5-フタバ

 何故だ。なんでだ。


 僕は小説が読みたいだけだ。なのになんでツルツルスベスベの本まで手にしてしまったのか。


 二回目だが、小説が読みたいのだ。なのに何故か、このツルツルの本を優先するべきだと脳が言っている気がする。しかし、そんなことは時間の無駄だ。小説の方が有意義だろう。だが、身体が素直に動いてくれない。本棚の前で硬直したままだ。


 どうしたものか。とりあえず、椅子に座って二冊の本は机に置いた。二冊を横に並べて、フーっとため息をついた。


 ……なんだろう。


 すごくむしゃくしゃする。


 どうして僕の目は働かないんだろう。そのせいで、こんな風に上手くいかないことがある。


 生まれつき?ふざけるな。


 この目のせいで、世界が見えない。読書も時間がかかる。好きな音楽のミュージックビデオは見れない。美しい夕陽とはどんなものかわからない。暗い場所の不安と明るい場所の安心の差がわからない。「月が綺麗ですね」なんてI Love Youはクソ喰らえだ。「嫌なものを見た」見えるだけ幸せだと思え。桜が咲いても何も感じず。緑が茂っても感情は湧かず。紅葉しても虫の声のみ。葉が落ちる悲しさってなんだろう。


 友達もできない。


 ブラブラさせていた足に、その流れで机の足を蹴らせる。ズキンと痛んだ。




 ……ワタシ、なんで机なんか蹴って……痛いなぁ……




 イラつく。きっと、年頃になっても彼女はできないんだろう。絶望した。普通らしい人生は歩めないのか。無理なんだろう。


 医者がボソボソ話していたのを聞いたことがある。僕の目は、正確には見えないわけじゃないらしい。見えているのに、僕に伝わらないんだそうだ。目は正常に機能しているそうだ。


 頭を掻きむしろうと、右手を持ち上げて頭部に近づける。その時、無意識のうちにヘッドホンを掴んでいたことに気がついた。ふっ、と少しだけ頭が冷えた。耳を包むように、ヘッドホンのフワフワを乗せる。再生ボタンを押す。


 ……はぁ。


 なんだかアホらしい。何を今更キレてるんだか。


 こんな時に、「アホだなぁ」と笑ってくれる友達がいたらいいのになあ。

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