4話 いつもとは違う朝

一大事件が起きた次の日の朝。

カーテンの隙間から陽の光が差し込み、目覚ましが鳴り響くリビング床に転がる男。


俺だ。


微妙に目が覚め、いつも通りに起きると聞き慣れない音がキッチンから聞こえてきた。


「おはようございます。お弁当箱ってどこにありますか?」


頭が覚醒してないからか、言ってる事を理解するまで時間がかかる。


「あー、それなら上の棚の中にある筈…」


目を覚まそうと顔を洗いに洗面所に行く。

冷たい水で顔を洗い、愛用の歯ブラシで歯を磨く。

そして洗濯物を干そうと洗濯機を覗くと、洗濯物が無い。

ひょこっと洗面所に紅音が顔を出す。


「洗濯物なら干しましたよ。

それとご飯作ったので食べませんか?」


返事をし、意外とやってくれる子なのかと感心しながら、リビングに戻るとテーブルの上には、久しく食べた事のない朝ごはんが並べてあり、嬉しい反面ある疑問が浮かんだ。


「紅音ちゃん、何時に起きたの?」


「内緒です。」


結構ムカつくような返事だが、目の前の食事で怒りの感情は消え去った。




朝ごはんは美味しかった、その一言である。

中学生には見えないその腕前に、また疑問が湧いてでる。


「あの料理は誰に教わったの?」


「学校の調理実習です。」


最近の中学校は凄いと思いつつ、食器を洗い、部屋のクローゼットからYシャツと学校の制服を取り着替え、学校への準備を終わらし家を出ようとした時に、疑問というのは次から次へと出るもので、


「そういえば紅音ちゃん、制服は?

リュックの中には入ってなかったようだけど。」


「学校のロッカーです。」


それって校則的に大丈夫なのかと心配になりながら、ふとある物を思い出し、小さな引き出しから家の予備の鍵を取り、渡す。


「これは、家の鍵ですか?」


「そうだよ、今日バイトで帰り遅いから自由にやってね。」


と家を後にして、駐輪場から相棒のロードバイクを出し通学路を走る。




俺の学校生活はクラスの中心という訳でもなく、嫌われ者でもない中間の人間でいる。

クラスに入ると、まず話しかけてくる仲の良い荒島浩輔 (あらしま こうすけ)と、山中雪乃(やまなか ゆきの)である。


「すり替えておいたのさ!」


「誰だお前は!」


「なにやってんだよ。」


朝からボケる荒島と山中に、疲れるツッコミを入れなきゃいけない。こちらの身にもなって欲しい。

自分の席に荷物を置き、会話に混ざろうとするが。


「三条、ノリ悪い。」


「こんな奴放っておいて荒島、岩男EXEやろうよ。」


「お前ら、いつの人間だよ。てか自分の席でやれ。」


岩男EXEとか未だにやってる奴いるのかよ。流石神作だ。

懐かしいゲームなので気になってしまう。


「エリスチからって、おい山中!お前鉄魂ホッケーは卑怯だぞ!」


「甘い、甘いぞ荒島。戦略は積み重ねるものだよ。」


ゲームに熱狂している2人をみて、興味が失せてしまった。

そんな隣で熱の入った会話の中、


「なぁそういえば、知ってるか?

今日、あいつが来るらしいぜ。」


荒島が息をするように喋った一言は、一瞬でクラスを凍らせた。

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