第4話 泣き虫はどうすれば治りますか?4
私が身に纏うスーツは黒くて、テカテカで、まるで女スパイが着るライダースーツみたいだった。
「やったねルイ! 変身に成功したみたいだ!」
「たしかに変な格好にはなったけど……これはヤバいんじゃない? 変な仮面とあいまって、とっても危険な外見してない?」
「大丈夫! 顔は隠れてるから見られても恥ずかしくないよ!」
「フォローになってないよ! やっぱりこれ恥ずかし格好なんだよね!?」
「いいんだよ外見は! 格好はおかしくてもソルジャーの力は本物なんだから!」
なんなんだよソルジャーって……この変身した姿がそうなの?こんなんでホントに戦えるのか?
「なんだお前その格好は!? 馬鹿か……いや、変態か!?」
なんか敵であるネイルにも変な目で見られてんだけど……戦う前に心が折れそうなんだけど……
わけもわからない状況に号泣する。
「ええい! 消えろ!」
ネイルはサブマシンガンを私のほうに向けて引き金を引いた。煌めく弾丸が自分を目掛けて弾き出されてくる。
「うわっ!」
咄嗟に腕でガードしながら死を覚悟した私だったが、撃たれても生きていた。それどころか異常は、少し衝撃で弾が当たった箇所がじんじんしていた程度で傷ひとつ無かった。
「なに!? お前弾丸を受けて何故死なないんだ!?」
「わ、私もわからない!」
「くそっ! ばけものめ!」
再度リトルが銃を撃ってくる。しかし、やはり弾丸はスーツを貫通しない。たしかにこのスーツは強い!
「ルイ気をつけて! そのスーツは物理攻撃への耐性を持っているけど、同じ箇所に何度も弾丸が当たれば流石に貫通するんだ!」
「それを早く言ってよ!」
銃撃から逃れようと思いっきり斜め後方にジャンプした私だったがそこでも予想外の事態が起きてしまった。
「高い!」
なんと10メートル以上も跳躍していたのである。17年間生きてきて一度も見なかった景色に驚きながら落ちていく。着地に失敗し、思いっきりお尻を強打してしまった。
「どう? 凄いでしょ?」
傍にはティアが駆けつけていた。
「いるなら受け止めてよ……お尻痛いんだけど……」
「わはは! でもわかったでしょ? そのスーツの凄さが」
たしかに……普通10メートルから落下したらひとたまりもないはず……それが少しお尻が痛いだけで骨折もしてない
「それがソルジャーの力……キミの力なんだよ」
「この仮面がこの力を……?」
「それだけじゃない……キミの涙が動力源さ」
「涙?」
「原理を説明してる時間はないんだ……とりあえず、君が泣いている間はその力が使えると思って」
わからないことは沢山あるけど、エビルマシンと戦える力があるってことはわかった。
「急なことで頭の中がぐちゃぐちゃだけど、ティアを信じて戦ってみるよ」
ティアは私の言葉を聞いて希望を得た表情になった。
「ルイ、ありがとう!」
やらなきゃいけないことは、1人でも多くの人をここから逃すこと。エビルマシンとどこまで戦えるかは分からないけど、最悪倒せなくても大丈夫。保安部隊が来るまでの時間稼ぎになればいい。
そうこうしてるうちに、ネイルが追撃してきた。
「お前っ! 普通の人間じゃないな!」
三度弾丸が降り注ぐ。
「うわわっ! ティアッ!さっきのバリアみたいなのもう一度使えない?」
返事が返ってこないので振り向くと、ティアはいつの間にか遠くの物陰に隠れていた。
「ごめん! ボクは戦闘に不向きだから戦えない!」
「嘘だろ! 人任せかよ!」
ここは1人で戦うしかなさそうだ。
飛び交う弾丸を走ってかわしながら、相手との距離をつめていく。かわすと言っても完全に回避出来ているわけではなく、飛んでくる弾の2割くらいは当たっている。
しかし、これくらいならこのスーツはビクともしない。ネイルが弾切れしたのを見て一気に距離をつめ、拳の届く所まで来た。
「もらった! 『村雨』!!」
ネイルは咄嗟に腕でガードしたが、その腕は私の拳によって粉砕され吹き飛んだ。
いい手応えだ。1秒間に60発は打ち込んだか?生身の時より格段にスピードもパワーも増している……このスーツは私の技と相性がいいようだ。これなら倒せる。
「き、貴様っ!」
ネイルが私の拳の破壊力に驚き青ざめる。サブマシンガンが通じないのを察したのか、武器をナイフに変えて襲いかかってきた。
ほかの技も試してみるか……
「『にわか雨』!!」
華麗なステップで一瞬にして相手の背後に回り込み、すかさず突きをお見舞いした。ネイルの背骨状の人工骨格は粉砕され7メートルほど吹っ飛んだ。
「やった上手くいった!」
スーツの性能か、それとも日々の鍛錬の賜物か、とにかくネイルを倒すことが出来た。
「凄いよルイ! あっという間に倒してしまうなんて!」
ティアが手柄を上げた私を飛び上がりながら賞賛して来た。
「いきなり必殺技なんて使っちゃってさ!」
「あれは私が小学生の時、空手の稽古の時に勝手に作った技なの。まさかここまで破壊力があるとは……」
私が強かったのか、それも相手が弱かったのか、いずれにしても危機はこれで終わりだ。
しかしなんだろう……この違和感。まだ終わっていないような……
「一部始終見させてもらったぞ!」
声がした方を見るとそこには一人のヒューマノイドが立っていた。
「まさか女ひとりに武器を持ったヒューマノイドが倒されるとはな……ソルジャーがいるとは誤算だったぜ…とりあえず見事だと言っておこう」
「お前……! ネイルの仲間か!?」
「ああ、俺は五指のうちの一人リトルだ」
「次はお前の番だ! 駅やビルを壊した罪、不特定多数の人間に銃を向けた罪、お前が機械だろうがキッチリ償ってもらう!」
「俺を倒そうってか? 望むところ……と言いたいところだが、今日はこれでおしまいだ」
「なんだと?」
「今日は見学に来ただけなんだ」
リトルのブーツの装甲のようなパーツがスライドし推進装置が顔を出す。装置が起動してリトルは宙に浮いた。
「空を飛べるのか!?」
「お前を倒しにまた来るぜ! ソルジャーは俺達の邪魔だからな! 首を洗って待ってな!」
リトルはそのまま空の彼方へ消えていった。
「逃げられたか……」
いや、逃げてくれたのは好都合だったのかもしれない……あいつはネイルとは明らかに雰囲気が違った。戦闘に特化したヒューマノイドだ。
「やったねルイ、ひとまず脅威は去った」
緊張が一気に解けて、涙も治まった。すると変身が解除され、スーツは煙のように消えてしまった。
「泣き止むと変身が解けるのか……ホントに涙をエネルギーにしてるんだね」
「うん、その事についても詳しく説明しないとね。とりあえず今はここを去ろう。警察や保安部隊が来る前に」
警察に事情聴取されるのも面倒だ。心を落ち着かせる暇もなく、私達は急いで爆煙が立ち込める駅前から立ち去った。
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