34.新しい家を作ろう!
木を引きずる事に命を燃やすモフモフたちと奮闘しながら、俺は北側の塀を作り上げる。
これで南側に続き北側も塀が建ち、理想の村らしくなってきた。
東は半分終わっているから、塀作りは半分以上終わっていることになる。
問題は村の西側に積んである擦り切れた丸太だ。
薪として使うにも量があり過ぎる。
村人とモフモフは和気あいあいと仕事が出来ているというのに、唯一会話のできる俺と仕事をすると通じないってどういうこと?
一応、使い魔としてモフモフを召還している設定なのに、一番使えてないんじゃないのか。
塀を作る為には、擦り切れた丸太も並行して増えると見ておいた方が良い。
何か他に使えないかと考え、ルートヴィヒが家を建てると言っていた事を思い出した。
早速、ルートヴィヒを捕まえ聞いてみる。
「家の修復どうなったんだ?」
「ああ、あれ僕は手伝いとして入りましたよ」
「新しい家建てるって言ってなかったっけ? 見張り台も喜ばれてただろ」
「見張り台の時は喜ばれたんですけど、やっぱり住むとなると僕では駄目らしくて作らして貰えませんでした」
技術も腕もまだ信用されず、同じ形の家を建て直したらしい。
「それだと困るんだよ」
「何ですか?」
擦り切れた丸太が溜まるからとは言えない。
「あ、あれだ、あれ。ほれ、俺が教えた作り方で、見張り台の強度は上がっただろ? 木を組んで作り上げれば強度も上がり、快適な暮らしが待ってるんだぞ。何を戸惑う必要があるんだ」
それらしいく聞こえるように力説する俺に、ルートヴィヒも大きく頷いていた。
「わかります。僕は分かってるんですよ。でも他の人達が……」
そうだった。ルートヴィヒを説得してもしょうがない。
頑固な大人たちを説得しなくてはいけないのだ。
ただ、言葉で説明して納得はしないだろう。
それならどうするか。簡単な話だ。
実際に作って見せればいいのだ。
「新しい家を作ろう!」
「勝手にやったら怒られますって」
「わかった。村長に許可取ってくるから待ってろ!」
「そんな、強引な。なんでそんなに作る事に拘るんですか?」
「丸太が余ってしょうがない……人にはなあ! 言えない事もあるんだよ!」
「何ですか、それ」
「良いから、待ってろ!」
俺は逃げるように走って村長の家に向かった。
「家を建てたい? いったい誰の家を建てると言うのだね」
俺の言葉に村長は驚いた表情で目を輝かせた。
俺が家を建てようが、不安がって誰も住もうとしないだろう。
ならば、俺が実験台になってやろうじゃないか。
俺が住み、快適さをアピールし、興味を持たれれば、皆も住みたいとなるかもしれない。
「自分用の新しい家を建てたいのですが、よろしいですか? 後、良ければ助っ人も……」
「良いも悪いも、村で使えるような場所があれば、使ってくれて構わないよ」
この村長は否定を知らないのだろうかと言う程の肯定ぶりだ。
「使える場所ですか? 最高の立地があるじゃないですか。この家ですよ。この家を潰し、私の新しい家を建てる。素晴らしい計画だ。村長の住む家? あそこに見張り台のような家があるでしょう。村長にお似合いの家が……ふははは」
「悪どい地主か!」
高笑うナビを握りつぶし、投げ捨てる。
「おお、見えないと言う精霊がいるのかね。何かのお告げかね」
事態を飲み込めない村長が目を輝かすが、これがお告げであるはずがない。
執拗にナビの言葉を知りたがる村長を振り払い、俺はルートヴィヒの元に戻った。
許可が取れたとルートヴィヒに告げ、早速、何処に建てるかを考える。
候補地はすぐに決まった。被害の大きかった村の南東だ。
「それでどんな家を建てるんですか?」
「増築を前提とした家だよ」
「何ですか、それ」
何回目の何ですか、それだよと思いながら、俺は構想を語る。
普通、増築と言えば元あった家に歪な形で着けられた部屋なり、小屋っぽい物を思い浮かべるだろう。
無理な増築で家が傾くなんて話もある。
俺の作ろうとしている家は違う。
共同で使える部屋を広く使えるように設計した、民宿の様な作りの家だ。
分かりやすく言えば、風呂、トイレ、台所、食堂を共同スペースとし、自分の部屋を取り付けた作り。
増築する事を考えて作る為に、歪にもならず、強度も衰えない。
理想的な家と言っても過言ではないのだ。
「凄そうな家ですね。僕もそんな凄い家作りたかったです」
「何すっとぼけたこと言ってんだよ。一緒に作るんだよ!」
「僕がですか?!」
「当たり前だろ何のために作ると思ってんだよ。ルートヴィヒ、お前の腕を見せる為じゃないか」
丸太を片付ける為もあるがな。
「よし、さっそく家造り開始だ!」
「はい!」
俺とルートヴィヒは高らかに腕を上げた。
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