第13話 宮殿内の晩餐会
夕方7時から始まった宮殿でのパーティーはかつて日本で数々のパーティを経験してきたエリートたちにとっても豪勢を極めたものであった。
9名はめいめい最高級の衣装を着けてそれぞれのドレスアップした美人秘書と腕を組んで会場にやってきた。
各自に与えられたリムジンを降りた正装した9人が宮殿前にて再会する。
「よう、馬子にも衣装やな!北川のぼうず!やることはやったか?」谷がスタイリッシュに決めた長身の北川に声を掛ける。
「はい、おかげさまで堪能しました」頭をかきながら答える北川。
「おい、リョウサンもいい目をしたんか?」とニヤニヤして森が聞いた。
「ああ、今後の事はとりあえず忘れて、彼女にイカさしてもらったよ」隣の秘書を指差す桐生。
「ドクターもいやにすっきりした顔やな」富士が前島に尋ねる。
「しっかり彼女のいろんなところを触診させてもらいました」医者らしい前島の回答である。
各人さまざまな思惑はあるものの取り敢えずは9名全員がヒペリオン王国の歓迎にスッキリした顔での晩餐会への参加であった。
宮殿の正門で9人を降ろしたリムジンのドライバーたちが慇懃にお辞儀をする。
「それでは行ってらっしやいませ」
その挨拶の後、ドライバーはリムジンに乗り各自の豪邸に帰っていく。
正門の衛兵が
「皆様ようこそ、お待ちいたしておりました。さあ、この門から正面の会場までお進み下さい」
と恭しくお辞儀をした。
正門入り口からは赤い絨毯が敷かれてその両側には200名ほどの衛兵が銃を立てて整列して並び9人はその赤い絨毯の上をゆっくりと進んだ。
全員がピシッと髪を撫で付けて髭も剃り落としておりさすがに日本のエリートたちである、どこから見てもセレブの風体に早代わりしていた。
9人と秘書たち18名が長い絨毯の上を渡り終えると準備していたオーケストラの演奏でおごそかに日本の国歌「君が代」が流れてきた。
150-60名ほどであろうかパーティに参列しているヒペリオンのセレブたちが一斉に全員起立して日本の国歌の演奏を聞く。
セレブたちがゆっくり立ち上がると身につけた宝石の光が眩く動く。
9人も日本国には悲喜こもごもの思いがあるが国歌に対しては素直に敬意を表する態度である。
会場を見回すと王宮の広大な庭園に設けられたステージの上に玉座と王妃の座が置かれておりその周りに9つの白い布がかけられた大きなテーブルが用意されていた。
国歌「君が代」吹奏が終わると衛兵たちがやって来て各人は9つのテーブルに分けて座らされた。
どうやら各テーブルは分野ごとに分かれているようである。
「ミスター桐生、さあこちらのお席へどうぞ。ヒペリオン国立原子力委員会 会長夫妻とスタッフたちです」とそれぞれの美人秘書たちが分野の同じテーブルに案内をして先に座っていたセレブたちを紹介していく。
「ミスター前島、こちらのテーブルへどうぞ。手前から厚生大臣夫妻、次に国立病院 院長夫妻、病原菌研究所 所長夫妻です」
前島が紹介された順に挨拶をしてまわる。
お互い流暢な英語での会話である。
「ミスター本間、こちらへどうぞ。右から順に防衛大臣夫妻、陸軍参謀総長夫妻、海軍参謀総長夫妻、空軍参謀総長夫妻です」
お互い軍人どうしなので力強く握手する。
「ミスター北川、こちらのテーブルです。環境資源省大臣夫妻、海底油田局 局長夫妻・・・」
9人のエリートたちが秘書たちにより各自のテーブルに招かれては政府の要人やセレブたちを順番に紹介されていく。
紹介が終わるとどのテーブルでも日本のエリートの賞賛が始まり、彼らの日本での経歴や研究などお互いが同じ分野なので会話が弾んだ。
各テーブルの上に並んだ前菜、メイン料理、酒どれをとっても彼等が日本では経験した事のないレベルのものであった。
テーブルの周りにはロブスター・スープの香ばしい香りが漂う。
「悪くない・・・」と、一番年の若い北川がつぶやいた。
「悪くないでしょ?」秘書のテティスがニコッと笑った。
各テーブルが談笑で盛り上がり始めたころであった。
突然先ほどのオーケストラからヒペリオン王国の国歌が演奏された。
それを聞いたセレブたちは会話を中断してもう一度ゆっくりと起立して正面を向いた。
ステージ上に内務大臣のフェーペが登壇して
「皆様大変お待たせいたしました。国王陛下のご到着でございます」
と告げたのであった。
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