過去のこと 4
朝出勤しても心がどこか落ち着かない。ホテルで何度もキッスをして先に出た。
「顔が火照ってるよ」
と姉さんに冷やかされる。
今日は貸付の調査があり、8時に萩之茶屋の番頭のスナックの近くの小料理屋に寄る。2度目の改装の貸付だ。500万の申し込みと前期の確定申告と見積もりが出ている。混み具合を見ようとこの時間にした。
暖簾を潜ると10人ほどのカウンターは一杯だ。女将が一人でやっているようだ。しばらく立っていると、常連客が席を空けてくれる。空いた席に座ろうとして目を疑った。
「先生やないですか?」
「なんやヤバイ奴にあったな」
「先生は湯上りの立ち飲みだけか思ってましたよ」
「ゆっくり飲みたい時もある」
「先生の患者さんですか?」
女将は思ったより若く50歳前のようだ。
「私が一番最初の患者でしたのよ。もう10年前でしたよね。前の主人にお岩のように殴られて勤めていた店から運ばれたの」
「肋骨も折れていた」
「それからいろいろと面倒見てもろて10年前にこの店の貸付の保証人にもなってもらいました」
前回の貸付は800万で保証人付きだが、今回は保証人はなしになっている。
「根掘り葉掘り聞くな」
恋人を見る目をしている。
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