8 and continues……
天井のステンドグラスから色とりどりの光が、床の一部へ降り注いでいる。
黒樹は、店舗にしているスペースで、椅子に座り、テーブルの上の水晶板を見つめていた。その顔に浮かぶのは、妖しい笑み。
店は閉まっていた。
店舗入口の扉に、カーテンが引かれていて、外から見えるのぞき窓には「Close」の札が掛かっている。
家の中には彼一人。
黒樹は、喉の奥で笑った。
「面白い……。面白いよ、セイリュウ」
独り言をつぶやいたその時、店舗の扉が開いて鈴の音がカランと音を立てた。
「おかえり、楓」
いつもは、嫌味の一つでも飛んでくるところなのに、その種類はともかく笑顔で迎えられ、楓は一瞬入り口で固まった。
「……た、ただいま」
やっとそう返して、楓は、黒樹に歩み寄った。
「機嫌いいな。何があった?」
「別に?」
そう返す黒樹の顔には、やはり妖しい笑みが浮かんでいる。
楓は、黒樹の顔と水晶板とを交互に見て、一つの仮説を立てていた。
黒樹は、最近よくセイリュウを探していた。そして、観察をしていた。
「(いや、監視か……)」
店は閉めているのに、店舗スペースに籠もることが多い。そういうときは、丁寧に結界を張っていて、覗き見することすら困難だ。
「(ってことは、相手はセイリュウ。なんで、そんなに拘る?)」
「なに、楓」
「……いーや。その水晶板にシットしてたとこ」
嘘なく適当に返して、楓は住居スペースへの仕切りを開けた。
「面白い玩具を見つけたんだ。ずっと探してたものだよ。この国の言い伝えより、ずーっと価値がある」
「あーあ、楽しそうな顔しちゃって」
黒樹の妖しい笑みを受け、楓は仕方ないというようにため息を付いた。
「その力を持つものの宿命だね……」
「次は、何を?」
「さて、どうしようか?」
この国には「闇」がある。「闇」と呼ばれる不思議な力が。
誰も見たこともなく、手にしたこともない。しかしそれは、たしかに存在するのだ。
この世界の寓話と、すべての世界を駆ける言い伝えと――――――――――。
ー第1話:ENDー and continue……
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