第36話 残った分のヤンデレ
これまではずっと.....義妹の誕生日を祝った事は無かった。
その理由として.....アイツの事が心から嫌いだったと言う点も有る。
何故かって言えば.....アイツはおかしかったから。
例の事件の時も、だ。
だから俺は.....控えていたのだ。
だけど.....今。
アイツは変わろうとしている。
自分自身を変えようとしている。
悩みの溝沼から.....足を出そうとしている。
だから祝ってやっても良いんじゃ無いかって思い始めた。
なので.....俺も考える。
夏帆が喜ぶ物とは何か、と、だ。
祐太朗とたっちゃんが勉強をしている間、考えた。
でも夏帆が欲しい物って何だろうな。
思いながら.....夏帆を見る。
夏帆は.....俺の視線に気が付いたのか?を浮かべた。
俺は首を振ってアピールする。
何でも無い、と。
そして顎に手を添えて考える。
すると.....俺の足に何かが命中した。
俺は?を浮かべて足下を見る。
丁度、ちゃぶ台になっていて足下はベッドに腰掛けて勉強をしている夏帆には見えないのだが.....。
「.....?」
紙だ。
折り畳まれた紙が落ちている。
目の前に座っているたっちゃんを見る。
たっちゃんは下を指差す様な仕草をしている。
俺は静かに足元で広げて読む。
(誕生日プレゼント何にした?)
「.....なるほど」
俺は小声でそう呟きながら。
足元で紙に文章を書いて投げた。
何を書いたかと言えば、花束を贈ろうと思っていると書いて、だ。
たっちゃんはそれを読みながら、ウンウン、と頷いていた。
俺は笑みを浮かべる。
「何やってんだお前ら?」
と、祐太朗が?を浮かべて聞いてきた。
俺達は首を振る。
何でも無いよ、痒いだけ、足が、と答える。
祐太朗は、そうか?、と不思議がりながらもそれ以上は聞いてこなかった。
「.....勉強、捗っているか」
「.....おうよ。まぁポンコツの頭にでも分かる様に書いてるさ」
「あはは。祐太朗くん、アホだもんね」
「誰がアホか」
随分と仲が良くなったよな、コイツら。
祐太朗とたっちゃんだ。
俺は見ながら教科書を見つめる。
何かが挟まっている。
「.....ん?」
と思って顔を上げると、シー、と言う感じの夏帆が居た。
唇に手を当ててウインクしている。
俺は?を浮かべてその紙を取って読んでみる。
そこにはこう記されていた。
(お兄ちゃん。誕生日祝ってくれているの?)
「.....」
(まぁそうだな)
そう書いて祐太朗とたっちゃんが言い争う中、隠れながら渡す。
もう察しているのだな、夏帆は。
思いながらも祐太朗とたっちゃんには秘密にした。
すると夏帆はまた渡してくる。
(.....何でそこまでしてくれるの)
「.....」
(お前が変わったからだよ。だからその意味も込めて、だ)
夏帆は.....少しだけ複雑な顔をしながらも。
笑みを浮かべて俺を見てきた。
それから頷く。
口パクで俺に、あ・り・が・と・う、と告げた。
「もー!祐太朗くん、どうにかしてよ!ソーちゃん!」
「龍の分からず屋をどうにかしてくれ」
「.....お前ら.....」
本当に.....な。
思いながら止めに入る。
その際に夏帆が机に紙を置いた。
俺は後で読もうと思い、取り敢えずは止める。
「良いじゃねぇか祐太朗。お前はポンコツという事で」
「良くねぇよ!アホかお前!」
「ポンコツ太郎」
「ウルセェ!?」
あははと笑い合う、俺達。
夏帆も見たら控えめだが笑っていた。
その様子を見つつ俺も笑みを溢しつつ見つめる。
幸せだ、俺は今。
「.....皆んな。有難うな」
「は?」
「.....え?どうしたの?宗介」
「お兄ちゃん?」
こんな仲間達に囲まれて.....俺は幸せだ。
だから.....この幸せが続きます様に。
思いながら.....ほらほらオメーら勉強すっぞ、と説得した。
明日のテストに備えないと、と言いながら、だ。
☆
翌日。
テストはそれなりの結果になった。
俺は欠伸をしながら教室で帰宅の準備をする。
するとラ○ンにメッセージが入った。
(お兄ちゃん)
(どうした?)
(.....私、まだ複雑なの。どう生きたら良いか)
(.....)
その様に.....メッセージが来た。
俺は.....メッセージを見ながら.....複雑な顔をする。
それから文字盤をタップした。
打ち込んでいく。
(.....お前はお前自身の道を歩んだら良い。捕まらない程度の、人に嫌われない程度に、な。俺も応援する。お前が.....その場所から出るのを)
(.....うん)
(.....お前が変わろうとしている心。それは誰もが知っているさ。だから応援する。俺はお前の事を)
(.....有難う。お兄ちゃん)
それは良いとしてちょっと聞きたい事が有るんだけどと俺に話す、夏帆。
俺は?を浮かべながら居ると写真を送ってきた。
その写真に俺は青ざめる。
(お兄ちゃんのスマホを監視していたんだけど.....アダルトビデオだよね?これ。お兄ちゃん.....?)
(.....夏帆。お前、そういう事は.....)
(話をすり替えちゃダメだよ?お兄ちゃん...........?)
訂正。
やはり義妹はマジにヤンデレです。
思いながら.....この画面の先のハイライトの消えたヤンデレ娘を思い出しながら。
ゾッとしつつメッセージを必死に送った。
夏帆は相変わらずだな、と思いつつ。
「.....ふう.....」
「よお?どうした?辛気臭い顔して」
「.....おう。お前か祐太朗」
「帰ろうぜ。こんなクソみたいな学校から」
ああ、勉強に奪われた時間分のスマホゲームがしてぇ。
と言いながら祐太朗は大あくびをして腹を見せる。
それもそうだな、と小太りな腹を苦笑で見つつ言いながら俺は帰宅の準備を始める。
それから.....学校から帰宅してからそして夏帆に説教を受けてしまった。
監視するなよ。
と思いながら.....俺は額に手を添えた。
昔よりかは遥かにマシだけど。
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