第67話 闇の脅威


 目の前の邪悪な気配を纏うディアボロスに、セシルはなす術なく立ち尽くす。エメリヒを殺したくないが、負ければ世界そのものが危なくなるかもしれない。どうしたらいいのだろう。

 とりあえず次の攻撃に備えて防御結界シールドプロテクトを張る。


 すると次にディアボロスは先程よりは少し小さい闇の塊を両手の上に無数に・・・作り出した。


「これなら避けれないでしょう?」


「ッ……!」


 彼は両手の上の大量の塊を一斉にこちらへ繰り出した。


「『聖光球ホーリースフィア』!」


 ウィルが先程よりも大きな直径3メートルほどの光の塊に姿を変える。そしてその後ろに立ち闇の塊に構える。防御結界と聖光球の2重のバリアで何とか凌がなければ!


 彼の手から放たれた無数の闇の塊によってすぐに結界は破られた。光のスフィアで真正面からの闇の塊は打ち消せたが、右と左の塊がセシルの体を掠める。聖光球を回り込むようにセシルの方へ向かってきたからだ。防御強化プロテクションがなかったら左右の腕が抉れていたかもしれない。


「うぅっ!」


 それでもダメージは大きい。闇の塊が接触した両腕からの出血が酷い。セシルは自身に生命力回復ヒールを施す。これ以上の体力の消耗は避けなくてはならない。


「しぶといですね……。これだから聖女っていうのは嫌いなんですよ。」


 先程からディアボロスがしきりに聖女を嫌いだと言っている理由は一体何だろう? これだけ破壊力のある攻撃を持っているのに、無尽蔵の魔力があり無敵ともいえる強さなのに、嫌いというのは何か理由があるのか?


「はぁ、はぁ……。」


 足に力が……。不覚にも膝をついてしまう。

 あの闇の塊は破壊だけじゃない。接触した箇所から何かを奪われてしまったみたいに力が入らない……。取りあえず防御結界を張る。


「これはどうですか? 塵も残しませんよ。ふふふ。」


 次に彼が作ったのは直径5メートルはあるかというほどの大きさの塊だ。あんなのを食らったら一溜まりもない。彼はあっという間にそれを作り上げ再びこちらへ投げつける。


「『聖光球』……。」


『セシル……。』


 ウィルが気遣わしげにこちらを見たあとその姿を再び光の塊に変える。だけど今度の攻撃には間に合いそうにない。


「ケント……。」


 もう駄目だと思った瞬間、思わず彼の名前をつぶやいてしまう。


「おう、呼んだか?」


「ケ、ケント……!?」


 ケントが目の前に立ち塞がり闇の塊を遮る。危ないっ!

 闇の塊は彼にぶつかると同時に打ち消された。


「たまにはこの体も役に立つな!」


「ケント……!」


 ケントが来てくれた! 嬉しい……!


「なん、だと……!? なぜ魔法が効かない……!?」


 ぎりぎりと歯ぎしりをしながら忌々しそうにディアボロスが呟く。


「ごめん、俺にもそれ分からないんだわ。」


 ケントがニヤリと笑い彼に答える。そしてセシルの方へ振り返り話す。


「大丈夫か? 随分きつそうだな。」


「うん、闇の塊が触れたところから何かを奪われたみたいに力が入らないの。たぶん魔力かな……。」


「そうか。じゃあ、俺には関係ないな。」


 そうか、ケントには魔力がない。そもそも魔法が効かない。周囲を見ると先程の闇の塊の散弾により地下聖堂の壁のあちこちが見るも無残に変わり果てていた。


「それにしてもあれはエメリヒか……? 遠くから感じてた邪悪な気配はあいつからなのか?」


「ケント、エメリヒさんが死霊を召喚しようとしてディアボロスっていう悪魔の封印が解けたの。それが彼に憑依したみたい。」


「そうか。この気配はディアボロスって奴の気配か。厄介だな。」


 ディアボロスがニヤリと笑ってケントに話しかける。


「魔法が効かずともお前を殺す方法ならいくらでもあるぞ。」


 急にディアボロスの口調が変化したかと思うと、彼の体が闇の靄に包まれ邪悪な気配が数倍に、いや数十倍に膨れ上がる。しばらくして靄が晴れると中から現れたのは全身漆黒で体長2メートルほどもあるまさに悪魔といった感じの魔物の姿だった。

 そして彼が右手を前に出すとその掌から漆黒の大きな剣のようなものがすっと伸びる。


「もうどこから見ても完全な悪魔だなっ!」


 ケントがディアボロスに勢いよく駆け出していった。




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