第17話 夏帆の全ての正体が暴かれる時

ギャル達を処刑してファミレスに戻ると。

直ぐに心配そうに涙目の松添が駆け寄って来た。

私はそんな松添に真顔だったが、少しだけ口角を上げる。

そしてゆっくりと言葉を発した。


「.....もうこの先、虐めの心配は要らないと思うから」


「.....え?」


「.....もう貴方を襲う事は無いから.....多分」


事実、健常者としてはこの世から退場したから。

これからは障害を持つ者として社会の中で生きてもらう事になる。

その様に笑みを心の底で浮かべていると松添が私の手を握って、そして涙を流しながら話してきた。


「.....有難うな.....その.....立ち向かってくれて.....私の友達って言ってくれて.....」


「.....別に.....それは.....その.....」


友達としてやった訳じゃ無いんだけど。

その様に思いながら、会話をしていると。


向こう側から、お前ら?、と声がした。

見ると、目を丸くしたお兄ちゃんが立っている。

な.....!?


「.....お前.....夏帆?たっちゃん?.....いつの間に仲良くなったんだ」


「あれ?ソーちゃん.....居たの?」


お互いの言葉に目を丸くする。

私は酷く困惑していた。

松添は私の事を.....山下として見ている。


お兄ちゃんは.....私を山下と気付いてない。

それはつまり、かなりマズイと言う事だ。

どうする.....。


というか何時も何時も何でこんなに上手くいかない!

まだお兄ちゃんが居たなんて予想外.....!!!


「ソーちゃん。私ね、山ちゃんに助けられたの。優しいんだよ。山ちゃん」


「.....いや、その娘は.....俺の義妹なんだが.....」


「.....え.....!?」


当然の事だが、二つの視線が私に向く。

お兄ちゃんは特に唖然としていた。


しまった.....人を.....助けて社会奉仕をしていたらこんな目に。

やらなきゃ良かった、クソッタレ.....私はそう思った。

そして唇を噛む。


「山ちゃんが.....ソーちゃんの義妹.....?」


「.....って言うか、山ちゃん.....え?」


驚愕する、お兄ちゃんと松添。

ますます混乱が広がった。


当たり前だが私は.....困惑するしか無い。

何てこった.....と、だ。

俺は非常にマズイ.....!


「宗介。どうしたの?」


「どうした?佐賀」


後ろから?を浮かべた文芸部の奴らが気にする。

クソガキも同様に、だ。


その連中に、い、いや、と言うお兄ちゃん。

それから私の顔を見て拳を握り震え出す。

それは感情が複雑になったからだろうけど。


「.....その.....すまないけど.....先に帰っても良いか?みんな」


その様に話す。

え!?と驚愕する連中を置いて。

私の丁度、目の前にお兄ちゃんが来た。

見下ろされるその顔に竦む、私。


「.....一体どういう事だ?何故、山下.....さんに変装していたんだ。演じていたんだ.....!」


なんてこった、私の正体が全てがバレた。

私は歯を食い縛りながら、お兄ちゃんを見上げる。

お兄ちゃんは酷く怒っている様に見えた。


お金をバァンと音を立てて置いて。

それからお兄ちゃんは私を一瞥して去って行く。


「.....仮にも兄を騙すなんて信じられない。弄んだんだろうな.....嘘吐きめ」


吐き捨てる様に話して、だ。

その場の空気が淀む。

松添が私を見てきて、そして話してくる。


「.....大丈夫。話せばきっと分かってくれる.....!」


「.....」


耐え切れず私は走って出て行った。

そして、お兄ちゃんを追うが、お兄ちゃんは何処かに行ってしまっていて。

私はその事に涙を流して、トボトボと家に帰った。



家に帰って来てから丁度1時間が経過したのだが。

全ての計画が狂い始めた。

急いで修正をしなければいけない。


先ずお兄ちゃんとの仲などを修正する必要が有る。

お兄ちゃんと私は一心同体だから.....。

だから.....嫌われるなんて有ってはならない。

絶対に!!!


コンコン


「.....はい?」


酷く困惑しているとノックがした。

こんな時にか?邪魔めが。

私はそう思いながら舌打ち混じりにドアを開く。

そこにお兄ちゃんが立っていた。


「.....え.....?」


「.....夏帆.....お前が山下で有る事にかなりの衝撃を受けた。.....その、何を言いに来たかと言えば.....別れよう。嘘を吐く.....お前とは付き合えないし.....お互いの為に」


「.....えっと.....えっと.....」


そう.....なん.....だけど.....!!!!!


止めて。


私はお兄ちゃんが全て。


お兄ちゃんがそんな事を言うなら私、お兄ちゃんを殺すしか無くなる。

そんなのは嫌。


いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや。


い、嫌ぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「.....夏帆?」


「.....ゼエゼエ.....」


「夏帆?夏帆!!!!?」


何だか身体が固くなった。

倒れる私。

そんな中で、私を見ていたお兄ちゃんが私を支える。


頭の思考が回らない、息が苦しい。

全く息が出来ない。

何だこれ.....!?


「た、大変だ.....母さん!母さん!!!!!救急車!」


ゼエゼエという私の息の音だけが聞こえる。

目の前が暗くなる。

ヤバイ、このままでは気絶する.....!

.....きぜつ.....する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る