第12話 呪われた過去
義妹は何か隠している可能性が有る.....が。
その様に思いながらも.....その、行動が出来ない。
何故かってそれは義妹に嫌われるのが怖いとかじゃ無い。
例えば俺が義妹の事を調べて智久さんとかそういう人に嫌われては意味が無い、または裏切りたく無いので動けないのだ。
部屋に忍び込もうとも思ったが、アイツは頭が良すぎる。
だから俺は忍び込もうと思わない。
(では、現場から.....吉田さんお願いします)
テレビからニュースが流れる中。
ご飯を食べる俺と智久さんと夏帆とそして俺の母さん、佐賀巫女(さがみこ)。
46歳で、そばかすが有る母さん。
黒髪に若干の白髪。
顔立ちは優しい顔立ちだ。
そして俺に対して、夏帆に対してずっと柔和に接してくれる。
女神の様な母さん。
俺は母さんが大好きだ。
「.....宗介。どうしたの?」
「.....いや.....」
そんな母さんを見ながら、悩む。
先程の夏帆のお兄ちゃんという言葉に。
それはまさに衝撃的だった。
夏帆の隠し事についても悩む。
絶対に何か有ると思うが。
思いながら悩む。
だけど.....それは違って、夏帆も俺と同じで悩みが有るのだろう。
単にそう思いたい。
「何か有ったら話しなさいね。お母さんに」
「.....有難う。母さん」
母さんに話しても良いかも知れな.....あ。
俺はそこで思い付いた。
確か、母さんは夏帆の部屋を片している。
ゴミ箱からごみを収集したりとか。
「.....後で話が有るんだけど。母さん」
「.....今は駄目なの?」
「駄目かもな。後で」
「分かったわ。相談なら任せて」
流石は臨床心理士だ。
俺はそう、思いながら。
横の夏帆を流し目で見た。
怪しみたくは無い。
だけど.....。
どうしたら良いんだろうな、俺。
「そう言えば宗介くん。祐太郎くんは元気かな?」
「はい、元気ですよ。って言うか、元気過ぎるぐらいです」
「.....そうか。良かった。友情は大切にしなさい。.....夏帆はお友達は居るのか?」
「.....何で私に振るの?パパ」
それはお前にも友達が出来てほしいと.....思っているから。
だが、それに対して、ご馳走様。
と言って食器を荒く置いて、そのまま去って行った。
少しだけ.....変わりなくギスギスしている。
そんな感じだ。
俺は溜息を吐きながら、智久さんを見る。
頭を下げて、苦笑した。
「.....済まない。ギスギスしたものを見せたね。.....相変わらずだから.....」
「いえ、義妹はあれで義妹ですから。気にしません」
「.....そうだね。.....夏帆は.....」
おっと、この話は夏帆には内緒だったな。
首を振って、それから智久さんは小悪魔の様な笑みを浮かべ、食器を片した。
俺は深追いはせず、智久さんを見つめる。
☆
「それで、母さんに相談って何?」
「.....」
午後8時、母さんの部屋。
そこで家事の合間に俺達は対面する形で座布団に座っていた。
母さんの部屋の香り。
畳の香りだ。
「.....言って良いのか分からない.....けど。母さん。夏帆の事だけど」
「夏帆ちゃん?夏帆ちゃんが.....どうしたの?」
「最近、夏帆が俺に対して穏やかになってきたんだ。だけど.....その.....」
「.....?」
駄目だ、言い出しづらいな。
俺はその様に思いながらも意を決して口を動かす。
母さんは静かに待ってくれていた。
「.....穏やかになる度に.....俺.....が何かおかしいんだ」
「.....具体的にどうおかしいの?」
「.....何か.....夏帆から恐怖を感じるって言うか.....まるで殺される様な」
「.....夏帆ちゃんから.....?.....うーん、そうなの.....」
俺の話を真剣に聞いてくれる、母さん。
そして顎に手を添えた。
これは母さんの癖だ。
顎に手を添えて、そして顎を撫でる様にして考える。
男が良くやる様な、癖。
俺はその、母さんの姿に憧れて。
将来、同じ職業に就きたいと思ったのだ。
「夏帆ちゃん.....多分、貴方の事を嫌っている訳じゃ無いと思うわ。だけど.....その.....」
俺の顔を見据えてくる、母さん。
顔を俺は?を浮かべて見る。
そして母さんは真剣な顔で言った。
「.....この事を話すとなれば夏帆ちゃんに許可を取ってから言うわね.....夏帆ちゃんは.....実は貴方以上に.....色々とダメージを受けているから.....」
「.....え」
「.....夏帆ちゃんに会いましょう。一旦」
どういう事か、俺は分からないまま。
夏帆の部屋に母さんと共に行く事になった。
思えば、夏帆の部屋に行くのは。
初めてだ。
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