第16話 ねこっちとホタル
季節は5月頃のことです。
その日の夜、ねこっちは不思議なものを窓の外に見付けました。網戸に何かが引っ付いています。自宅警備をまかされているねこっちは、すぐにくんちゃんに報告に行きました。
「くんちゃん、網戸に変なものがいます!」
それを聞いてくんちゃんは、すぐに駆けつけてくれました。そしてその不審物を見て言いました。
「わあ! 蛍だ! 近くの川から迷ってきたのかな?」
そっと網戸を開け、優しく蛍を捕まえてねこっちに見せてくれました。
「くんちゃん、蛍ってなんですか?」
「この虫の名前だよ。暗い所でピカピカ光るんだよ」
そう言って、くんちゃんは電気を消しました。すると蛍のお尻がピカピカ光り始めました。蛍は、ピカピカしたまま空中をふわふわと飛びます。それがあんまりキレイだったので、ねこっちはぼんやりと見ていました。上に行ったり下に行ったり、蛍は光ながら飛びます。
しばらく見ていたら、蛍がねこっちに向かって飛んできました。ねこっちがじっとしていると、蛍はねこっちの左前足にピトっととまりました。ねこっちの前足がピカピカ光っています。ねこっちはビックリして、前足を振りながらくんちゃんを呼びます。
「くんちゃん! 大変です! ねこっちに蛍がとまりました! 怖いのです!」
「ねこっちは怖がりだなぁ」
くんちゃんは、笑いながら蛍を優しく捕まえてくれました。
「じゃあ、もう川の近くに逃がしてくるね」
そう言ってくんちゃんは蛍を連れて行ってしまいました。
もしねこっちが、怖がらなかったら蛍と友達になれていたかもしれません。くんちゃんが帰って来て、そのことを話すとくんちゃんはねこっちの頭を撫でながら教えてくれました。
「蛍はね。光るようになったら次の日には死んじゃうんだよ。だから、捕まえたらちゃんと逃がしてあげないとダメだし、捕まえるのもダメなんだよ」
あんなにキレイなのに、明日には死んじゃうのかと思ったらねこっちはとても悲しい気持ちになりました。
でも蛍がピカピカ光るのは、一所懸命生きているってことなんだと思うのです。
また蛍が遊びに来てくれたら、ねこっちは怖がらずに優しくしてあげようと思いました。
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