鏡の向こう 1

「サエの目色っぽかったわ。女の修司にも惚れたようよ」

 新幹線の個室に籠りっきりの私に弁当と缶ビールを運んできてカオルが笑う。

「中にいる時くらい化粧を落としたいんだが」

「駄目よ。ここまでにするのには2時間もかかったんだから。化粧がなかったらここでもやりたいくらいなんだから」

 つんつんとスカートの中のものを突く。

「着くまで約束事を確認しておきたいの。頭取はおそらく伊藤の始末を始めていると思うの。ただ頭取も伊藤がどこまで知っていて少しでも証拠になるものを持っていないか聞き出しているはずよ」

「やはり君が伊藤を呼び出して?」

「それも修司を助ける条件の一つ。私が嘘をついている。修司がギリギリのところで伊藤と組もうとしたと言ったわ。頭取があなたをガス自殺で殺そうとしたのはその恐れを感じていたからなの。それほど伊東は執拗に修司を誘っていたわけ。だから修司が消えた時には伊藤の嘘に騙された」

「そのために私も頭取の拷問を受けた。トイレにいけないほど一本鞭を受けたわ。痛みで熱が出て寝込んだ。でも吐かないので私の嘘を信じかかっている。修司はガス栓をひねったのは部下であり頭取の命令だと知っていた」

 私は現実にはどうだったのだろう。

「それで伊藤と組もうとした。でも伊藤も同様情報を独占するために修司を監禁した。それで証拠の品を持って逃げだした。実際修司がどこまで伊藤に話したか知りたがっている。でも今は修司は記憶を失っている。それを確かめたいのよ。でも頭取が昔通り戻ってこいと言ったらどうする?」

「サエのところに帰る」

「焼けるわ。でも3人でするの約束して。確かに一時私は修司を裏切った。その罪滅ぼしはするわ」







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