第125話 背中合わせの親子
明神は翼を戻す時、残っていた翼は6枚だった。
明神はここに来る前に約4回殺された事になる。
「明神、また油断したな?」
「僕はこの翼がある限り敗北者にはならない。避ける必要も無いよ」
「お前のその慢心は身を滅ぼすぞ」
「う~ん。そう思わせる程の相手に僕は出会えないのだから」
「……そうか」
総一朗は毎回、対戦相手の攻撃を避けようともしない明神の説得を諦める。
これは今日だけの話では無い。
明神はその能力から絶対的な自信を持ち、避ける事を全くしない戦闘スタイルとなっている為、総一朗は口うるさく明神に言い聞かせるが効果は全く無いため、最近では総一朗も諦めつつある。
「その黒い竹刀……どうしたの?」
明神は総一朗が持つ黒竹光に興味を示す。
総一朗は父親の背中を見つめる。
座り込み、微動だにせず総一朗に背中を向けたままだ。
総一朗には、いつもの父親に見える。
幻術が解けたと言い切れないが、総一朗は父親の背中を見て感じる。
総一朗は父親の背中を見て育ってきた男だ。今日に限って父親の背中は小さく見えている。
幻術で操られていたからか?それとも初めて、父親を倒したからか?1つだけ確かなことは、総一朗の手には黒竹光がある事だ。
昔の約束通り、勝利したら譲ると言われた為、総一朗は黒竹光を自身の物にする。
「これは黒竹光だ」
「……黒竹光?」
明神の武器に関する知識は壊滅的だ。それは同じチームとして過ごして来た総一朗は理解している事だ。総一朗は真面目に説明するか、適当に説明するか、二つの選択肢がある中総一朗が選ぶのは……
「壊れない竹刀だ」
「へぇ~、そんな竹刀があるなんて……凄いね」
総一朗は適当に説明し、明神はそれで納得する。
総一朗は適当に説明したが嘘は言っていない。黒竹光は壊す事は出来ない竹刀なのだから、しかし、黒竹光の一番の長所は物体以外の吸収が主な竹刀だ。しかし、総一朗は説明を放棄する。
「それで、何でお前はここに?」
「君を連れ戻しにね」
「……何かあったのか?」
明神からただならぬ雰囲気を感じた総一朗はただ事で無いことを理解する。
「東京本部の地下施設が襲われた」
「地下?」
「エネルギー開発所だ」
「それで?」
「犯人の目的はエネルギー源にしていた人間を数名連れ出している」
「それだけか?」
「う~ん。連れ出した人間が……普通の人間じゃないらしい」
エネルギー源にしている人間は犯罪者が大半だ。
しかし、その中に大量のエネルギー源となるとされた人間や、行き場を失った人達等、表にバレれば問題になる人物もいる。
「つまり、東京本部に戻れと?」
「そう。飛んで帰っても良いけど、転移魔法をお願いしても良い?」
「わかった」
明神の頼みを総一朗は実行する。
しかし、転移魔法の為の魔法陣は明神だけだ。
「あれ?一緒に行かないの?」
「直ぐに行く。先に行ってくれ」
総一朗は明神だけを転移させる。
移動先は東京本部だ。
総一朗が残った理由は総一朗の背後に居る背中を向け続ける父親に言い残した事があったからだ。
「……約束通り、黒竹光は貰って行く」
総一朗はそう告げると魔法陣を展開させる。
「……強くなれ……当麻家、時期当主として」
現当主の父が時期当主として息子を認めた瞬間だった。
背中合わせながらも二人の関係性は昔のままだ。これから先、変わる事の無い。口数の少ない親子は不器用ながらも、拙つたない言葉語るよりも背中で語り、剣を交えるこの関係は生涯変わる事は無い。
いつも通りの父親を認識して、気づく。もう幻術にかけられていない。
自然と総一朗は微笑む。そんな総一朗の後ろでは父親も同じく微笑む。
総一朗はいつもと変わらぬ父親に、父親は強くなった総一朗に対して微笑む。お互いに動き始める。別れの挨拶も無く、総一朗は転移魔法で東京本部に戻り、父親は北海道支部を取り戻す為動き出す。
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