第24話 不意打ちはシャワーのあとで
弟のティアには七罪の存在がバレている。
だからといって七罪をそのままのスタイルで玄関から入るのは些か無謀と言えるだろう。
兄二人に七罪が見つかったら死ぬ程面倒臭いことになる。
俺は七罪にリュックサックに入ってもらう形で自宅に上がった。
この絶妙なドキドキ感がかなり心臓に悪い。
玄関から部屋までは何のアクシデントもなく向かうことが出来た。
俺は七罪の入ったリュックを置いてから後ろ手で部屋の扉を閉めた。
幼女モードの七罪は小さい身体を使ってリュックからよいしょ、と出てくる。
くそかわいい。
「なんだか楽しくなってきましたね、これ」
「そうか? 結構心臓に悪いんだが………兄達にお前が見つかったらと思うとな………」
「そんなに悪い方達じゃないと思いますけど」
「七罪も女神だった頃見てたなら知ってるだろ?兄さん達の恐ろしさを」
「ま、まぁお二人共変わってますけど根はいい人ですし………」
七罪は少しこわばったような口調で話す。
サタ兄が七罪を見たら「お前こんな可愛い彼女家に上げやがって殺す……」ってなってホントに殺されかねないし、ラス兄が七罪を見たら「君可愛いね凄い可愛いよ。今夜は俺と寝ないかい?いや寝ようそうしよう」みたいな感じになりかねない。
どちらにせよ違った意味での恐怖だ。
バレるまでは俺はこれを続けるつもりしかない。七罪と俺の身を守るためにも……。
俺が考えに浸っていると七罪が俺の前にちょこんと座った。
「ん? どうした?」
「今日、一緒にお風呂入りませんか?」
「ぶふぅっ!」
あまりに予想外なことを言われたものだから俺は思わず吹き出してしまった。
「い、いやこの前お前を女の子としてしか見れないって言ったばっかじゃないか。俺は妹と風呂に入りたいんだよ」
「ふふふ。そう言うと思いました。それで私、ある作戦を思いついたんです」
「ほ、ほう。その作戦とやら、聞いてやろうじゃないか」
「この小さい姿のままお風呂に入るってのはどうですか?」
「………あ?」
「だから、このちっちゃい私と入るんです。それならお兄さんは私の事を妹として見てくれるんじゃないですか?」
「な、なるほど……?」
なんだか頭がこんがらがってきた。
俺は七罪を妹として見れないから一緒に風呂に入らないと言った。
つまり妹として看做せれば、一緒に入れると言うこと。
妹ってなんだろう。どうすれば女の子は妹になれるんだろうか。妹として見るには何をする必要があるんだ?
やばい。妹がゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。
「それにちっちゃい私に対して変な気持ちになったりしたら、かなり変態だと思いますし、何より兄失格だと思うんです」
「兄……失格だと………?」
その言葉が俺の心に火をつけた。
俺は妹が欲しいと同時に“妹のいる兄”になりたかったんだ。
妹と一緒に風呂に入って欲情しないやつが兄、ということか。またひとつ真理に辿り着いてしまった。
なるほど、くくく……。
「いいだろう……七罪、俺は兄だ。そしてお前は妹。決してお前なんかに欲情しないと誓おう」
「なんかちょっとイラッとしましたけど、一緒にお風呂に入ってくれるなら問題ないです。分かりました、さぁ、行きましょうか」
かくして俺らは脱衣所に着いてしまった。
ここまで来たらもう後戻りはできない。
七罪の姿は以前小さいままだ。小学一年生くらいの大きさしかない。こんな小さい子に対してそんな気持ちになる訳がない。俺はシスコンであってロリコンではないのだ。
絶対に屈しないぞ……!
「えっと、脱がないんですか?」
俺が闘志に身を焦がしていると、既に七罪が一糸まとわぬ姿になっていた。
そこにいるのはただの小さい七罪で、さっきまで何か変なことを考えていた自分がなんだか馬鹿らしくなってきた。
これは、この七罪は
「………さ、先に入ってますね」
「おう」
七罪は風呂場の扉を開けて中に入っていく。
一応小さなタオルで身体を隠してはいたが......あいつ自分から誘っておいて恥じらいとかあるのか。まぁそりゃあるか。いくら元女神で妹で幼女モードだとしても裸を見られることに恥じらいが無いわけないよな。
中からシャワーの音が聞こえ始めた。
俺はささっと服を脱いで風呂場に入る。
七罪がシャワーで身体を流していた。
俺はなるべく七罪の身体を視界に入れないように目線を動かす。
「………お兄さん、背中洗いっこしません?」
七罪はこっちを見て、そう言った。
そのセリフで俺は感極まって泣きそうになったがなんとか涙を堪えた。
だって、その言葉は────
「じゃあ先に七罪の背中洗ってやるよ」
「わ、分かりました。宜しくお願いしますね」
俺と七罪はお互い風呂場用のイスに座り、七罪の背中に身体を向ける。
真っ白な肌に思わず目を奪われた。
なんて、綺麗なんだろう。珠肌ってこれのことを言うんじゃないか?
俺はタオルにボディソープを付けて、その背中を洗う。
妹だと分かっていても胸がばくばくとうるさい。くそ、黙れ、俺の心臓。
七罪の背中は洗う必要も感じられないくらいの清潔さや神聖さを秘めていた。
「……七罪の背中、綺麗だな」
俺は思ったことをふいに口に出してしまった。声を出した後に声を出したことに気付いた感覚だ。
七罪は振り返ることなく、
「そりゃそうですよ、なんたって私女神ですし。
「確かにな」
七罪の背中を存分に擦ったあとにシャワーで洗い流す。
俺は今、最高に兄をしてる。そんな気がする。七罪がこっちに振り返って、お互い座った状態で正面で向き合う。
「じゃあ次私が洗ってあげますね」
「おう、頼む」
七罪は俺の背中をタオルで洗い始める。
初めに俺の部屋に出てきた時の毒舌女神と同一人物とは思えないほどの優しい手つきだ。
今思えばあの時から全てが変わった。
俺は生きる活力を貰えたし、そこからは世界が違って見えた。
俺が周りに見られてないんじゃなくて、俺が周りを見てなかったことに気付けた。
「お兄さん、どうですか?初めて人の背中拭くのであまり上手ではないと思いますが」
「いや、充分出来てるよ。さすが俺の妹」
「やったっ。でもちょっと小さい身体だといちいち動作が大変なんですよね……」
決して後ろを見たりはしないけど小さい身体の状態の七罪が一生懸命俺の背中を拭いてると思うと大変そうだとも思えてしまう。
大きい姿だったら俺の背中を拭くのも大変じゃないのにな。
「────きゃっ!!」
そこで突然七罪の叫び声が聞こえた。
七罪の身の安全を図るために俺は反射的に振り返る。
目の前に広がっていた光景は想像していたものとは大きく違っていた。
七罪の姿は幼女サイズから一変してもいつもの大きさになっていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます