B:Buddy
フレンチトースト苺添えを、桜蔵が幸せそうに平らげ、ミニアキのいる
桜蔵は、まるで
夏のような暑さもなく、街はクリスマスの彩り。桜蔵にとっては、心を弾ませるものしかなかった。
「珪ちゃん、ミニアキって何もらうと嬉しいかな?」
桜蔵が、愉しげに微笑んだ。
「何?クリスマスプレゼント?」
「そう。何がいいんだろう?」
「あいつ、一応LABに所属してる身だからなぁ……興味なさそう」
「えー!でも、アキのDNAでしょ?絶対、こういうの好きだって!」
おもちゃ、本、お菓子、と、桜蔵は、考えを巡らせてぶつぶつ独り言を呟いている。
興味なさそう、と言いつつ、珪も桜蔵の姿に引きずられて、ミニアキへのプレゼントを考え始めていた。
お土産を買うためにBeansビルの地下食品売り場を歩く。
その時だった。
珪は、視線を感じて立ち止まった。いつもは感じることのない他人の視線。
立ち止まり、辺りを見れば、賑わう人混みの中にこちらを見つめる男が一人立っていた。
好意的な視線ではない。それは、男の表情から分かった。
「(品定めされてる?俺が?……俺たちが?)」
「珪ちゃん?」
数歩前で立ち止まっている桜蔵が、不思議そうにこちらを見つめていた。
「どうしたの?」
桜蔵を振り返り、答えようと、もう一度男のいる方へ顔を向けると、男はもういなくなっていた。珪は、戸惑いのまま返した。
「……今、見られてたんだけど、いない……」
「えー、珪ちゃんが見られてることに気づくなんて、珍しー。どんな子?」
珪からしてみれば、全く嬉しいものではなかったのだが、桜蔵は、興味津々だ。
「女じゃないぞ?」
「男?!」
桜蔵が目を丸くして、辺りを見回した。
「背は、たぶん、俺と桜蔵の中間くらい?桜蔵の方に近いけど。で、目がクリッとしてるんだけど、お前と違って、暗い感じ」
「どこ?」
「だから、いないって」
それらしい人物がいないことを確認して、桜蔵は、悔しげな声をあげた。
「今度は、すぐに教えてね?!」
「気づいたらな?」
「あ!イチゴー!」
桜蔵の興味は、艶々した赤い輝きが目に入ったとたん、そちらに移った。嬉しそうに駆けていく。
「迷子になりますよー、」
珪が感情を込めずに言うと、桜蔵は、上機嫌に振り返った。
「珪ちゃんを目印にしてるから、大丈夫ー」
「(勝てない……)」
イチゴを使ったスイーツをショーケースの中に見つめ、桜蔵の大きなブルーグレーの瞳が輝いている。
「珪ちゃん、選べないー」
にこにこと、ショーケースを見つめている。時間がかかるとふんだ、珪は、ため息をついてスイーツを見渡した。
「じゃあ、一番左のヤツを3つ」
「あー!ダメ!ちゃんと選ぶ!」
珪の選択を却下して、笑顔が真剣な顔になり、桜蔵はショーケースの中を見つめた。そして、3分後、下した決断は――――。
「…………い、いちばん左の、3つで……」
にこやかな店員に見送られ、いつものクールな珪とそして、やや不満げな桜蔵は、Beansビルを後にした。
輝く表通りを裏路地へと入って、桜蔵が、手土産のスイーツが収まっている紙袋を、実に不服げに見つめた。
「珪ちゃんに勝てなかった……」
「何が?」
「結局、珪ちゃんの選んだヤツ買ってるしぃー」
さらに、珪はそれを一瞬で判断した、それが桜蔵の悔しさの原因だった。
「役に立ててるみたいで、よかったよ」
珪が返したこの一言に、桜蔵は、立ち止まった。
「桜蔵?」
珪が振り返ると、桜蔵は、難しい顔をしていた。
「……珪ちゃん、俺、珪ちゃんの役に立ってる?」
そう言って、珪を見る桜蔵の顔に、不安が滲んで見えた。
珪は、桜蔵との数歩の距離を縮めて、頭にポンと手を乗せた。
「言葉のあやだろ?」
「だけど……」
「お前は、俺が役に立つから相棒してんのか?」
桜蔵は、何かに気づいたように目を丸くして珪を見上げ、そして首を横に振った。
「な?」
珪が、ポンポンと再び桜蔵の頭を撫でた。桜蔵がそれを、照れ臭そうに振り払う。
「縮むからやめて」
「ハイハイ」
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