第6-1話 ミックスと純血と風紀委員
「りんりってドラゴンなんだな」
朝の通学途中、静馬は魔法少女時の姿を思い出しながら、隣を歩く燐里に聞いた。
「ラジオ(…みたいな対策会議)でドラゴンエリアって言ってたけれども…ドラゴンなの?」
静馬に『?』になるのも仕方ない。魔族に戻った りんり の姿は、金髪にコウモリ型の小さな翼、デーモンのような先端が矢印になった尻尾で、右頬についた鱗1枚だけがドラゴンと呼べた。
「ミックスだからね」
「ミックス?」
「貴族とか上流階級は純血種、この前に現れたガーゴイルみたいに『いかにも魔族』って姿だけれども、私達一般魔族は、色々な種族が混じっている、まあ雑種ってところだね」
「そうなんだ」
「フローラルドラゴンの鱗に、背中の羽はポケットドラゴン。尻尾だけはデーモンなんだよね」
「ドラゴンだから、ブレスで魔法を吐くぞ」
「針田!」
スクールバックのぬいぐるみは、ぼそっと暴露した。
「あ、だから扇で顔覆ってるんだ」
「そうだけど…ちょっと針田、思春期の微妙な年頃の娘が隠している事を言わないでよ」
「ふん。その思春期の微妙な年頃の娘のせいで、こっちは酷い目に合ったんだからな」
返した針田の声や言葉にハリネズミ並みの針ならぬトゲがあった。
「………」
無言で燐里に『何かあったの?』という視線を向けると、察した針田が答える。
「分身の魔法が高額だから経費で落とせないか、りんりが頼んだら、なぜか俺が呼び出された」
「うわぁ」
「小言を言われた上に『経費に回せん。保護者なんだから、魔法に頼らず何とかしろ』って、何なんだよ、ぶつぶつぶつ…」
威嚇するハリネズミ並みに触れない方が良いなと考え、静馬は話題を無理矢理燐里に振った。
「えーっと魔族の純血種が、そのものって事は、ドラゴンも、そのもの…もしかして建物並みに大きかったりする?」
「もちろん。だが、高位なる我々ならば、伸縮自在。人型にまで変形できる」
返ってきた声は右隣にいる燐里からではなく、左隣からだった。
「誰?」
左を向くとトカゲのような獣人、言葉からして純血のドラゴンのようだ。
「我が名は、マドゥィナ、ボーバルト。かの有名なボーバルト家の高貴なる1人」
『プライドだけ高そうだな』と言うのが、静馬の第一印象だった。
皮膚は赤い鱗に覆われているが、高めの声と身につけている制服がスカートなので、マドゥィナは女子高生のようだ。
膝上スカートと上着の ブレザーは同色の紫色という、魔族ならではのカラーをしている。
「アリジュガーラネッモ学園の高貴なるマドゥィナさん。まずその格好をなんとかして」
そして物凄く目立った。
紫色の制服を着た赤色ドラゴン。周りの視線が集まらないわけがない。
なのだが、マドゥィナは堂々としている。
「ふん、高貴なるレッドドラゴンが、そんな非常識をするわけがない」
マドゥィナは首に下げているネックレスをたぐり寄せ、魔方陣が刻まれたプレートを見せる。
「これは『幻視/レベル5』のマジックアイテム。身につければ人間にしか見えない」
「ドラゴンにしか見えないけど」
「人間の目にしか見えない。特別設定だからな」
「…俺も見えないが」
「魔王族の欠片を持つ者なら、魔族扱いになっているだろう」
「……」
静馬は辺りを見回した。
同じ制服を着た生徒達や、自転車で駅に向かうサラリーマン、収集所にゴミを持って行くおばさんなど、人はまばらにいるが、ドラゴン女子高生に驚く声やざわめきはなかった。
ないのだが、視線がこっちに来る。
ちらりちらりと、人間女子高生に見えるはずのマドゥィナに向かう。
その理由は、校門前に立つ風紀委員が解明してくれた。
風紀委員
学校内の風紀を正す団体。
燐里たちの学校では不定期に校門前に立ち、身だしなみをチェック。場合によっては、生徒指導に報告するという迷惑な行為をしてくれる。
「そこの赤髪の子。学年とクラスは?」
風紀委員の1人がマドゥィナをまっすぐ見て言った。
マジックアイテムは、人間の姿に見える効果はあるようだが、髪の色までは変えてくれなかったようだ。
「ふん、なぜボーバルト家の証である紅色を変えなければならないのだ?」
そしてマドゥィナ自信、人間を演じるつもりはないようだ。
「……。そう言う事ですか、ならば仕方ないですね。BさんCさん。この高貴なる方を生徒指導室にお連れして下さい」
「はい」
風紀委員Aの命令を受けた風紀委員BとCがマドゥィナに近づこうとした時、事は起きた。
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