不登校児と不良娘が出会う特異点は確かに存在する

第43話 健やかなおっぱいを揉ませてくれないかなぁ

 とある夕暮れ、おやつに用意したさつまいもプリンを食しながら、青髪の少女は素朴にこんなことを話した。


「いいご両親ですね」


 僕は、思いっきり不可解な顔をしたことだろう。君の眼は節穴か? 危ないクスリで幻覚を見たんじゃないか? お世辞を言ってもはないぞ、とかなんとか、彼女に切り返したような気もする。


 彼女も彼女でしっかりと切り返してきて、それから呆れたように話を続けた。


「いいご両親じゃないですか。明るくて、賢くて、素直で、仲が良くてむつまじくて。私はけっこう好きですよ」


 手放しで褒めるなんて珍しい。


「まぁ、お父さんの方は、話すことすべてセクハラでしたし、デリカシーの欠片もありませんでしたし、うるさくて仕方なかったですけれど」


 その物言いは、いつもの彼女のようで、僕は、思わずほっとしたもので、いや、彼女の毒舌を聞いて、ほっとするというのもおかしな話なのはわかっているが。


「それでも」


 毒舌から転調して、いささか音色をにぶらせて、彼女は言葉をくるりとひっくり返す。


「あなたのことをよく見ていることがわかりました。あなたのことをよく理解していて、あなたのことをとても心配していることが」


 それはまるで独り言のようで、初夏の暮れの軒下のきしたから聞こえてくる駒音のように、ぽつぽつと現れ、そして消えていく。


「何より、あなたのことを信頼していることがよくわかって、本当にいいご両親だと、私は思いますけれど」


 褒め過ぎだろう、と僕は、つい応えてしまった。気恥ずかしさがもちろんあったし、実際に褒めるほど優れてはないと思ったからだ。今思えば、彼女の口調や言葉選びにもっと気を遣うべきだったのかもしれない。思い返してみれば、あまりに露骨に、彼女は気にして欲しがっていた。


 僕の心ない言葉に、彼女は呆れたように小さく息を吐いて、そっと視線をプリンに落とし、


「そうですね」


 とだけ呟いて、次に口を開くことはなかった。急に機嫌がわるくなった。本当に女心はシャイニングスターだな、などと僕は内心笑ったりもしていた。


 もしも、これがライトノベルだったならば、これほどもなかっただろう。この後の展開が読めるっつーの、と落胆するレベルのチープさであるが、現実の僕には、彼女の機微きびを読み取ることも、この後に起こるを予測することも、さっぱりできなかったのだから、現実というのはつくづくだとうんざりする。


 しょうもないついでに、ここまで散々打ってきたもそろそろ回収させていただきたいものだ。


 つまるところ、シリアス展開とか、そういうのいいから、コメディチックに、ご都合主義全開で、後腐れなく、健やかなおっぱいを揉ませてくれないかなぁ、と素朴に 思う今日この頃である。

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