どこを掬い上げても美しくあやなす言葉

文章そのものに色気があって、どこをどう掬っても息を呑むほど美しい。
語りは乾いて淡々と、しかし切実さを消さずに病を語る。風土、それから世界のありかた。詳しい説明がないのに肌に広がる感覚はなんだろう。

病める人の言葉にどれだけの真実が含まれるか。蔓草はすべてを隠して私たち読者に明確な答えを与えない。
だからこそ私の心の一部がこの物語にとらわれて戻らない。言葉に寄り飛ぶいきものが、私の中に寄生、いや共生してしまったのかと思うほど。

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