第15話:謁見衣装

玉座の扉の前でほんの少し遅れて、女子達がドレス姿でやってきた。

皆さん普段は戦っているとは思えない程きらびやかな色取り取りのドレスに包まれていた。

スカートの裾は足首を全く見えない程長く、膨らんだふわっとした布のヒダで腰の細さを際立たせる。

ローリアさんとシャナンさんは、さっきよりウエストを引き締められ、逆にそれが胸元が強調されている。

ここの王族の趣味なのかなと疑ったりする。

髪も丁寧に結われ頭の上で綺麗な三つ編みがバランスよく弧を描き、その上にのった小さな帽子が、可愛さを演出していた。

「どーよ。」切っ先一番シャナンさんが仁王立ちで男共にその姿をひらけかした。

「おう、色っぽい色っぽい。」

「何とかにも何とかだな。」

あまり、にも棒読み的な発言。

皆さん、女性に慣れているのかな。

「脱いだほうがもっと良い!いっ!」

最後に言った言葉はさっき、覗きに誘った冒険者さんだけど、言い切る前に肘鉄がシャナンさんの肘鉄が飛んでいた。

その冒険者さんは思いっきり跳ばされ、床に突っ伏した。

「素体を褒めてくれてありがとう。」
シャナンさんの眉間に皺が寄っている。

ドレス姿とのアンバランスが怒りを強調しているようだった。

「もうちょっと、まともな褒め言葉はないの?」

ローリアさんもシャナンの後に続いて殴る事は無かったけど、仁王立ちでホーウェンさんを見下ろして言った。

「ジョナサンはどう?」

続いて顔をのぞき込むようにして、僕に振られた。

正直あんまり綺麗だったので、なかなか直視ができなかったけど、お許しが出たので少し控えめに彼女の姿を見て。言葉を選んだ。

「はい、とっても綺麗です。」

「えっ?なんだって?ん〜?」

手を添えた耳を僕の方に傾けた。

褒め言葉のおかわりをご所望です。

「ローリアさんの素敵な笑顔に良く似合っていて、でも大人っぽい魅力があり。とても綺麗です。こんなお嫁さんがいたら幸せになれそうです。」

そう言ったら、ローリアさんは顔を赤らめ、驚いた様に身を引いた。

あれ。ちょっと言い過ぎたかな?

でもそれは杞憂だった。

すぐに満面の笑顔になった。

「ありがとぅ。」

可愛い。正直ドレス効果あるけど、今の言葉の表情が一番可愛かった。

そういえばカレンちゃんにも同じような褒め言葉を言った記憶がある。

でも彼女は「当たり前でしょ。」といって特に感動もしてくれなかった。

「あら、ローリアだけずるい!」

「そう、私達もいる。。。」

後ろで歩きにくそうにしていた2名のレディ達も前に出て丁寧なお辞儀をしてくれた。

「ジョナサン。私達のクランメンバー、お姉さんタイプのキョウコ・ハッシュに、こっちの妹のような子がヤヒス・ミョウル」

「よろしく〜」

キョウコさんは声を出してくれたけど、ヤヒスさんは、引っ込み思案なのか、お辞儀しただけだった。

この方達も相当綺麗だ。

それに、キョウコさんはローリアさんに負けないぐらいの引き締まる所は引き締まっているけど、出るところは豊満なお身体をお持ちです。

それと比較してヤヒスさんは、小柄ながら、可愛い妹のような感じでフワッとした感じだ。

着替えを覗きに行って嫌われる事なくって、よかった。

「あ〜そうだ。」

ドゥベルさんは自分のクランメンバーに向き合い。改まって、言った。

「お前たち報酬は期待するなよ。結局俺たちは魔王を倒したわけじゃ無いんだからな。」

「そんの、わかってるって。」

「俺たちとしてはイベントが報酬だろ?」

僕はこの言葉に、チョット驚いた。

この世界の殆どの冒険者さんは、常に強い武器が第一目標で、誰よりも強くなるのを自慢するのがステータスだった。あくまで報酬がメインでこの世界に滞在している。

この世界や街に住む人々の言葉はほとんどが二の次に(シナリオスキップ)されていた。

だから、そう言う人達がいるなんて思わなかった。

「皆様、準備は整いましたでしょうか?」

紋章官ウォーレンさんはみんなの顔を確認し、大丈夫と認識した後に、目の前の重厚な装飾の扉をノックした。

ほんの少しの間を置いて、扉がゆっくりと内側に開く。

高さにして3mぐらいはある扉は、開けるのも大変らしく扉番の人もゆっくりと開けていた。

「どうぞ。中へ。」

そう言うと扉の横に立ち先に中に入る様に促した。

ドゥベルさんを先頭にドカドカと入っていき、続いて男性陣が行く。

一名意識が戻らず、首根っこを掴まれつつ中に入る。

「ちょっとレディーファーストは?」

「そんな面倒くさい事しなくてもいいだろ。」

僕は女性に先に中に入るように促し、最後に入るつもりだった。

「もう、紳士なのは、ジョナサンだけね。」

キョウコさんが続いて、スカートの裾を持ち上げ、入っていく。

「折角だから、エスコートしてもらいなよ。」

後ろからシャナンさんがローリアさんの肩を叩き、言い捨てるように中に入っていった。

「もう、シャナン!」

ローリアさんはシャナンさん振り回されっぱなしですね。

聴き方間違えばローリアさんが僕に気があるようにも・・・

ちょっとまて!そっそうなのか?NPCである僕に?

いや、待て!待て!それは無いだろう。今は謁見の前!

あまりよこしまな考えを持ったまま、ここを通るのはまずい。

TPO(Time Place Occasion)をわきまえないと。TPO!

それに紋章官さんもこちらを見ている。

心なしかクールでイケメンなイメージがある紋章官さんが目で笑っているようにも見える。

ここは、シャナンさんのちょっと嬉しい振りにおとなしく便乗が正解か。

「喜んでお引き受けいたしますよ。レディ。」

そう言うと僕は少し腰を引いて、ローリアさんの前で手を差し出した。

ローリアさんが拒否したら恥ずかしいとも思ったけど、白いグローブに包まれた綺麗なシュルエットの指が僕の手にちょこんっと乗った。

「じゃぁ。よろしくねっ。」

一抹の不安はすぐに吹っ飛び、まぶしい笑顔がそこにはあった。

そういえば女性と手をつないだのはいつぶりだろうか?

暫くは手を洗わないで居ようかな。

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