「みにくいアヒルにもなれない子」という題名に、胸がきゅっとなりました。主人公の善繡は、ぎこちなく、ゆっくりで、とても不器用です。けれど、その語りにはどこか愛おしい、独特の温度があります。
物語が動き出すのは、古い路地に迷い込んだ朝からです。真っ白な猫に導かれ、出会う喫茶店。「苦いのに、おいしい」と少女がこぼす場面は、思わず息をのみました。彼女が何を失い、何を取り戻そうとしているのか、その繊細な描き方に胸を打たれます。
言葉は飾らず、等身大のまま。だからこそ、優しい人々のさりげないひと言が、心の奥までまっすぐ届きます。読み終えると、あたたかいコーヒーが飲みたくなる一作です。
★こういう人にオススメ
傷ついた心が少しずつ癒やされていく物語が好きな人
路地裏の不思議な喫茶店など、日常と地続きのファンタジーに惹かれる人
不器用な主人公を、そっと見守りたい人
静かで、あたたかい余韻のある物語を探している人