助け合い

「そう…ある日俺たちのもとにミルの今使っているツルハシの情報が入ってきた、俺が使おうとしたがそこでミルが言った。カイさんはもうムリをしてらっしゃるでしょう、私がやります、とね」


カイさんは懐かしそうに、しかし悲しそうに言った。ミルにむりをさせまいと自分たちがむりをしていたら彼女から止められ、ミルがムリすることになるとは。


「俺らはとめたよ、でも貯金癖のミルはさっさと店に行って購入してしまった。彼女が帰ってきた時は愕然としたよ、当時15歳くらいのこの腕にツルハシがくっついてたんだからな」



ミルに聞けば手にくっつけたツルハシは取ろうと思えば取れるらしい。しかしソレを引いても技発動にコストがあることに変わりない。ミルの突風が吹き荒れるたび、彼女のエネルギーは少なくなってゆく。



「人がむりをしてたから自分もしよう、そういう責任感の強さ…要因はおそらくソレだと思う、ミルは1人で頑張りすぎてしまう…マイン君ミルの力に…なってやってくれ」


カイさんは俺の肩に手を置いた。多くの経験が読み取れるような手だ。目の前のカイさんはNo. 1採掘氷場のリーダーでNo. 1ルーキーのミルの上司だ。そんな実力者がおれを頼ってくれる、自然と身が引き締まる。


「わかりました…!バッチリ任せといてください!」



俺はカイさんにペコリとしてから再び宿舎へと走った。もうほとんどの店が閉まっている。そろそろミルも回復しているだろう。たが回復し切ったらまた、オーバーワークするレベルで鍛錬や仕事をするに違いない。その前に、俺はミルに会わなければいけない。



ようやく宿舎が見えてくる頃のは俺は肩で息をしていた。まだミルの部屋の明かりはついている。息が切れながらもミルの部屋のドアを叩く。なかから数人の声がする。おそらく様子を見てくれていた氷鉱夫だ。


「は、はい…」


「俺!マインだ!ちょっと開けてくれ!」


ドアが開くとベッドから身を起こしたミル、なにやら、ココア的なものを作っているノルダ、ソレと2、3人の氷鉱夫が目に入った。


「マイン…すみませんね、まだ3日目なのに仕事できなくて」


「それだよそれ!仕事しすぎだ!」


俺は叫んだ。ミルと他数名はびくっとして俺を見つめた。いきなりなに言ってんだとは自分でも思ったが。


「そ、そりゃリーダーなんですから…ツララ塔にも任されて…」


「そうだけど…」


カイさんに任されたんだ、ミルの責任感は大切だが、それが身を削るなら俺たちが仲間としてどうにかしなくてはいけない。


「1人でやるなよ!ミルが責任感持って仕事やってんのはわかるけどさ…俺たちにも仕事やらせてくれ!というか助けさせてくれよ!」


「し、しかし」


「人を助ける、与える立場になれって言ったのはミルだぞ!1人で背負えないなら俺に半分寄越せ!」


ミルはドキッとしたようだ。顔がそんな感じだ。ミルが俺に言ったことがそのままカウンターのようになるとは思ってもないだろう。


しばらく沈黙が訪れた。しかしふとノルダが口を挟む。


「あのさミルさん、ここには氷鉱夫が100人いるんだよ?それに僕もいる、ミルさんがしている仕事、負担を分けてもらってもへっちゃらさ!」


ミルは少し俯いて考えているようだ。やはり凝り固まった責任感は強敵だ。なぜ頼ってくれないのか、答俺えはシンプルだ。ミルより俺やノルダは実力があるとはまだいえない。なら俺はすごいやつだ、とわからせればいい。


「よし、ミル!見ててくれ!」



俺は窓を開けた。冷たい外気が室内に飛び込んでくる。ミルもノルダも不思議そうだ。


「マイン、なにを?」



事務能力、戦闘力、ミルがどちらで俺たちを頼らないのかはわからないがとりあえず何かしらすごければ頼りたいとも思ってくれるはずだ。

ならば見せてやろう、グレンさんに教わった取っておきの氷鉱夫用の体術を!


俺は手足を水で濡らした。靴下が冷気と相まってこおりつくようにの冷たくなる。だが、この動作があの氷鉱夫体術には必要だ。


「よしいくぞ!壁歩きだあっ!」


俺は開けた窓から外へ出た。いきなりのことにミルやノルダは慌てて窓を覗きむ。しかし見えているのは壁になんとか張り付いている俺の姿なのだ。


「まあ、まだ歩けないけどな!」


グレンさんが言うには手足を濡らし、壁につけ、足についた水が外気で凍るのを利用して壁に張り付く技、らしい。バランス感覚と指の力が重要だ。上達するとシバリングで氷を溶かす、壁にくっつける、で歩けるらしい。


「上級氷鉱夫体術…いつのまに…」


「練習したんだよ!どうだ?」


「ど、どうだって…すごいですねとしか…」



その言葉だ。それを待っていた。


「よし!そんなすごい俺なら仕事分担してくれ!」


「え、あ、いや、それは…」


ミルはこの後に及んでまだ迷っているのか。しかしノルダはナイスアシストをする。


「いいじゃない!ミルさんはマインに人に与える側になれって言ったし…マインはすごい技を未完成とはいえ身に付けた…頼れるね」


ミルは虚を疲れたような顔をしてちょっと固まっている。もう張り付くの限界だから早くしてほしいが。


「わかりました…マイン…いや皆さんに頼みます…仕事少し手伝ってくれますか?」


俺はにこりと笑って見せた。グーサインでもすればおれは接地面が少なくなって張り付けなくなる。ノルダも、部屋にいた氷鉱夫もうなずいたようだ。


「よかったぜ!じゃあ引き揚げてくれ、限界だから!」


「ははは、カッコつかないなぁ…」


ノルダがおれに手を伸ばしてくれた。しかし伸びてきた手は1人のものだけでなかった。ミルの腕もおれの腕を掴んだ。


「ただし助けられっぱなしは性に合いませんよ」

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