⑥
「……ただいま」
「珍しいねお姉ちゃん、いつももっと遅いのに」
「なんとなく、今日は疲れちゃって、ご飯まで横になってよっかなって、ね」
「ふーん、お姉ちゃんらしいね」
そう言って妹はきゃらきゃらと笑う。
まるでなにもなかったかのように。
「あ、お風呂入れてあるけど、お姉ちゃん入る?」
「あー……いいや、ご飯のあとで。いまは眠い」
「そっ。わかった」
そう言うと妹はこちらに背を向けて、居間へと向かう。
わたしは後ろ手に鍵をかけて、自室へ。
部屋の電気をつけ、扉を閉めると、
かくん、と膝の力が抜けた。
そのまま扉を背に、床に座り込んでしまう。
いつもの、妹だった。
その事実が、安堵と嫌悪をくすぐる。
自分が一度帰ってきたことを知らないのだという安堵と、
あんなことをしたあとでもいつものように振る舞えるのかという、嫌悪。
ドロドロ。
ドロドロ。
ドロドロ。
胸の中で何かが渦巻く。
吐き出したいような、叫びだしたいような、何か。
妹が。
あの妹が、他の少女と身体を重ねている。
なぜ。なぜわたしはそのことに、
こんなに感情を惑わされているのだろう。
別に妹が誰と恋をしようと自由だ。
中学2年生だから肉体関係を持つのは早い気がする。
けれど、それだって別に妹の自由だ。
そこに嫌悪を持つ理由はない。
じゃあ、なんなのだろう、この感情は。
なぜわたしはこうも驚き、逃げだし、
立っていることもできずに、
ドロドロドロとした感情を持っているのだろう。
ぐるぐると思考が頭の中に産まれては消えていく。
なにも分からない。
なにも分かりたくない。
別にいいじゃないか。と声が聞こえる。
優秀な妹がなにをしていてもいいじゃないか。
それはわたしの人生じゃない。
すべてを持っていて、手に入れる努力をしている妹が。
その妹が手にしたものだろう。
なにも問題はないじゃないか。
気持ち悪い。そう声が聞こえる。
不潔だ。淫らだ。あり得ない。
妹もその相手の少女もまだ幼い。
まして昨日とは相手が違うのだ。
乱れている。信じられない。気持ち悪い。
色んな声が聞こえる。
それはぜんぶわたしの声だ。
わたしの声がわたしの声で、
いろいろなことを言ってくる。
わたしには分からない。
なにも分からない。
ただ膝を抱えて耳をふさいで、
扉の前でうずくまることしかできない。
ドロドロ。
ドロドロ。
ドロドロ。
なにかが、胸の中で渦巻いていく。
#きっと神さまが殺してくれる 々々 @Cast_A
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