第四章 僕の知らない物語
アンクルブレイク
姉の死
私が高校一年の時、姉が死んだ。事故死だった。よく晴れた夏の午後だった。質感のある夏のぬるい空気、空には巨大な入道雲が浮かんでいた。
電車通学の帰り際、覇気のないスーツ姿の人々は、なんだか通夜の帰りみたいに思えた。
母からの電話で、私は姉の死を知った。
解剖士が洗ってくれたのか、棺で眠る姉は雪のように白く美しかった。
その日の夜、私の中で何かが変わった。
頭の天辺から手足の指先一本一本に稲妻が走ったようだった。五感は研ぎ澄まされ、時計の秒針の音やタオルケットの肌触りがやけに気になって眠れなかった。姉の魂が私の中に入り込んだんだ、と私は思った。
私は私の頭を撫で、胸に手を当て鼓動を確かめ、しばらく自分の体を抱き締めた。それから左手首に指を置いて脈を測った。脈拍は正常で手首は温かった。だから私は泣いた。瞼がひりひりと痛むまで泣き疲れ、眠った記憶もないままに、次の朝がきていた。
姉の分まで頑張らなければいけない。
強迫症状にも似た焦りが私を突き動かした。
二つに結った髪をほどき、一つに結い直した。鏡に映る私は凛とした佇まいだった。予感があった。
これから、私の人生は変わる。
全てで頂点になる
しかし畢竟からっぽ孤独
喜んでいる人を見たら何を喜んでいるんだろう死んだら喜びも無意味なのにと思うし、悲しんでる人を見たら何を悲しんでいるんだろう死んだら悲しみも消えるのにと思う。
必死に何かに取り組んでいる人を見たら何を生き急いでるんだろう死んだら積み上げたものも無意味なのにと思うし、何にも取り組んでいない人を見たら時間の無駄だと思う。
人はいつ死ぬか分からない。
でもどうせ百年後には自分もみんなも死んでいる。それだけは確かなことだ。ボーナスステージみたいに適当に、気の向くまま生きればいい。やりたいことをやればいい。やりたくないことはやらなければいい。
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