第13話 休息
オーガを筆頭に、まだ『原型を保っている』魔物を空間魔法にて収納していく。
そして皆の元へと戻ると、『宵の三日月』とワンズに囲まれてしまった。
「まずは我々を助けてくれてありがとう。」
メリルを筆頭に、深々と頭を下げる『宵の三日月』の面々と、ワンズ。
「不躾な質問で申し訳ないが、君はいったい何者なんだ!?」
そう言ってメリルはメイの肩を掴んで揺さぶる。
当の本人は、これでも『抑えたつもり』であり、何がなんだか分からないと目を白黒とさせている。
「ちょっとメリル!メイちゃんが可哀想よ!」
「あ、あぁ!すまない!」
姉御肌のレヴィは、メイの様子を見てメリルを制した。
しかし、質問したいのはレヴィも同じ。
マークスとリヒャルド、寡黙な最年長であるカンジュまでも顔を煌めかせている。
「君はドレイムへは何の目的で行くんだ?」
ワンズは真剣な表情で問う。
メイが学園へ向かっている事は『宵の三日月』もワンズも知らない。
ただの乗合馬車の利用者として接していたのだ。
「が、学校へ行けると言うので...」
なるほど、とワンズは大きく頷いた。
これだけ素晴らしい戦闘力の少女等、そうそういない。
つまり、ハンターズギルドがしばらく彼女を世間から隠す為に学園へ行かせるのだと気づいたのだ。
それは『宵の三日月』も同じで、理解はした。
が、納得出来ない。
「こんなスゲー奴を何年も眠らせとくなんて、勿体ねぇ!うちのパーティに入れよ!!」
リヒャルドは声を荒げる。
確かにハンターとしてすぐにでも活躍出来る実力は勿論あるし、メイならば『稼げる』のだ。
「こらこらリヒャルド君、そんなにがっついてはメイさんが怖がってしまうでしょう…。」
カンジュはリヒャルドを否定は出来ない。
というより考えは同じだ。
しかし相手は10歳程度の少女である。
彼女には『先がある』のだ。
『宵の三日月』はアントランド王国でもそこそこ名の知れたパーティである。
しかし彼女は未だ無名ながら、その実力、『宵の三日月』よりも良い受け入れ先があるだろう。
「よし、とりあえずメイちゃんのお陰様で一件落着した事ですし、今日はもう休みましょうよ!」
レヴィが気を使ってか、話を逸らしてくれた。
注目されるのが苦手なメイにとってはありがたい。
今も既に恥ずかしさの余りに頬が染まっていたのだ。
ワンズ、『宵の三日月』、メイ、各々当初の寝場所に戻ることにした。
*
『寝れないのか?』
すっかり形を潜めていたデミドランが、未だ宙を眺めるメイに問う。
「ううん、少し興奮覚めやまぬって感じかな。」
久々の戦闘で、目が冴えてしまっている様だ。
垣間見られたメイの片鱗。
「もう少し抑えないとかぁ…。」
反省も含めて、先の戦いを省みる。
スライムを倒した空気圧、スラッグ・ゴートへの雷撃、オーク・オーガへの体術。
どうやらどれを取ってもこの世界では上位に入ってしまうらしい。
自分自身の性格、そして目的の為には注目を浴びるのは好ましくない。
これから先が思いやられる。
呟きながら目を閉じたメイ。
アドレナリンの放出が終わったのか、数分後には静かに寝息を漏らしていた。
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