってたら女は激しく妬むし、陥れようとするのよ。」

実里はそんなことも想像つかないのか?と当たり前のように言う。

「でも、それでもあれだけの数の噂が、どうしてあそこまで真実として語られる?たかが女子の恨み言ってレベルじゃないだろ?」

「そうだね。普通の女子の恨みだけじゃないよ。モテるせいで、明梨は何もしてないのに彼氏が乗り換えようとして崩壊したカップルもあったし、それに。」

「それに?」

「このら辺じゃ有名な金持ちの息子に目をつけられたことあるのよ明梨は。」

「あぁ、そういうことか。」

大体の顛末は今ので理解できた。とにかく、大きな敵が沢山いるって話だ。その金持ちの息子にも心当たりがあった。

「あの子はその金持ち野郎のせいで皆に避けられるようになったのよ。学校なんて飛び越えてね。」




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