新しい一歩 3
サエは明日からカラオケバーを辞めると卓袱台にメモを残して出かけた。なぜかどんどん取り残されていくような気になっている。
今日は親分の供で貸付の相手に会いに出かける。タクシーを呼んでミナミの道頓堀の西のどん詰まりまで入る。アヤと入ったホテルが近くにある。構えからするとソープランドと言うらしい。フロントを抜けて屋上まで上がる。
「わざわざすまんのう!」
親分と同年代のスキンヘッドの親父が椅子に胡坐をかいて座っている。若い30歳くらいの女が肩をもんでいる。昔この建物を買う時に親分が貸したと言う。当時5億だったようで、3億を5年で貸したが3年で返済したと言う。事前に謄本を上げたが今は無担保だ。
「なんで儲け頭のこのソープを売るんや?」
「来年にはこの辺りではソープが出来んようになるということや。ホテルだけの評価じゃつまらんからのう。契約はしたものの風俗の許可で3か月かかるんや。今度はおとなしく北新地のレジャービルに乗り換えや」
「安全を見て6か月の短期か。所仮打つで」
親父が契約書をテーブルに載せる。女がお茶を入れてくれる。親分の横から契約書を覗く。
「9億かええもんやな」
「『白薔薇』と言うたらニューハーフの店ですね?」
「若いの詳しいな。お釜とは呼ばんらしいわ」
これは週刊誌の記者が持っていた記事原稿の店だった。
「売買の日に立ち会わせてください」
「もちろんや」
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