夏帆サイド

第38話 全てへの結論

一体何故、私は倒れたのだろう。

それが全く分からないまま、お兄ちゃん達が帰った後の夜、病院で過ごしている。

今の時刻は午前一時だ。

夜も深い。


消灯時間の為、廊下も室内も暗い。

唯一、月の光が星の光が有るぐらいだ。

その中で考えてみる。


私が自分自身の事を一生懸命に考えたら頭が沸騰した様におかしくなって車で巫女さんなどに連れて来てもらって病院に来た。

その考えをする私は.....馬鹿なのだろうか?


しかもそのせいか診断結果が夏風邪。

今から十年ぐらい前にひいた以降、ひいた事が無かったのに。

というかひく様な体じゃ無い。


それなりに鍛えてもいるし頑丈なのだ。

なのに高熱が出た。

その考えで、だ。


「.....」


私はお兄ちゃんの手元で倒れた。

自室で異変を感じて外に出てやって来たら、だ。

慌てているお兄ちゃんが微かに見えて目を閉じその後の記憶が無い。


熱でうなされていた様だが.....。

何故そうなってしまったのか全く分からない。

私は脳の回線でも切れたのだろうか?

おかしくなったのだろうか。

ただ考えていただけなのに、だ。


それとも何か。

これがまともなのだろうか?

まともとは本気で何なのだろうかと思う。

でもそのヒントがお兄ちゃんから得られようとしている。


そしてそれが目前に迫って倒れたのだ。

誕生日の日に、だ。

でもそれでもこれだけは言いたい。

私はお兄ちゃんに他の女が付くのがほんとに吐き気がする。

嫌悪する、憎しみが湧く。


本気で.....嫌なのだ。

だけどそれで、殺す、という考え自体がお兄ちゃんの顔を見ていたら薄れつつある。

それは.....まるで水に一滴入れたインクの様な。

そんな感じで、だ。

脳の怒り爆発ゲージが下がっている。


「.....私は.....」


私は.....これからどう生きるべきか.....やはりガタガタで答えが出ない。

母親を瓶でぶっ殺して私は生きている。

その母親の様に軽く人を殺すのは良く無いという事だろう。

だけど.....お兄ちゃんと私の邪魔はさせたく無いのだ。

ゴテゴテだ。


だから私は人を殺す。

それしか出来ないと思っていたのだが。

それは間違いだとお兄ちゃんは説得する様に言った。


本気で全てを変える時なのかも知れない。

例えその考えがマイナスでも。

電池が嵌まらなくても。


だから私は心を知る為に臨床心理士を目指す事にした。

今、私は.....人の全てが知りたい。

そう願っているのかも知れない。

だったら今、私が動くべきは.....恐らく。



「ねぇ、お兄ちゃん」


「何だ?夏帆?」


今日もお見舞いに来てくれた優しいお兄ちゃんに向く。

一晩中考えた答えを言おうと思ったのだ。

お兄ちゃんに、家族にもだけど。

そんなお兄ちゃんはラノベを読みながらたまにリンゴを切ってくれている。

私は.....お兄ちゃんに唾を飲み込み、言葉を発した。


「.....私、変わろうと思うんだ」


「.....え?何を、だ?」


「.....私は.....お兄ちゃんの側に居たい。だけど.....それで邪魔者を妨害するのは止めようと思う」


「.....夏帆.....お前.....」


お兄ちゃんはかなり仰天している。

それがお兄ちゃんの言っている事なのだろうと。

私は今の思考で考えを導き出した。

お兄ちゃんの手が止まる。

それから優しい顔になった。


「.....変わる、か。でもな。夏帆」


「.....?.....何?.....お兄ちゃん」


「.....俺は今、徐々に変わっているお前が好きだ。だから無理はしないで良い。でも.....本当に嬉しいよ」


「.....そうなの?」


そうだ、人間、変わるのはなかなか容易じゃ無いんだ。

だけど.....お前が必死に変わろうとしているのは.....よく分かる。

だから大好きだ。

お前が、だ。

とお兄ちゃんは話した。


まさかの言葉に自然と涙が溢れた。

そして.....涙を流す。

そうだ。

お兄ちゃんはいつだって私のヒーローだと思う。


ヒーローが私を変えたのだ。

それは.....まるで.....ヒーローが花を添える様に。

私は.....真面目に嬉しかった。

思いながら居ると、お兄ちゃんは真剣な顔をする。


「.....夏帆。お前がそういう考えをしてくれるから.....俺も考えたんだ」


「.....え?」


「俺は親父の代わりを止めようと思う。そして.....一から全てをやり直そうと思う。俺は親父の代わりにはなれないんだと思ったんだってね。一晩中考えたんだ。だからここからは俺自身が俺自身を構築していこうと思って。一度、性格が死んだけど.....やり直せれる筈だと思ってな」


「.....お、お兄ちゃん.....」


まさかの言葉に.....嬉しくなった。

そうしているとお兄ちゃんは、ハハハ、と笑い出した。

だからお互いに考えまくって目の下に、くま、が出来ているんだな。

と、だ。


私もクスクスと笑う。

そして.....夕焼けの空を見た。

明日、退院だと思って.....よし。

告げよう、この言葉を。


「.....ねぇ。お兄ちゃん。私は.....貴方が好きです」


「.....え.....おま!?唐突だな?!」


「.....貴方の恋人になれたら幸せ。.....だけど今は.....周りを気に掛ける事を優先したいです。だからこれからも宜しくお願いします。お兄ちゃん」


お兄ちゃんはリンゴを差し出してくれながら頬を掻いた。

それから柔和な顔になって私に向く。

頭を下げた。

そして、こちらこそ、宜しくな、と言ってくれ。

私は.....笑顔を見せた。


幸せを感じる。

私が変わるだけで.....世界はまるで雲が消え、大雨が消え去り。

傘が要らなくなる様なそんな感じになるんだなって気が付いた。

だから.....ここから歩もう。

その様に.....思った。

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