第66話 ダンジョンへ
準備万端、後は迎えが来るの待ちと、レアは秘密の部屋で待機中。
側では子ども達が、クーを触ろうとして、手を引っ込める遊びをしている。
赤ん坊含め、6人の子どもがこの部屋に居るのだが、かなりの騒音だ。
1歳児ラナンと8カ月のカナタは、お昼寝中で静かだったが、3歳児の双子と5歳児の3人がまぁ良くぞケンカの話題があるものだと、目を離すと何かしら子どものケンカを引き起こしている。
「クーしゃんを、さわっちゃメッ」
舌ったらずながらも、クーの体毛を触ろうとしている5歳児のアーイムを諌めているのは、双子の片割れミリア3歳だ。
小さいながらも、正義感の持ち主でアーイムが手を出す都度怒っている。
どうもアーイムは、クーの体毛のチクチク感が気になってしまい、手を伸ばしては引っ込めていたようだ。
そして双子の片割れナミヤ3歳の方は、マチカちゃん10歳と、仲良くレアが暇つぶしとして出した画用紙と色鉛筆でお絵描き中だった。
子どものお絵描きなら、クレヨンにしたかったが、今のレアでは出す事が出来なかった。
画材スキルが謎過ぎて、まだまだ画材によって出せる条件でもあるのかな?と考えてしまう。
「ほら、ケンカしない。2人とも、お絵描きは良いのかい?パパに描いた絵見せるんだろう?」
子守をしているミネルバが、騒がしい2人にパパを描いたらどうだいと、言っている。
「あっ、そうだった。パパの顔描く!」
父親が冒険者をしているせいか、普段から不在が多いが、アーイムはパパっ子だった。
「ミネルバさん。お疲れ様です」
レアは、子どもの世話は孤児院に居たから慣れてはいたが、この世界でも小さい子の世話は大変だなと思う。
「いつもの事だしね。それより付き合わせすまないね」
「1人で待つも退屈だし、見ていて面白いので大丈夫です」
暇つぶしに、レアも絵を描いても構わなかったが、絵を描きだすと集中してしまい、周りが疎かになるので、子ども達を見るにとどめていた。
「にしても、これは凄いね」
レアの画材スキルで出した、12色の色鉛筆を見て言う。
「この画材スキルなんてのも、聞いたこともないからエルフ族の祖先に、別の世界の転移者や転生者の血筋が、流れているのは確定なんだろうねぇ」
知られていない、珍しいスキルだ。
本来1色の色鉛筆を作り出すのは、職人でもどれだけの開発する時間や、材料がかかるかもしれないのに、レアは自分の魔力で作り出している。
魔力と言う形ない物から、作り出す奇跡に本人は自覚もしていない。
レアのレベル上げを、早めにする様にとレアの雇い主が言うわけである。
「元は製紙スキルって言う、紙出すだけのスキルなんです」
レアは絵が描きたくて、頑張ってスキル上げした結果だった。
この世界の紙は高い。
普通なら、孤児が簡単に手に入れるのは難しい物だ。
「最初はゴミにしかならない、こんな小さな紙片から始まって、なんとかここまで大きさを出せるようになったし、スキルを使い続けた結果ですかね?」
取り出した小さな紙片から、大きい紙までを出して見せる。
「製紙スキルは知ってるけど、使えないスキルって言われてるよ」
ミネルバがスキルの所持している者は、そこそこ居る筈だが数年頑張って使っても、中々上手く出来ない者が多く、投げ出してしまうせいか、使えないスキルの上位に入ると教える。
「そうみたいですね。使い続ける根性いるスキルって、不人気だし他の人から馬鹿にされやすいから大変だったかな」
ミネルバと話しながら待っていたレアは、ドアがノックされ入ってきた男性エルフにアーイムが跳び付いて喜んでいる事で父親らしいとわかった。
「待たせたな」
ミネルバが用意していた荷物を渡し、ダンジョンでの戦利品の入ったアイテムバックを手渡している。
「中々、食材を多く手に入れられるダンジョンだったぞ。中身はいつもの様に任せる」
「分かった。アーイム、父さんはまたお仕事だから、遊んで貰うのは次に帰った時だよ」
ミネルバがナザレからアーイムを剥がし、イヤイヤしているのを言い聞かせている。
部屋の外の通路では、ダンジョンに向かった他のエルフの人達が、物珍しいのか案内してきたナナカが説明している。
こうして見ていると、やはりエルフは美形な種族だなと思う。
人族にしか見えないレアは、普通だ。
自分の外見も、自覚しているが美形にほど遠い。やはり目立たないのが一番だなと思う。
「君がレアだね」
「はい。ダンジョンでのレベル上げを、よろしくお願いします」
ナザレ、クレイ、ベレナド、アロスと4人のエルフの男性と握手する。
ナザレはミネルバの旦那さんで、クレイはアイリスとアロスはラウシャの旦那だと紹介された。
「しっかし、ここは凄いな。これなら俺たちが出かけている間も、女子供は安全だな」
攫われやすいエルフ族の女子供は、滅多な事では人前に姿を見せない。
仕事で親が出かけている時など、かなり大変だったようだ。
姿変えの魔道具もあるが、子供の内は使える時間が限られている。
「そうですね。登録した方しか入れないようにしてるので、逃げ込めれば外敵には気付かれないはずです」
まだまだ機能で、理解しきれない所もあるので使いながら覚えて行くしかない。
登録者に、人族の孤児院仲間の冒険者や孤児院の子供達も追加しているので、そっちとも顔繋ぎをいずれして貰いたいと話す。
「ダンジョンへの同行は、君を入れ7人だ」
ナナカとアインスも入れてで、男性エルフグループにレアが加わる形のようだ。
レアのダンジョン内での動きや、注意する事の説明を受けて、ナナカがレアと手を繋ぎダンジョン近くの森に続くドアから連れ出す。
手を繋がなくてもマスターのレアなら大丈夫だと思うが、念のためらしい。
「かなり時間かかったみたいだけど、他の人蜘蛛テイム出来たの?」
レアの迎えに来る前に蜘蛛をテイムしに行った筈だ。
「アインス以外はテイムしたぞ」
「種類は?」
「俺には分からない。レアなら見れば分かるよな?」
ドアを潜り抜け、蒸せ返る森の匂いと目の前に見える洞窟で、レアはダンジョンに着いた。
「へー、見た目普通の洞窟だね」
レアがドアを潜り抜けると、秘密の部屋へ通じるドアは直ぐに消える。
他に知られないように、直ぐに閉じたのは洞窟から人の行き来しないタイミングをはかってのようだ。
「洞窟前って、誰も居なかったの?」
てっきりダンジョン前にギルドの受付みたいな場所を作って人が集まるようにしていると思っていたのだが、違った。
冒険者を連れた商人らしき人が、洞窟から出て来たが、マジックポーチがあるからか、大きな荷物はない。
蜘蛛の森を抜ける時の護衛として、冒険者を雇っているようだ。
「ここのダンジョン前は危険だからな。森が物騒なのはお前も分かっているだろう?」
森の中を逃げ回ったレアだ。
寄生してくる蟲の怖さは、レアも分かる。
「中に入れば理由は分かる。ダンジョンの1階層は安全地帯だ。さあダンジョンへ行くぞ」
レアは何気なく、洞窟型ダンジョンを鑑定してみた。
蜘蛛の森ダンジョン(No.116・稼働中)
現在全階層87
「ダンジョンって、分かってるだけでいくつ?」
「この国だけなら、5?ここ入れて6だっけ?」
ナナカが、指で数えている。
「知られてる範囲内で、だいたいいくつ?」
「俺が知る限りなら48。制覇されたのは9」
アロスが覚えている範囲なら、50前後だと告げる。
ただ小さなダンジョンだと、知られる前に消える事もあるので、何故消えるのかは不明らしい。
「このダンジョン116番目だよ。稼働中で、現時点では87階層まであるみたい」
どれくらいの速度でダンジョンが出来るか知らないが、かなりの数がまだ発見されていないのだろうか?
スレバの町物語【ある転生者のささやかな日常】 宮川 千 @hiro3hiro33
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