過去のこと 2
久しぶりに日曜日に休みが取れるとサエが動物園に誘ってきた。腹違いの兄弟が不倫をしている奇妙な気持ちになるが、この生活にも慣れてきたように思う。今はキッスもフェラチオも胸の愛撫も許してくれるのでそれで満足している。
夕暮れまで動物園で遊んで阿倍野出口から出て無口で歩いてゆくサエの後ろを追いかける。本通りから路地を曲がって白い建物の中に入っていく。
「ここならやくざも来ないから」
「ラブホテルだよ」
「ここの食事いけるよ。ワイン飲まない?」
食事を頼んでワインを飲み始める。窓から夕暮れに浮かぶ通天閣が見える。サエは私の膝枕にぽつぽつと話し始める。
「イサムと言う名は最初の父の名前なの。同じ旅回りの役者と出来て母が私を生んだ。よく遊んでくれた。楽屋で育ったようなものなの。父は演歌歌手を目指していたのでよく暇な時に唄を教えてくれた。3年程旅回りをしていたんだけど、母は座長と出来てしまって父が劇団を追われることになった」
「お父さんとは?」
「それから会ったこともない。そのうちに母が若い演歌歌手と私を連れて駆け落ちをした。7歳の頃から舞台に立ってチャンバラの子役をしたり、唄も歌わさられた。それと舞台衣装の修繕もしていた」
「どうして逃げ出した?」
「その後の男が最低だった。地方のヌード劇場廻りで白黒をしていた。沖縄から北海道まで至る所を回った。母も男も異常になっていたわ。ドラッグに手は出すし、この話はまだ話す勇気がない。この時にこの通天閣の近くの町で興行していた」
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