成りゆき 8

「イサム起きてよ!」

 少し飲みすぎたのか目が開かない。無意識にサエの唇を吸う。だがどうもいつものサエと違う。唇が震えている。

「どうしたんだ?」

「関東のやくざが来た。カラオケを歌いながらイサムの写真を出して見せた」

「サエに見せたのか?」

「いや、カウンターに座ったホステスにだよ」

「ばれた?」

「たとえ知っていてもホステスは言わない。仁義だから。でも本当に気付いていないみたい。その男あの車の後ろから見ていたサングラスの男だった。でもあの姉さんが横で首を傾げていた」

 姉さんは気づいたかもしれない。

「この辺りの外科の病院を確認していた。明日念押しにやぶ医者の所に行くわ。しばらく野球帽を深くかぶるのよ。うろうろ飲みに行くのもだめ!」

 私はまだ金融ブローカーのやっさんの話はしていない。まだ雲をつかむような話で実感がない。ただ何らかの線で伊藤と繋がっているとはいえる。それにあのS銀行の頭取のことが気になる。

 サエは布団に潜ってきて朝まで抱きついていた。


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