第17話べっどいん!

 そして、俺の部屋。夜も遅くなり、七重は俺の中に戻り、すでに寝ていたが、俺と美夜は、少し目が冴えお互い天井を見ながら話をしていた。

「宗吾さん、起きていますか?」

「起きているぞ、どうした?美夜?」

眠れない美夜は、少し恥ずかしそうに俺に声をかけてくる。

「いえ、ちょっとお話をしませんか?やっぱり男性の方と寝るなんて初めてで、少し、緊張していて……何か話しませんか」

たしかに普通は、高校生になって同じ部屋で異性と寝るなんてこと、恋人同士じゃないとあまりないから、その気持ちはわかる。

かく言う俺もこうやって、異性と同じ部屋で寝るのは久しぶりで少し緊張していた。

ちなみに那奈美と同人の締め切りデスマーチ後に力尽きてそのまま寝たのはノーカンだ。

あれは、一切雰囲気が無く、ほとんど気絶の様な睡眠だったし、雰囲気も無いし。

「別に、話すのはいいけれど、別に楽しいことなんて話せないぞ」

「なら、私が話しますね……」

「うん、わかった。先に寝たらごめん」

「それは、逆に安心するかもしれないですね、あはは」

「それは、そうか」

まあ確かにそうかもしれない。七重がいたとしても異性と同じ部屋で寝るのだ、女性である美夜の方が不安なのかもしれない。

しかし、そんな不安も、冗談の様に明るく笑い飛ばす美夜に俺は少しホッとしていた。

「まあ、そうしたら話しますね。そうですね、聞いていて楽しい話かは分かりませんが、私達双子の話でもします」

「ほう、双子の話か、確かに気になるな。俺は兄弟がいなかったし」

「あはは、そんなところで、そうですね。私達双子は、生まれた時から何もかもが正反対でした。お姉ちゃんは、活発で、勉強もできる。それなのに私は、引っ込み思案で、勉強もそこまでできなくて、けれどそんなお姉ちゃんが、私は、自慢でした」

美夜は、七重と自分が全く正反対だと話し出した。確かにそうかもしれない。細かい仕草は、そっくりだが、性格は全く違うし、勉強だって、いつも真面目に授業を受けている美夜だが、授業中に結構な頻度で爆睡している那奈美に比べるとパッとしないのは事実だった。しかし、美夜は、勉強ができない訳でもない。むしろ、那奈美の頭が良すぎるだけ。

「ですが、私も人間です。お姉ちゃんが次期巫女候補として選ばれていたと知った時、私は、いらない子なんじゃないかって思ってお姉ちゃんに対して妬みや嫉み僻み色々な感情があふれ出してきて、一時期、お姉ちゃんととっても仲が悪い時期がありました」

「意外だな、美夜って優しいし物腰も柔らかいから、そう言ったことも思うんだな」

少し意外だった。

今の二人は、とても仲が良い。那奈美も美夜を凄く信頼しているから、同人誌の手伝いだって任せてもらっていたし、美夜だって、普段の生活から見てもお姉ちゃんっ子だったから少し驚きだった。

「若気の至りですよね。私もまだ小さくて、ことあるごとにお姉ちゃんに突っ掛かっては喧嘩して、いつも負けちゃって……お姉ちゃん昔から気が強くて、いつも私が泣いちゃって、気が付いたら全部諦めて、拗ねちゃっていたんです」

「あぁ、分かる気がする。俺も昔は、酷い生活をしていたからな。親戚は、俺じゃなくて、俺の後ろにある両親の遺産しか見ていないし、何度も転校して友達もいなくて、あの時は荒れていたな」

子どもの頃にはよくあることだ。

子どもには、解決できないような、どうしようもない壁にぶつかって、擦れて全部が嫌になって……あの時はまだ俺も、抗っていたが今となっては、そんな元気なんてないが。

「そんな時に私に王子様が現れたんです。覚えていますか?王子様は、私に対してこういったんです。『君は、君だよ。いらない子なんかじゃない。もしもみんなが、君なんて必要ないって言ったら僕が必要とする。だから元気を出して』って」

「きざな王子様もいたもんだな」

そんな気障な王子様がこの世にいるなんて、俺ならきっとそんなことは言えないと思ったが、少し違和感を覚えたがきっと気のせいだと思っていたが、美夜は、寝ているベッドから立ちあがった音が聞こえたと思うと、耳元から声が聞こえてきた。

「私は、宗吾さんのことをずっと覚えていたんですよ。私の王子様」

「な!美夜!?」

俺が振り向くと暗くてはっきりとは見えないが、俺の顔のすぐ近くで顔を真っ赤にした美夜が俺の顔を愛おしそうに眺めていた。

「私の王子様は、宗吾さんなんですよ。あの後色々あって忘れちゃっているかもしれませんが……本当は、もっと話したいことがあったんですよ」

「み、美夜さん?」

俺は動揺しながら、過去のことを思い出そうとした。確かに、俺は、子どもの頃、湯上温泉に旅行した時に同い年の女の子と遊んだ覚えがあった。

あったけどこんな出来過ぎたことがあっていいのか。

「宗吾さん、私……、お姉ちゃんには負けたくないです。何がなんて聞かないでください。けど、この気持ちは、一過性のものでは、無いんです……」

美夜の顔がどんどん近づいてくる。その綺麗な目に俺は目が離せなくなり、この後どうなるか少し予想ができたが、体は金縛りにあったように動かない。

そして、距離がほぼゼロ距離になったと時に、七重が申し訳なさそうに、俺の胸のあたりから、顔だけ出してくる。

「その、そう言う情事に至るのなら妾、席をはずそうか?」

「きゃあ!」

「うお!」

いきなり、俺の胸の所から顔を出した七重に俺達は驚いて、近づいていた距離が離れる。

何度も思うが、もう少し登場する時は、気を付けてほしい、登場の仕方が、ただのホラー映画でしかない。

「そそそそ、その!必要はありません!おやすみなさい!」

美夜は、慌ててベッドにもぐりこみわざとらしく寝息を立てる。俺もこの後、ドキドキした気持ちを抑え眠る頃には、とっくに時計は、2時を回っていた。

七重も、ことが収まると元の寝床に戻りこの後は、なにも無かく一日が終わった。

『ふむ……まさかな……しかし、これは調べる必要があるな』

七重の漏らした言葉は少し気になったが、気に出来るほど居Ⅿの俺には余裕なんてなかった。早く収まらないかなこの胸の違和感。

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