第32話 このクソな世界に差す希望の光

この世界の事を表現する。

端的に言うなら、生きづらい、と言えるかも知れない。

私は性格がかなり歪んでいると思われる。

それはここ最近、思ってきたのだ。


その為、私の考えに.....賛同しない人達も居る。

だけど私は.....お兄ちゃんが好き。

それだけなのに.....何故、上手く行かないのだろう。

思いながら.....三島と話しているお兄ちゃんを見つめる。

やはりイライラする。


他の女と話している、という事実が、だ。

私は.....嫌悪しながら.....見つめる。

すると三島が私を見てきた。

そしてニコッと笑みを浮かべる。


「.....ね?夏帆ちゃんって呼んで良い?」


「.....べ、別に良いけど.....」


「良かったな。夏帆」


お兄ちゃんはその様に笑む。

三島と居ると.....心がムズムズする。

私は.....こんな私に.....気を掛けてくれる事にも.....ムズムズする。


これはおかしいのか?

私が.....狂っているのか?

どういう感情なのだ。


「.....お兄ちゃん。私の顔.....引き攣ってない?」


「全く。お前が.....呼び名を変えても良いとは言ったのは.....初めてで驚愕したが.....全く問題無さそうだな」


問題は有るけど.....でも嫌な気はしなかった。

その様子に笑みを浮かべて、さて、とお兄ちゃんは前を見る。

ゆっくりと歩き出した。


私はその様子と三島を見ながら.....溜息を吐く。

いやいや、落ち着け、私。

今、イライラしても仕方が無い。

お兄ちゃんが.....母の日を探しているのだから。

不愉快な顔をしても仕方が無い。


「.....夏帆ちゃん、大丈夫?」


「.....え?あ、ああ。大丈夫だよ」


私はどうしたら良いのだろうか。

どう、三島に接したら良いのだろうか。

本当に悩んでしまう。

三島の事は、だ。


「デパートに着いたぞ」


「あ、そうですね」


「.....」


三島の事は今は良いか、と思いながら。

私はお兄ちゃんの様子を見る。

お兄ちゃんの精神は安定している様に見える。

三島が私に話し掛けてくる。


「お兄さん.....安定している様に見えるけど.....」


「でもね.....ちょっとおかしいんだよ。悩んでいると思う」


「.....そうなんだね。だったら出来る限りサポートするからね」


親指を立てる、三島。

私は目線だけ動かしながら聞いた。

何故、一体何故。

そこまでしてくれるのだろうか。

この女。


「.....何で私の為にそんな事まで.....」


「だって親友だもん」


「.....!」


親友とは何だ。

そんなに親密なものなのか?

思いながら私は目の前を見る。

信号が歪んで見えた。


「.....え!?夏帆ちゃん!?」


「.....あれ.....?」


泣いている。

お兄ちゃんも驚愕しながら私を見る。

地面に吸い込まれる様に目からの滴が吸い込まれる。


煉瓦に、だ。

私は私の様子に驚愕する。

何が起こっている?!


「夏帆!?大丈夫か!?」


「え.....っと。うん、だ、大丈夫だけど.....」


「夏帆ちゃん!」


ハンカチを取り出した、三島。

そして私の目に押し当てる。

私は更に驚愕しながら一歩引きつつ。

目をゴシゴシするが。

涙が止まらない。


「.....夏帆.....お前.....」


「.....お兄ちゃん.....ごめんね。私.....せっかくの日に.....」


「.....いや」


私は涙を拭う。

するとお兄ちゃんが優しく抱き締めてくれた。

私は更に驚愕しつつ、お兄ちゃんを見上げてみる。

お兄ちゃんは.....私の.....頭を撫でてくれた。

そして.....優しく語り掛ける。


「.....夏帆。相当に.....無理していたんだなお前.....有難うな」


「.....私.....苦労しているの?分からないんだけど.....」


「.....お前自身の痛みが限界になっているんだよ。その証拠にお前は泣いているじゃ無いか。お前は.....優しくなっているんだな」


「.....そうなんですね.....」


三島とお兄ちゃんの会話を聞く。

何というか.....歩いている通行人の目が気になる。

でも私は.....それよりもお兄ちゃんのその言葉に驚かずには居られなかった。


私が優しくなっている?

そんな馬鹿な事って有るの?

でも.....お兄ちゃんが.....言っている.....でも。


頭が混乱してきた。

そうしていると.....お兄ちゃんが更に声を掛けてきてくれた。

よろめいている私を受け止めてくれて。

そして優しく声を掛けてくれた。


「.....あのな、夏帆。周りは気にすんなよ。そして.....無理はするなよ。帰りたくなったら言うんだぞ」


「.....お兄さんの言う通りだからね。夏帆ちゃん。無理はしないでね」


「.....」


私は.....お兄ちゃんの為に動いている。

だけど.....世界が広がっている。

その様な気がした。


でもお兄ちゃんはまだ変わって無い。

私が救わないといけないのだ。

だから.....と思いながらお兄ちゃんを見る様に見上げる。

それから.....真剣な顔をした。


「.....私が変わり始めた。だから.....お兄ちゃんも変わってね」


「.....俺?」


「.....そう。お兄ちゃん。お兄ちゃんはもう.....身代わりになる必要は無いんだから」


「.....!」


お兄ちゃんは見開いた。

吾朗さん。

その代わりはお兄ちゃんって言うけど。

私はそうだとは思わない。


そう.....お兄ちゃんもきっと変われる。

今、私が変わり始めたとお兄ちゃんは言った。

私はきっと変われるのだ。


「.....でも今はそんな事は置いておこうお兄ちゃん。デパート.....楽しもう」


私はお兄ちゃんの手を引きながら二人に笑みを見せた。

この世界は生きづらい。

だけど.....きっと耐えた先には.....見返りが有る。


私は.....その事に気が付いた。

だから.....今は.....楽しみたい。

その様に.....考える。

それが一般の人の考え方だと.....思いながら。

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