第12話
それは対岸に停まる青い列車だ。
発車ベルなど鳴っていないのに、四人が乗った瞬間にドアが閉まる。
「大丈夫? 沙那ちゃん」
岩永が村田の方を心配そうに見た。
「え、なんで?」
「貴志の話によると、お前は頭を割ってたらしいからな」
「え、え? 頭割ってなんかないよ?」
村田は不思議そうに後藤の方を見た。
「いやまあ無事ならそれでいいさ」
後藤はそう結論づけた。
四人がこれまであった事を話していると、
「あ、おい。外見てみろよ」
後藤が指差したのは、虹色の光が柔らかく差し込む窓。
四人とも振り向くと、急に光が強くなって、
「わあっ!」
目をつぶった。
次の瞬間、四人は駅に立っていた。
「ここどこだ?」
「きさらぎ駅とか止めてくれよ……」
後藤がフラグを立てかけたが、無事双川のロータリーの風景がそれを折ってくれた。
「双川に帰ってこれたみたいだね」
村田は大きくうなずいた。
「……ねえ、今そこの人花火大会って言ったよ……」
岩永は目の前の家族がそんな話をしていたのを伝えた。
「じゃあ、俺たちはアレが起きる前に帰ってきたって事か?」
後藤の言葉に村田が反応した。
「じゃあ、やることは一つだね!」
四人は大きくうなずいて、黄色に囲まれた赤い非常停止ボタンを押した。
無事、居眠り運転をして踏切に突っ込んだタンクローリーの運転手は捕まり、振替輸送のバスに乗って堀江の花火大会の会場に四人はたどり着いた。
「花火きれいかなあ?」
「きっと綺麗なんじゃないのか?」
その屈託のない笑顔がやはり好きだった。
いつの間にか三上と岩永はどこかへと消えていた。
「……あのさ、沙那」
「なあに? タカシ」
振り向いた顔を見て、
「俺はお前の事が……」
守れてよかったとかそんな事を思いながら
好きだ
告白した。
そしてきさらぎ駅 M.A.L.T.E.R @20020920
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